サイボーグ

大きくなったらサイボーグのお母さんを作ろう。急にいなくなったり殴ったりしてこない、優しいサイボーグのお母さんを作ろう。

たしかそんな話を俺とあいつは施設の2段ベットで話していて、そして俺はなるべく金持ちになろうと勉強して就職して、
でもそれくらいに未来になっても、まだサイボーグは売られていなかったから、
良いロボット掃除機とドラム式乾燥機つき洗濯機と食器洗い乾燥機とホットクックを買って、あと週に2度ほど仕事中に家事代行を頼んだ。

ものすごく幸せになった。
テロとか事件に巻き込まれでもしない限り、もう誰も俺を殴ったりしない。
安全で清潔な、暖かかったり涼しかったりする快適な俺だけの部屋。
こんなに心が穏やかに過ごせる未来が来るなんて、ガキの頃の俺はきっと想像もしてなかっただろう。

静かな正月休みが明け、数年ぶりに施設の先生に挨拶に行った。
施設にはどこかの子どもの夜尿のにおいが染みついている。
俺と2段ベットだったあいつは、未だに大学に居るらしい。
「ロボットを作ってるんだって」
背筋が少し、ゾクっとした。

あいつはお母さんを作ろうとしている。
パーツなんかじゃなく、お母さんに成るものを。

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