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震災13年 故人に心寄せ 記憶つなぐ

思い風に乗せ 大空へ

 東日本大震災の発生から13年の11日、約6千人が犠牲となった石巻地方は深い祈りに包まれた。手を合わせて涙を浮かべる人、歩んだ月日とともに気持ちの整理に踏み出す人。それぞれの過ごし方で故人や当時の風景を思い起こし、心を寄せながら震災を知らない世代に記憶をつないだ。

犠牲者を追悼し550個の風船を飛ばした

 石巻南浜津波復興祈念公園では「がんばろう!石巻」看板の前で市民有志の追悼行事「3・11のつどい」が開かれ、石巻市の犠牲者数に合わせて約4千個の灯籠が並んだ。

 「毎日を大切に。震災の記憶を伝えていきます」「能登のみなさんに心を寄せながらあの日を思う」。全国から寄せられたメッセージが書き込まれ、訪れた人々が静かに見入っていた。

 追悼行事では、震災後に生まれた子どもたちが思いをしたためた手紙を朗読。石巻小学校4年の安藤颯芭さんは、背後に迫る津波から逃げ延びた母親の体験を語った。

 一緒に避難した犬をその場にいた人たちと交代で抱き、暖を取って寒さをしのいだという。その上で「お母さんが生きていてくれたから私が産まれました。せっかく生まれた私たちは、どんな時でも生き残れるようみんなで命が助かるよう行動します」と話した。

 参加者は能登半島地震の被災地に向けて黙とうした後、東日本大震災の発災時刻である後2時46分には、サイレンの吹鳴に合わせて再び黙とうした。その後、550個の風船やハト風船を空に飛ばし、犠牲者を悼んだ。

 広場に設置された献花台で手を合わせた石巻市大街道の60代女性は、職場の同僚を南浜町で亡くした。「震災のことはあまり思い出したくなかった。周りにも話さないように過ごしてきたが、こうして当時を思って亡くなった方に手を合わせることで、やっと13年前の心の整理ができたように思う」と話していた。

 夕方には灯籠に光がともされ、浮かび上がった「3・11追悼」や「ともに」といった文字が広場を優しく照らした。【泉野帆薫】

 石巻市渡波地区の住民有志によるボランティア団体「チームわたほい」を中心とした実行委員会は11日夜、同地区で『3・11慰霊の花火2024~夢と希望の虹花火~』と題して花火を打ち上げた。

夜空に献花 大輪咲く

能登にも届け 渡波で尺玉

 3年前から毎年この日に実施。運営資金は地元住民や企業の募金、クラウドファンディングで募った。今年は94発打ち上げ、このうち4発は直径が約320㍍にもなる特大の10号玉(尺玉)。うち1発は能登半島地震で被災した人々に思いを寄せた。

直径320㍍の大輪が夜空に咲いた

 「ドーン」と天にも届きそうなほど大きな音を響かせ、夜空に咲く尺玉の大輪は、見上げる人々の笑顔を優しく照らしていた。

 津波で子ども3人を亡くした遠藤伸一実行委員長(55)は「支えてくれた人々への感謝も込めた花火。能登地震で大変な中にいる皆さんにも心を寄せている。思いが届けば」と話した。【山口紘史】

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