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BOOTH3Dモデル市場概況(2022年)

 VRChat Advent Calendar 2022 の 17 日目の記事になります。

 BOOTH で販売されている、VRChat 向けの3Dモデルの市場概況について結果を考察を述べていきます。

 ちなみに、昨年に同じ内容のものを書いていて、おおまか考察とかはそちらの方に書きました。今回は「数字がどう変わったか」とか「顔ぶれがどう変わったか」という内容が主になります。

 考察の内容については昨年の記事も見ていただけると嬉しいですが、忙しい人のために要約を貼ります。

※以下の引用は「2021」年 12 月時点のものです

・アバターの販売数は 2,692 体
・うち99%が ¥10,000 以下
・ボリュームゾーンは ¥3,000~¥4,000

・アイテムの販売数は 6,444 点
・うちほぼ100%が ¥4,000 以下
・専用衣装のボリュームゾーンは ¥1,000 付近

・専用衣装は上位モデルに極めて集中している
・人気はあるが比較的専用衣装が少ないモデルも存在する

・定番モデルは短期的には寡占状態に見えるが、
 長期的には流行による新陳代謝が起こる

※データは全て 12 月 12 日時点の解析に準拠

 では、2022 年ではどうなったかを見ていきましょう。根拠となるデータはすべて、私が開発した Web サービス Avatar Network を基にしています。また、データは 2022 年 12 月時点のものです。


アバター販売本数

 現在、約 6,700 体のアバターモデルが販売されています。昨年が約 2,700 体だったので約 2.5 倍に増えてます。

 これはサブカテゴリが「3Dキャラクター」となっている販売商品の数です。ただし、厳密には集計漏れがあります。サブカテゴリ設定前に販売開始をして、登録をし直していない商品は「その他」のサブカテゴリになっているからです。(昨年も書いた)

 一応、この点に対する改善策として、手動でアバターを登録するフォーム(アクセスには認証が必要です)を設けたので、人力で微々たるものではありますが「あの有名モデルがない!」みたいな状況はかなり少なくなったはずです。

アバター販売価格

アバターの販売価格と商品数のヒストグラム

 横軸に販売価格帯、縦軸にその価格帯に含まれる商品数を取ったグラフです。昨年同様、99 %のアバターは 10,000 円以下で販売されていたので(全体のグラフは省略)、その部分に着目しています。

 数は増えていますが、グラフの概形はほとんど昨年と同一です。昨年と同じく、3,000~4,000 円の価格帯にピークがあるので、これがサポートが一通り揃ったスタンダードになると考えられます。

アイテム販売本数

 現在、約 19,000 個のアイテムモデルが販売されています。昨年が約 6,400 個だったので、約 3 倍に増えています。

 これも、アバターと同様にサブカテゴリで判断しており、サブカテゴリが「3D衣装・装飾品」になっている商品の数ですが、アバターと同様に手動登録にも対応しております。

アイテム販売価格

アイテムの販売価格と商品数のヒストグラム

 横軸に販売価格帯、縦軸にその価格帯に含まれる商品数を取ったグラフです。昨年同様、99 %のアイテムは 4,000 円以下で販売されていたので(全体のグラフは省略)、その部分に着目しています。

 これも、グラフの傾向は昨年とほとんど同一でした。アイテムの多くは 500 円以下の商品になります。この価格帯は、衣装だけではなく、小物やテクスチャ等も多いと予想されます。

低価格の対応アイテムの中には、小物やテクスチャ等も多い

アバターとアイテムの対応ランキング

 対応アイテムが多い上位 10 アバターを表にまとめました。

 対応衣装数が倍増していますが、桔梗氏と舞夜氏がダントツですね。約 2,000 点のアイテムが販売されています。2000 て。ここまで差があると、2022 年の VRChat アバター界はこの二強体制だったと言えるかもしれません。ただ、上位 10 位の顔ぶれが 7 人変わっているのは注目すべきことです。昨年の考察で、人気モデルによる寡占状況が発生しながらも、流行のダイナミズムによって新陳代謝は起こると予想しましたが、一年単位のスパンだと過半数が変化したことが確認されました。

 ちなみに、売れ筋は変化は見られません。相変わらず上位は KAWAII 美少女です。前回は巨乳が増えているみたいな話をしましたが、最近は可変式が当たり前になっている感じがありますね。

 それはそうと、果たして、TOP 10 に男性アバターが載る日は来るのか。

アバターとアイテムの対応関係

 対応衣装があるアバターは、上位モデルに極めて集中しています。データベースにカウントされている対応衣装は約 22,000 点ですが、その 2 割が上位 2 名(!)の対応衣装で占められている計算になります。一方で、対応衣装がないアバターは約 6,000 体(全体の 9 割)です。 パレートもびっくりの格差です。

考察(市場状況の変化)

 市場状況の変化について。

 まず、アバターやアイテムの販売の需要と供給について。販売数はどんどん増えていますが、VR 人口の方はどうでしょうか。

 2021 年は旧 Facebook 社の Meta 社への改名、Quest2 という理想的なエントリーモデルの発売があって、メタバースという言葉、VR 機器は一気に身近なものになりました。 

 VR デバイスは、Pico4 と Quest Pro が発売されましたが、とは言えこれらは VR に既にハマっている人向け。Vive と Valve にもそろそろ新型が来そうですが、これも従来路線(コアユーザー)の発展形でしょう。総括すると、マニア向けの機器は順調に進化をしていく一方で、エントリーモデルは Quest2 一択という状況は変わっていません。

 VRChat をはじめ、Cluster や Neos といった VR SNS(なんとなくメタバースと言いたくない)への世間への浸透度はどうか。これはちゃんとした調査をした訳ではないので何とも言えませんが、一家に一台 VR!……というような状況ではとてもないです。

 つまり、VR を巡るユーザー層はそこまで大きく変わっていません。Quest 効果で増えた部分はあるでしょうが、Quest ユーザーは基本的にはリッチなアバターを買う人は少ないと思われます。

 アバター販売がレッドオーシャンであるという現状は、依然として変わりません。積極的に広告していかなければ、偶然ユーザーの目に止まる可能性はほぼゼロです。主な広告の手段としては、Vket への出店、作者本人による利用者への周知・RT などが考えられるでしょうか。

 また、負担の面では、モデル作成自体の負担も見逃せません。

考察(モデル作成の負担)

 アバターは、VRChat の利用が前提になるため、その仕様が変わればそれに対応する必要があります。昨年は SDK のアップデート(SDK2 → SDK3)があり、多くのモデラーが対応に追われました。やむなくサポート終了したモデルも複数あります。

 今年は 4 月に Phys Bone の実装があり、ダイナミックボーンからの置き換えが必要になりました。

 今後もこのような大規模な仕様変更がないとも限りません。個人の感覚としては、VRChat は一年に一回ぐらいはそのような変更があるなあって感じです。

 また、VRChat 向けを謳っている以上、UnityPackage を放り込めばアバターがすぐアップロード可能になる、ということは当然要求されますが、それに加えてハンドメニューによるギミックが作り込まれていることも事実上必須となりつつあります。

 昨年出した「スペック」表は

  • VRCSDKを適用したUnity Package

  • ダイナミックボーン設定

  • フルトラッキング対応

  • 改変用PSDデータ

  • リップシンクシェイプキー

  • 表情シェイプキー

  • 体型変更用シェイプキー

  • アイトラッキング対応

 ですが、現在はこれに、

  • (ダイナミックボーンに変わり)Phys Bone の設定

  • メニューによる表情切り替え

  • メニューによる服装切り替え

  • メニューによる独自エモート(アニメーション)

  • ほかギミック全般

 が追加されている感じです。モデラーはモデリング能力だけでなく、SDK の習熟も求められます。例えば、Vket で見かけたサンプルアバターの中には、ハンドメニューにすべて専用のアイコンを用意しているアバターがいました。

 親切設計ですが、モデラーがそこまで気を配らないといけないのは大変ですね……(分業しているかもしれませんが)。

 どれぐらい作り込むか、何円以上だと何を備えているべきなのか、という価格設定は難しい話です。昨年の段階では 3,000 円台からはフルスタックの価格帯と述べましたが、サポートの範囲が広がった今では、感覚的な「フルスタック」は 5,000円台以上でしょうか。このあたりだと、これらの全部とは言わずとも、九割ぐらいは兼ね備えていて欲しい、というのが目の肥えたユーザーの要求ではないでしょうか。

 モデリングにも Unity にも心得のあるユーザー(私もそうですが、VR 界隈には割りと多いです)からすると、サポートを全部放棄してでも、3D データだけでも販売を続けてくれ! 部品取りさせてくれ! と言いたいところですが、VRChat 向けを謳っている「商品」である以上、サポートは基本的にコアじゃない人を前提に作っていかなければならない以上、サポートを充実させなければいけない流れは止められないでしょう。

結論

 今回の解析で得られた知見をもとに、冒頭で引用した結論を更新します。

・アバターの販売数は約 6,700 体(前年比 2.5 倍)
・うち 99 % が ¥10,000 以下
・ボリュームゾーンは ¥3,000 ~ ¥4,000

・アイテムの販売数は 19,000 点(前年比 3 倍)
・うちほぼ 100 %が ¥4,000 以下
・専用衣装のボリュームゾーンは ¥1,000 付近

・専用衣装は上位モデルに極めて集中している
・定番モデルは短期的には寡占状態に見えるが、長期的には流行による新陳代謝が起こる

・アバターの販売には、モデルのクオリティだけではなくサポートの充実や維持が求められ、そのコストは増加傾向にある

※データはすべて 2022 年 12 月の解析に準拠

宣伝

 昨年に引き続いて、宣伝です。

対応アイテムからアバターを探せるサービス「Avatar Network」

 アバターを対応アイテムから探したり、

 アイテムから対応アバターを探したり。

 対応アイテムや対応アバターの数を含めた、クリエイターさん別の商品の一覧を見ることができます。

 ちなみに、昨年から微妙に進化しています!

進化

認証システム

 一番大きなものはこれで、Twitter アカウントを認証することにより、ユーザー登録をすることができます。これにより、後述する手動登録ができたり、ユーザーフォルダーを作成できたりします。

ここから認証!

手動登録

https://avatar-network.herokuapp.com/recommend/ (アクセスには認証が必要です)

 システムの都合上、どうしても自動取得できないアイテムやアバターがあったのですが、ここに URL を申請すると手動登録ができます。さすがにノー審査で通す訳にはいかないので、管理者(私)が確認したら登録される仕組みです。

 現状、申請者には満足感以外のメリットがなく、インセンティブ設計として問題ある気がします。申請者に対してコントリビューション的なものを記録して、リターンを設定した方がいいような気もしますが、将来的な課題ですね……。

フォルダー作成

マイフォルダーを作れます

https://avatar-network.herokuapp.com/folders/

公開されているフォルダーの一覧

 フォルダーに商品情報をまとめることができます。デフォルトは非公開なので、「お気に入り」機能として使うこともできます。また、公開することもできますので、自分の趣味をアピール(?)したり、セレクトラインナップをオススメすることができたりします。

 これも、現状、申請者には公開するメリットが(以下略)

アバター Hot 順表示

https://avatar-network.herokuapp.com/avatars/?word=&sort_hot=on

 一週間以内に追加されたアイテムの数でソートすることができます。これにより、最近流行っているアバターをより探しやすくなります。人気モデルが発売された直後はすごい勢いで追加されていくので、毎日チェックするのが楽しいです。

アイテム Latest 順表示

https://avatar-network.herokuapp.com/items/?word=&sort_latest=on

 アイテムは、追加されたアバターの数の増減はあまり意味がなさそうなので、新着アイテム順で表示できるようにしました。例えば服を探す際に、新しいものをチェックしたり、季節モノを探しやすくなったりします。

サポーター登録のお願い

 生々しい話ですが、Web サービスを公開・維持し続けるにはお金がかかります。具体的に言うと、毎月 16 $ほどかかっています。Avatar Network を長く公開・維持していくために、有料サポーターの登録をお願いしています。非常にありがたいことに、現在は維持費をペイできる程のご支援をいただけてますが、今後サーバー代の値上げ等が起こらないとも限りません。

 サポーターに登録していただけた方は、

  • 複数のフォルダー作成

  • クリエイターハイライト

 の特典を受けられます。複数のフォルダーは特に説明必要ないかと思いますが、クリエイターハイライトとは、

 こんな感じで、好きなクリエイターを金色で強調表示することができます。ハイライトされたクリエイターによるアバター・アイテムは、対応アイテム一覧や対応アバター一覧の中でも同様にハイライト表示されます。

ハイライトの一例

 サポートは上の fanbox からできます。一ヶ月 190 円のプランからお気軽にどうぞ! 


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