DVS導入備忘

■この記事の内容

 自宅練習用のDJ機材をDigital Vinyl System(以降DVS)に乗り換えたので、その整理と備忘

■DVSってなんなのか

 Vinyl機材でPCDJを扱うシステム。コントロール用レコードの信号をインタフェースを介してPCに取り込むことでPCDJのシステムを操作し、VinylのDJプレイに近い所作で、PC内の音源を使用したDJプレイを行うことができる。

■機材遍歴と今回の変更

○機材遍歴

2017.2 Pioneer DDJ-RB 購入(売却済)
2020.1 Pioneer DDJ-800 購入(売却済)
2020.9 Technics SL-1200MK3D(中古) 購入
2022.2 Technics SL-1200MK7(中古) 購入
2022.3 Vestax PMC-05 ProⅡ(中古) 購入
2023.3 Pioneer INTERFACE2(中古) 購入

○変更前

楽曲管理:Pioneer RekordBox DJ / RekordBox
自宅機材:DDJ-800
現場:現場のCDJ

○変更後

楽曲管理:Pioneer RekordBox DJ / RekordBox
機材:INTERFACE2(Technics SL-1200 series + Mixer)
現場:これまでどおり現場のCDJ、またはDVSを使用

■DVSにした理由

 おおきく4つ

①自分のプレイスタイルに、最新システムは過剰

 最新のPCDJソフトにはIZOTOPEのRX7のようなパート毎に音を抽出する機能が実装されたが、ボタンプッシュと古のミックススタイルの踏襲な自分のプレイスタイルでは、リアルタイムにMashupしたりする姿が想像できなかった。
 システムに新しい機能が実装されるとそれに対応したコントローラーやオールインワンの機材が発売されるが、それについていく必要性もなくなっため、PCDJが操作できる程度には新しい、かつそれなりに耐久性のある機材を考えたときに、今回DVSが検討に入ってきた。

②タンテしかない現場に乗り込みたい

 PCDJをメインにしていると、現場や機材が限られるのが勿体ないと思っており、お洒落で小規模な飲食店はタンテのみ置かれている場所が多く、CDJなりオールインワンやスタンドアロンの機材があるところは稀、というか、ほぼ無い。
 そういうところに乗り込みたいと思いつつ機材問題で諦めたりしていたので、今後そういうところになんとか乗り込んでDJ展開したいと思った時の選択肢として。

③ヴァイナルハラスメントに折れた

 関西に来てからというもの「Vinylやりなよ」と言われる場面が増えた。自分はそれを「ヴァイナルハラスメント(※)」と言って度々ネタにしているのだが、そうはいってもレコードは楽しい。

※ここでのヴァイナルハラスメントは「データDJに対する過剰なレコード推奨行為」のことをいい、特に、DJをしている横で「持ってる~」とレコードのジャケットをちらつかせる行為と、パーティーで一緒になる度にしつこく「レコードでやろうぜ!」とVinyl界隈に勧誘する行為のことをいう。

 いっそのことレコードのDJに乗り換えるのも無理ではないと思うのだが、これまでのライブラリを捨ててしまうのが勿体ないし、おいそれと置き換えられるものでもない。何より、レコードでしか掛けることができない楽曲と同じくらい、CDやデータでしか存在していない楽曲も存在する。
 なので、間を取ったDVSならば、今までのライブラリの積み上げの上にレコードも取り込んで共存していけるのでは、と思った次第。

④タンテ2台も持っているのにもったいない

 散々理由をこねくり回してきたが、実際のところ、自宅にタンテが2台揃っているのに持ち腐れるのもアレなので、有効活用しようと思っただけのところもある。

***

まとめると
・最新機材は過剰だけど、レコードほど先祖返りも無理
・でも、なんだかんだレコードたのしい
・対応現場増える(はず)
・ついで自宅機材をミニマルしつつ有効活用
といったところ。

 ただ、現実的には今後もCDJとDVSの併用になると思っている。現場によっては「新しめの機材が入っているのに、DVSできない(後述するHardware Unlockの有無)」などあるためである。

■選定と購入

 DVSは主にPioneer、Serato、Denonから発売されているが、もともとPioneerのRekordBox DJ(以下レコボ)をメインに使用していたので、引き続きレコボを採用することにした。
 この点については一応検討したものの、Seratoは現在DVSインタフェース(コントロールVinylの信号を拾うための機器)を販売しておらず、インタフェースを採用する場合ハード側の環境が限られてしまうため除外。また、Denonも導入費用としては安かったものの、システムを採用しているDJが周りにいなかった。昨今のPioneerの展開が好きでなく、一度逃れたい気持ちもあったが、上記消去法では結局Pioneerに戻ってきてしまった。
 コントロールヴァイナルは先にも書いた各社が出しているそれを買ったらよいが、インタフェースについては、ミキサーに内蔵されているものと、ミキサーに至るまでの入力信号を変換する、文字通りのインタフェースのタイプが存在する。今回は自宅にすでにVestaxのミキサーがあったので、感触をつかむのも兼ねて先にPioneerのDVSインタフェース「INTERFACE2」を購入することにした。

 手に入るまでは早く、「INTERFACE2ほしいんですよね」とTwitterで呟いたら、ちょうど売却予定の方がいらしたので、そのまま購入した。

 この機材にはHardware Unlockという、機材への接続時に現行のレコボDJの機能制限を解除できる仕組みが入っており、レコボDJの有料プラン、つまりサブスクリプションに登録することなくDVS機能を使用できる。
 商売なので仕方ない部分もあるのだが、昨今はレコボに限らずSeratoでもサブスクに登録しないと機能が使えないというのが多い。しかし、週末DJには価格が高いうえ、それによって提供される機能が過剰すぎる部分もあるため、できるならば課金せずに使いたい。
 現場に持ち込むときも最新のミキサーでもない限りINTERFACE2を持ち込むことになると思うため、今回の購入候補に挙がった。
 なお、Hardware Unlockはアンロックできる機材に接続さえされていればよいので、PCにINTERFACE2を無駄に接続して、使用したい機材の機能制限を外すというコスい技もある、らしい。

■導入と導入後

○導入

 さくさくセッティングして、30分くらいで音が出るようになった。

○導入後と所感

 実際に触った感触では思っていたよりも扱いやすく、CDJのように正確な繋ぎをすることは難しいが、頭ポン出しの繋ぎはむしろやりやすくなった。
 とはいっても、DVSとレコードの扱いは異なり、Vinylプレイの練習になるかといったら正直ならない。ただ、回転する円盤をこするか、再生ボタンを押すかというCDJとの所作の違いはあるので、今後は繋ぎ方を含めVinylプレイの所作に寄りそうな気がしている。

 INTERFACE2を通すとレコード生音の音が悪くなる、という話を聞いており、この点については調べたり実際に確認していたが自宅環境では劣化が分からなかった。INTERFACE2を介すと確かに音量は小さくなったが、単純に出力音量が小さいだけにも聞こえる。Phono入力Line出力の話に関連するかもしれないが、インタフェースと言っているくらいなので、PC繋いでようが繋いでなかろうが一律A/D変換かけているのだろうと思う(たぶん)。レコード向けにチューニングしているスピーカーだと悪く聞こえる可能性がある。

 ブレーキなどはPCDJをコントローラで操作するよりも遥かに精度が悪く、扱いにくさは実際あるように思った。そのあたりは通常のレコードのDJと同様、盤の埃をこまめに取ったり、盤が回転するということに慣れたら問題ないのかなという印象。

 その他、頭出しにあたりスリップマットやシートの存在が大切なことに気づき、Dr.Suzukiのスリップマットとシートをそれぞれ購入した。

■今後

 PHASEという各社DVSの拡張セッティング機器がある。コントロールVinylの信号を無線で飛ばす技術だが、導入すると針やコントロールVinylを消耗しないので当初から検討にあった。しかし、この機器の導入はDVSのモードが制限されてしまい、専用ミキサーや別途用意したMIDIパッドで頭出しをする必要がでてくるため、保留となった。外付けのMIDIパッドはPioneerからも発売されていたが廃盤で、中古も高騰しており、簡単には手に入らなそうである。
 そのため現状のDVSコントロールは、通常のVinyl同様、頭出しの度に針を戻す必要がある。個人的にはこれが一番楽な気がしている。

 針は今のところオルトフォンを使用しているが、昨今の円安で高騰しており、所詮は信号をこすっているだけなのにひどくコスパが悪いので、別途DVS用のシェルのセットを購入検討している。
 また、色付きのコントロールVinylもレーベル面のデザインは最悪だが、見栄え的によいので、注文して到着を待っている。

 INTERFACE2は外に持っていく用の機材として考えており、自宅練習用のミキサーにDJM-450またはDJM-750MK2の購入を考えている。よく回している箱とボタン等が同じ配置の機材である点、現在はサブスク登録なしでハードウェアアンロックできる点などがある。ただ、軒並み在庫切れで、近くに新機材が登場しそうな雰囲気ではあるため、中古市場を眺めつつ検討している。

■まとめ

 気軽に入れるにはややめんどいシステムではあるが、ここ最近の自分の機材の使い方では非常に満足している。
 あとはDVSでも支障ないプレイができるよう日々練習したい所存。


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