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子ども撮影の1千点公開、返却 「めだか展」11日から

写真家橋本さん 震災前の石巻生き生きと

 東日本大震災前に石巻市内で開かれていた写真展「めだか展」が11日、マルホンまきあーとテラスで復活する。当時の子どもたちが、家族や友人の表情とともにフィルムカメラに収めた地域の風景約1千点を展示し、震災前の石巻を伝える。「作品を子どもたちに返したい」。写真展の再開は、撮影を指導し、写真を保管する同市出身の写真家、橋本照嵩さん(84)=さいたま市=の願い。その思いを受けた有志も協力し開催がかなった。

 橋本さんは、地域の豊かな自然に目を向けてもらおうと、平成8―21年の間に北上川周辺や日和山公園などで、夏休み中の子どもを対象に写真教室を開催。門脇小、湊小、大川小、吉浜小の児童を中心に市内の幼稚園児や小中学生が参加した。

「良い写真だね」と作品を眺める橋本さん

 教室で使用したのは、27枚撮りの使い捨てカメラ。参加者の中には、1人で5台、6台と次々撮り切ってしまう人もいたよう。橋本さんは「カメラの用意から現像まで自費だったからちょっと大変だったね」と頭をかく。

 その際の写真は、住吉公園や中瀬公園で「めだか展・ぼくたちわたしたちの青空教室」として野外に展示。タイトルは「誰が生徒か先生か」という童謡「めだかの学校」の一節から着想した。「子どもたちの写真は、大人の視点では捉えられないものばかり。教室を開くことで私自身が子どもたちから学ぶことも多かった」と振り返る。

 今回の展示に並ぶ写真は2Lサイズで、いずれも撮影者のコメントが添えられたA4判の用紙に貼り付けてある。当時は何気ない風景であっても、今となっては目にすることのできないものばかり。中瀬の秋葉神社を収めたものなど、北上川周辺を中心に、失われた地域の風景がよみがえる。有志の一人、奥村恵英さん(66)は「ここにあるのは、いくらほしがってももう手に入らない風景。これを見て心が温かくなる人が大勢いるはず」と話す。

子どもの視点で捉えた素直な写真が並ぶ

 橋本さんは、展示の開催に踏み込むまでに葛藤があったという。「撮影者の中には津波で犠牲になった子もいると聞く。現時点でも展示を開くことに『これでいいのか』と戸惑いはあるが、どれもやはり素晴らしい写真。希望する方がいれば返却したいし、多くに見に来てもらいたい」と語った。

 展示はまきあーとの市民ギャラリーで16日まで。午前10時―午後5時。入場無料。15日の午後2―3時に橋本さんのギャラリート―クが開かれる。
【泉野帆薫】

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