ハチドリ

ハチドリに蜜を吸わせるために進化した花があるという。
空中でハチドリが吸いやすいよう、花の咲く角度を変化させていったのだそうだ。
「そういうのって、ハチドリが居なくなったらどうするんでしょうね。」
しばらくは構わないんじゃないだろうか。
というか、気がつかないかも。
数ヶ月経って、一年経って、もしかしてと思ったときにはすでに遅いっていうような。
「まるで離婚みたいに喩えるじゃないですか」
運命の相手を失うっていうのは、往々にしてこういうものなんじゃないか。
ハチドリがいたならば筋が通っていた自分の姿勢や生き方が、まるで欠損したみたいに不具になるというか、自分の身体が不恰好で仕方なくなるんだ。
「でも居なくなってすぐには気がつかない」
ハチドリもその花も、もはや姿勢というか、ポーズだから。
「骨肉が変わるほど寄り添うのも、生存戦略ですよ。」
怖いとは思わないの?
「生きるってことはそれくらい、ままならないものなんです」と笑った。

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