今更アマカノ2+の話をする迂闊さ

 発売日に買ったんだけど、初手に結灯ルートをクリアしたのがよくなかった。なぜか。

 単純に、彼女が幸せになっていない世界を見るのが嫌になったからだ。この作品は「アマカノ2」のFDであり、基本的に内容はハッピーエンドのその先のドチャクソ甘い日々と、恋人から夫婦になっていく過程という形で構成されている。追加ヒロインである咲來に関しては、それらに加えて恋人になれそうでなっていない微妙な距離まで楽しめるが、まぁそれはこのシリーズの肝なので当然である。

 話を戻すが。
 結灯ルートであっても、その咲來を始めて、ちとせ、玲のヒロインたちはそれなりに幸せを謳歌しているし、遠くない未来において主人公以外のパートナーを見つけるだろう、と思わせてくれる。一途に主人公だけを想って年老いて死んでいく……なんて重くて湿った感情は持っていない。エロゲのヒロインとしてそれはどうなの、という人もいるかもしれないが、現実を鑑みればそんなものだろう。

 だが結灯は明らかに違った。

 彼女のルート以外の結灯は自覚する前に恋に破れたり、明確に失恋を自覚し、その事実が心に影を落とし、わりと自暴自棄な所がある。咲來ルートでは彼女を助け、主人公と結ばれる手助けをするが、それは優しさからというより、自分のような敗者が生まれるのを見たくない、というある種の自棄だったのではないか、と思えた。玲やちとせルートでは、途中から出なくなるほどにその辺は徹底していた。

 そう。

 結灯だけは主人公としか幸せになれなかった。その事実を叩きつけられた俺は、他のヒロインのルートをどうしても攻略できず、それでも買ったからにはやらねば損だと自分に言い聞かせて、なんとかプレイした。理由は後述するが、咲來ルート以外はわりと拷問だった。いや、ゲームとしては面白い。俺の第二次エロゲブームの終わりを祝う作品としてこれ以上はない、と言い切っていいくらいだった。

 だが結灯は幸せになっていなかった。
 それだけだが、致命的な問題だった。

 だからこそ、結灯はメインヒロインだったと言えるのだろう。エロゲにおけるメインヒロインとは、主人公がいなければ幸せになれず、本当の笑顔になれないヒロイン性を持ったキャラのことを言うのだと思うから。

 まぁ、媒体を変えれば話は変わる。最近やった作品なので例に挙げるが、P5Rのキャラたちは仲間も、仲間ではないが協力者となってくれるキャラたちも、主人公がいないと人生お先真っ暗な連中が多かった。だからこそ、R部分の追加パートである三学期のボスの理想には意味があったわけだが、まぁこの話はここまでだ。要するに、RPGの世界は主人公がいないと何もかもおしまいだと覚えてくれればいい。

 さて話を戻すと、ここで追加ヒロインの咲來の存在である。
 彼女もまぁ、主人公がいなくてもそれなりに幸せになれたはずだが、それなり止まりで終わることは想像に難くない。
 というシナリオ以外のところ、具体的には結婚報告に咲來の実家を訪ねた辺りの件があまりにもメインヒロインだった。
 なぜなら、過去作の主人公とヒロイン全員が参戦して祝杯を挙げたのである。

 一応書いておくと、他のヒロインルートでも顔見せ程度に二人組あるいはカップルで出てくる(アマカノ2と+どちらでも)のだが、咲來ルートはその本気度合いが違う。
 ヒロイン八人と主人公二人の成長した姿が、イラストありで出てくるのである。他のヒロインルートでは旧作のアイコンの使い回しだったのだが、咲來ルートでは全員がちゃんと大人になっていた。
 そして、アマカノシリーズのすべてのヒロインに祝福されて、咲來と主人公は結婚するのだ。これがメインヒロインの扱いでなくて何なのか、である。しかも結灯もしっかりと結婚式に参加している。

 はてさて、アマカノ2+のメインヒロインは結灯と咲來、どちらだったのだろう。もちろん、エロゲのメインヒロインなんてものは、ユーザーが決めるものである。たとえゲームのシステム、シナリオ上でどれだけ優遇されようが、観測者はプレイヤーなのだから、見たいと欲する現実を決めるくらいは許されている。ゲームだから。現実では見たくない現実を認識して生きねばならないが、ゲームだからね!

 それに、アマカノ2のメインヒロインは結灯、2+は咲來、という割り切りをしてもいいだろう。それくらい、咲來のシナリオには力が入っていたのは事実である。

 それでも、俺は。
 その現実を踏まえて、そして、咲來のキャラとビジュアル、シナリオが大層俺の好みであることを加味しても。

 結灯がメインヒロインであり、歴史の勝者であって欲しいと願う。手を伸ばせば君が笑顔になるかもしれないのに、伸ばさなかった絶対に後悔する。だから俺は君に手を伸ばす。
 なんて仮面ライダーオーズみたいなことを言いたくなるシナリオの果てに結ばれて、晴れやかに笑うようになった結灯の笑顔を祝福したいから。

 だから、俺とアマカノシリーズとの縁もここまで。もし続きが出て、主人公と結ばれなかった結灯を見たら、それだけでゲームプレイができなくなると、俺はわかっているから……

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