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誰のためのケアプラン?

石巻市 認知症講演会 当事者語る 不安な気持ち

 石巻市は12日、マルホンまきあーとテラスで認知症講演会を開き、介護職員や市民ら約150人が参加した。認知症当事者と支援者によるトークもあり、今年1月にアルツハイマー型認知症と診断された仙台市の安積信政さん(73)が登壇。「支えてくれる家族やケアマネジャーには私の不安な気持ちを特に分かってほしい」と切実な思いを打ち明け、当事者を真ん中に置いたケアプラン作成の重要性を説いた。

認知症当事者の安積さん(左)らがトークに参加した

 安積さんは55歳の時に保険会社を早期退職し、介護福祉士の資格を取得。山梨県内でデイサービス生活指導員として働いた後、仙台で小規模多機能型居宅介護施設を開いた。

 在職中に物忘れなどを自覚し、受診したことでアルツハイマーと診断されたという。主治医の勧めで「認知症の人と家族の会宮城県支部」=仙台市=のつどいに参加しつつ、専門知識を持った当事者として「認知症の人の思いを共有する大切さ」を発信している。

 物忘れのような症状が出始めたのは、保険営業をしていた時。「仕事の移動で駅に出向いても『なぜ私はここに来たのか』と思うことがよくあった」と安積さん。アルツハイマーを題材にした小説「明日の記憶」を読んだことなどで「ひょっとすると私もそうかもしれない」と思ったという。

 支援員の経験がある安積さんが特に強調したのは、認知症の人に対するケアプランのあり方。「よく持ち掛けられるのは『自分が思うようなケアプランをケアマネジャーが作ってくれない』という相談。介護やケアプランは誰のためのものか、今一度考えてほしい」と訴えた。

 その上で「私だって私のために必死に計画を立ててくれるケアマネジャーがほしい。私のために苦労する家族であってほしい。本当はそんなことを望んではいけないんでしょうけど」と吐露した。

気にかけ、いたわる地域へ

 一緒に登壇した認知症の人と家族の会宮城県支部代表の若生栄子さん(76)は「認知症の人と、その家族が一緒に幸せにならなければ安心して住み続けられる地域にはならない」と指摘。「地域や支援者は当事者と同じくらい、その家族の思いも大切にして」と呼び掛けた。

 トークに先立って東北福祉大学教授で認知症介護研究・研修センター長の加藤伸司さんが講演。介護者側の抱える問題に触れ、「家族はうつ状態や不安など精神症状を持つ傾向がある。認知症の人に何度も同じことを繰り返して言っても理解してもらえず、介護に対する精神的なねぎらいも少ない。それを周囲に理解してもらえないことが原因」と説いた。

 「手伝ってくれる人を探したり、行政・介護サービスを利用したり、いい意味で『手を抜いて』介護負担を減らすことが大切。在宅介護が最善とは限らない。地域の力も大切で、少し気にかけたり、いたわりの気持ちを持つだけで暮らしやすい社会になる」と支え合いを求めた。
【山口紘史】

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