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田代島の伝説がアニメに

沼田監督らロケ地訪問 「海から上がった観音様」

 国内に残る海にまつわる民話を発掘し、アニメーションを制作する「海ノ民話プロジェクト」(日本昔ばなし協会主催)は本年度、石巻市の離島、田代島に伝わる民話「海から上がった観音様」をアニメ化する。23日に沼田心之介監督ら制作陣をはじめ、市、石巻観光協会の関係者10人でロケ地を訪ね、島内にある三ツ石観音堂などを巡った。作品は年内完成予定で、来年2月11には市かわまち交流センターで市民向けの上映会を開く。

 同プロジェクトは海と密接にかかわる日本の民話を集め、地域への誇りを子どもたちに伝えるのを目的に平成30年に始まった。これまで製作された作品は67本。動画サイトで一般公開されている。

船上でウミネコの様子を収める沼田監督(右)

 石巻では同市中央の㈱網地島ライン石巻中央発着所から旅客船で田代島へ出航。沼田監督は早速、海の様子や船と並走するウミネコを撮影した。島では島民が案内役となり、西端にある三ツ石観音堂を目指した。道路は軽自動車がようやく通れる細い道で、車は草木をかき分けながら進んでいった。

 「海から上がった観音様」は、海の底にあった金の馬に乗った観音様が、島にお堂を作ると三ツ石と呼ばれる場所から海に上がり、島が豊漁になったという伝説。三ツ石観音堂は11年に一度開帳され、内部にまつられている十一面観音を見ることができるが、島民でもその姿を記憶している人はいないという。

 観音堂の先に「駒の足跡」と呼ばれる海岸があり、その岩肌には馬が登ってきたひづめの跡が刻まれた言い伝えが残る。沼田監督は海岸の形状や穴の位置を丹念に調べ、映像に残した。

山道を降り、切り立った崖の「駒の足跡」も訪れた

 島内の宿泊施設「マンガアイランド」なども視察。沼田監督は「昔は三ツ石観音堂でお祭りもあったと聞き、文化が語り継がれているのを実感した。作画のための資料が多く得られたので、劇中で再現していく」と話し、「猫島」としての要素も加えて制作するという。

 石巻観光協会の阿部勝浩常務は「アニメは島の魅力を伝えるものとして、田代島の観光促進にもつながる。全国の皆さんに興味を持ってもらえたら」と期待した。同プロジェクトは今年、全国から集めた民話25作のアニメーションを制作する予定で、1作品は約5分になるという。
【渡邊裕紀】

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