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大川小で有料解説ガイド

震災教訓 第三者の立場で|指定管理者自主事業

 東日本大震災の遺構である大川小学校で本年度から、指定管理者のスタッフによる有料解説ガイドが行われる。初回は9日で、午前と午後の定刻に現地で受け付ける。以降は不定期での実施を見込んでおり、主に案内するのは敷地内にある展示施設「大川震災伝承館」の遠藤裕文副館長(55)。女川町出身で、発災直後の大川地区の状況は詳しくなかったが、語り部の遺族や行政の記録に学び、来場者に約13年前の出来事を第三者の立場で伝える準備を整えた。

お試し期間に来場者を案内した遠藤副館長(左)

 4月末からの大型連休以降、お試しの解説ガイドを受け付け。5月4日の午後の回では約20人が伝承館に集まった。遠藤副館長は最初に館内を案内。写真を示しつつ、大川小が北上川河口から3・7㌔上流にあること、震災が起こるまで津波浸水が想定されない指定避難所だったことを伝えた。

 その後、震災時、児童78人と教職員11人、40―50人ほどの住民がとどまった校庭に移動。校長不在の中、どこに避難するか決めきれずに行動開始が遅れ、児童4人、教師1人を除いて犠牲になった。遠藤副館長は「もしも自分が先生だったらどうしていたか、自分ごととして考えて」と投げ掛けた。

児童らの足取りもたどった

 参加者は児童の避難ルートもたどった。遠藤副館長は、大川小では震災前に避難マニュアルを見直す機会があったのにせず、1年間、津波の避難訓練もしていなかったことを伝え、「念のために裏山に登っていれば犠牲にならなかった。有事には念のための行動を」と訴えた。

 遠藤副館長は元中学校の英語講師で、音楽家。石巻南浜津波復興祈念公園内の伝承館で解説員の経験もある。大川小で話す内容は関係団体も了承しており、「正しい情報を分かりやすく伝えたい」と心掛けた。

解説する遠藤副館長

 熱心に耳を傾けた茨城県水戸市の男性(69)は「教師の妻から一度は見た方と言われて来たが、裏山の近さにびっくり。ガイドに被災の実体験があるかどうかは重視しておらず、分かりすい話が後学のためになった」と話した。

初回は9日 不定期に

 有料解説ガイドは一般社団法人の石巻震災伝承の会と石巻観光協会で構成する「石巻市震災遺構指定管理グループ」の自主事業。所要時間45分で、1人500円(高校生300円、中学生以下無料)で申し込める。9日は午前10時半と午後1時半の2回で、各回30分前から30人になるまで受け付ける。

 大川小では主に、遺族ら大川伝承の会など3団体が語り部ガイドを実施しているが、いずれも事前予約制。ほかに不定期にボランティアガイドをする個人がいる。伝承館に語り部を頼めると思って窓口を訪ねる人もおり、可能な限り要望に応えることにした。
【熊谷利勝】

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