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渡波地区に野外劇場「レインボーシアター」

7日オープン 木工作家と建築会社の思い結晶

 音楽イベントなど多彩な催し物を行うことができる野外劇場が石巻市渡波地区の長浜町に整う。「渡波レインボーシアター」と命名され、東日本大震災後、地域の支援活動を行ってきたボランティア団体「チームわたほい」の代表で、木工作家の遠藤伸一さんとウリン材でつながった林田順平商店=本社・大阪府堺市=との長年の交流から生まれた。

 震災の津波で3人の愛児を亡くした遠藤さん。テイラー文庫のための本棚を作る活動を知った同社の林田元宏社長が、遠藤さんに連絡を入れたのが交流の始まり。テイラー文庫は、石巻市内の小学校で英語講師をしていて津波の犠牲になった米国人テイラー・アンダーソンさんの遺志を継ぎ、テイラーさんの両親が始めた小学校などに書籍を贈る活動だ。

 遠藤さんは、東京で修業時代にウリン材を使ったことがあり、建築資材販売などの大手、林田順平商店が輸入販売していたウリンの端材提供を申し出た。そこから渡波小学校への椅子の寄付に発展。その後、同小6年生が卒業制作でウリン材の椅子を学校に残す活動にもつながった。
 
一方、多くの犠牲者が出た渡波地区は、居住できるようになったものの高台に移転した人も多く、かつてのにぎわいは回復していない。「ここに100人でも200人でも集まる場所になれば」との思いで林田社長が劇場建設を提案。「わたほい」に隣接する遠藤さんの親類の土地を活用し、200人ほどが座れる劇場の構想が立ち上がった。

ほぼ完成したレインボーシアター。屋根にはテントを張る

 硬くて重いウリンは、防水性に富み、住宅のウッドデッキなどに適しているとされる。建築現場では短い端材を最終的に燃やして処理することが多く、新たな活用方法を模索していた同社は大量の端材を提供。10㍍近い梁(はり)は、高度な技術でつなぎ合わせた。林田社長によると、ウリン材だけで建築された劇場は全国でも初めてという。

 3人掛けの椅子を含め仲間と劇場建設に携わった遠藤さんは「寂しい場所だったところが寂しくないようにという林田社長の思いには感謝しかない」。わたほいの敷地に遠藤さんが手作りした子どもの遊戯施設の名称が「虹の架け橋」だったことから、劇場名は「渡波レインボーシアター」と名付けた。

近隣者招き記念コンサート

 7月7日に完成式を開き、いしのまき観光大使のバイオリニスト齋藤清さん、石巻市在住のピアニスト田代雅美さんによる記念コンサートを予定し、近隣の住民を無料招待する。今後は、多くの人に利用を呼び掛け、障害者や高校生以下の団体には照明などの基本料金以外は無償で貸し出すという。
 問合せは、事務局の岩沢さん(080―8546―5223)まで。
【元本紙記者・本庄雅之】

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