電車

山岳鉄道でもないのに、山の中を通る路線がある。
あえてその路線に乗らなくても家に帰れるから、今まで乗らなかった。
仕事先から直帰になって、その関係上初めて乗ってみると、運賃の高さに驚いた。
一緒に乗っていた地元民の友人は「山の中を走っているので」と言った。
たしかに、少し斜め上に登っているような気すらする。
そしてものすごく遅い。ロードレーサーのほうが絶対に速い。
「山の中を走っているので」友人は言う。
「少し無理をしているんです。」
夕暮れどきなのに、乗客はまるで終電間際かのようにまばらで、そして眠りこけている。
「疲れ切っているんです。」「山の中に住んでいるので。」

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