牡鹿病院 応援医師確保
入院患者受け入れ再開
医師不足で入院患者の受け入れを約1カ月間休止していた石巻市立牡鹿病院は、夜間対応する応援医師の確保ができたとして、7日に受け入れを再開した。今春、就任した阿部康二院長(67)=女川町出身=は「過疎地域だが、ここを必要とする住民は多い。医療の質を維持し、安心で健康に住み続けられる地域にしていく」と語った。
鮎川浜にある同院の常勤医は院長1人。内科、外科、歯科の3診療科を有し、急性期や慢性期医療に対応。入院病床も25床あり、県内複数の医療機関から医師派遣を受けて患者を診ていた。
しかし今年3月、一部医療機関が「4月以降、医師の派遣が出来なくなる」と通知。当直体制が維持できなくなり、4月1日から入院受け入れを休止した。外来診療のみの対応となり、入院していた13人は退院や石巻市立病院への転院を余儀なくされた。
突然の派遣中止は4月に始まった「医師の働き方改革」による時間外労働の上限規制などが影響したと見られるが、今回、別の病院の協力が得られ、7日から入院受け入れの再開にこぎ着けた。
阿部院長「地域の期待励みに」
阿部院長は「皆さんの協力で何とか体制を整えることができた。『入院再開を待っていた』などと地域の声もいただいており、これも励みにしていきたい」と話していた。
阿部院長は東北大医学部卒で、脳卒中や認知症、神経難病を専門とする医師。3月まで国立精神・神経医療研究センター=東京都=の病院長だった。「地元で働くという半世紀越しの夢がかなった」と喜びを語る。
きっかけは1年半前、つながりのあった齋藤正美石巻市長から「牡鹿病院の医師不足を何とかしたい。誰か派遣してもらえないか」と相談の電話があり、「私で良ければ」と応じたという。阿部院長は「東日本大震災時、私は古里のために何もできなかったことが心残りだった。市長の熱意に感銘を受けたのも理由であり、ありがたい縁をいただいた」と感謝を語った。
震災前、牡鹿地区の人口は約4300人だったが、現在は半数の約2千人。高齢化率も高く、独居世帯も多い。交通弱者の高齢者にとって、地域内に牡鹿病院がある存在意義は大きいが、医師不足は拭えない。阿部院長は「全国の過疎地域が似た問題を抱え、牡鹿半島はその先進地。住民が住み慣れた地域で暮らし続けるにはしっかりとした医療の提供が欠かせない。関係機関と連携してよりよい病院を目指し、良いモデルケースを作りたい」と展望した。
【山口紘史】
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