西瓜

「子どもの頃、父親が西瓜に輪ゴムを100本はめて、破裂させて見せてくれた」と彼女から聞いて、僕は彼女の実家に行くのが心底怖くなった。車を止める。
国道沿いのマクドナルドのテーブルで僕が頭を抱えて1時間が経った。
向かいでスマホで動画を観ながら僕が再び車に乗るのを待っていた彼女だったが、スマホの充電が惜しくなってきたのか、視聴をやめた。
「子どもを笑わせるためだけに西瓜爆散させる親とか、俺太刀打ちできないよ」
「別に太刀打ちしろとか言ってないじゃん」
「西瓜爆散したらめちゃくちゃ飛び散るじゃん、後先を考えない愛とか怖いよ」
「愛……なのかはわからないけど」
「服についた西瓜落とすために嵐の中、庭に出て雨を浴びた、って、嵐の家の中で西瓜爆散させたのも怖いよ、どういう思いつきなの」
「え……なんだろ、子どもが家の中でつまんなそうにしてたからじゃないの」
「そんなぶっ飛んだつまんなさの払拭方法の人からしたら、俺なんか殺したいくらいつまんないよ!!」
長期戦になると思ったのか、彼女は一旦席を離れ、マックフルーリーを手に戻ってきた。
僕が彼女の実家にたどり着く、一年前の話だ。

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