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女川・出島架橋が架設 「救急車呼べる」と安心

40年来の悲願〝陸続き〟達成

 女川町で進む「出島架橋」の架設工事(364㍍)は16日、いよいよ最後となるアーチ状の中央部(中央径間)の架設作業に入った。女川港石浜で組み立てられたアーチ橋は、大型クレーン船によってつり上げられ、約6㌔離れた離島の出島まで運んで架設。出島と本土が橋でつながり、構想から40年来の町民悲願が実現した。今後は橋の溶接や塗装、舗装工事などを行い、開通時期は来年12月の見込み。

 周囲14㌔の出島には、現在約90人が暮らす。町は昭和54年から島民の利便性向上や災害時の避難道、産業振興を目的に国や県に架橋整備を求め続けた。長年の悲願が実り、平成29年3月に県の技術協力を得て事業着手。橋の組み立ては女川港石浜の陸上で今年1月から行われていた。

 10月以降は完成した橋と本土、離島それぞれの接続道の3つに分け、海上輸送で架設現場に運んだ。最も目を引くアーチ状の橋中央部は長さ245㍍、重さ約2500㌧。寄神建設㈱=兵庫県=が所有する国内最大のクレーン船「海翔(かいしょう)」によってつり上げられ、ゆっくりと運ばれた。架設工事の総事業費は約168億円。3分の2は国の交付金を充てている。

石浜で組み立てたアーチ橋を巨大クレーンでつり、現地に運んだ(15日午後3時ごろ)

 本土側の架設現場を視察した須田善明町長は「天候に恵まれずスケジュールがずれ込んだが、無事に完了できて一安心。架橋は町と島の大きな財産。もともと島にある文化と新しい文化との調和も目指したい」と語った。

 架設の様子は動画サイトのユーチューブで生配信され、町生涯学習センターホールではパブリックビューイングを実施。住民や女川小中の児童生徒が本土と島がつながる歴史的瞬間に立ち会った。

開通は来年12月予定
 島では島民も架設作業を見守った。出島寺間の女性(80)は「長年の悲願。車で行き来できるので生活の利便性が増し、島もにぎやかになる」と喜んだ。

出島(左)と本土(右)がアーチ状の橋でつながった(16日午前8時50分ごろ、出島から撮影)

 一方、石巻市に住む寺間出身の阿部隆浩さん(57)は「島では自分の船で急病者も町に運んでいた。今後は救急車を呼べる。高齢世帯だけでなく新しく住みたい人の安心材料にもなる」と期待。「この橋を心待ちにしていた島民の多くはすでに他界。もう少し早く実現していれば」と話していた。
【山口紘史】


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