メモリーズオフを想い出す夜の時間

 第二弾。別に前の文章は読まなくても、つまりは、メモリーズオフシリーズという変な方向に尖った結果、受けたようなコケたようなそんな感じになったということだけを前提として把握しておけばいいのである。

 さて、四作目の「それから」だ。個人的には一番好きな作品だが、世間的には凡作、くらいだと思う。同時に、メモリーズオフらしくない、とも言われる。というのも、前作「想い出に変わる君」でぶっ飛んだものにしたら受けなかったものだから、軌道修正して王道路線にしたからだ。

 もちろん、メモリーズオフシリーズらしい重さや切なさ、喪失の先にある未来という軸はブレていなかった。だがそれだけだった。良くも悪くも、メモリーズオフシリーズである必要は薄かったと言える作品だ。

 繰り返しになるが、俺は一番好きだし、メインヒロインの陵いのりに関しては、俺のオタク人生を語るにおいて決して欠かすことのできないヒロインだと言い切ってしまえる。
 だがしかし、このいのりが受けなかった。
 その理由はわかりやすい。この子の心情の変化の流れが一切、主人公視点だとわからなかったのだ。

 現代ならば、ヒロイン視点に切り替えるという手法はよくあるものだが、当時はそんなことはなかったし、ゲーム発売すぐに出たこのいのり視点を描いた小説の存在もあり、ゲーム内でことさら描くことはない、という判断だったのかもしれない。だが大体のユーザーはゲームの情報で評価するし、あと、件の小説は大都市のオタクショップくらいにしか入荷しなかった有り様。田舎の高校生だった俺は、行きつけの書店の店長に直談判して一冊だけ入荷してもらったから読めたが、たぶん、存在すら知らないユーザーの方が多かったはずだ。

 挙句に、このいのりは冒頭で主人公と恋人から他人に戻りたい、と言い出すわけだが、いわゆる学園編だと、わりとあっさりとよりを戻してしまうのだ。いのりの真実を知っていると、この行為も許せるような気がするのだが、ゲーム内だけの情報だけで完結させるつもりだったならば、この判断は間違いなく失敗だった。義理の妹ではいのりとよりを戻した方が自然だったからいいのだが、もう一人のヒロインのルートでは後味が悪いことこの上ないことになったのもマイナスだったし、そのヒロインが人気トップだったのもよくない影響を生んだと言える。

 その辺りを考慮してか、次の「5」ではリバースカットという名前の、ヒロインのシナリオをヒロイン視点で振り返る、というシステムが搭載されたし、「それから」のPSP版ではいのり視点の前日譚を入れるなど、露骨なテコ入れがされた。まぁ、この前日譚はtrueシナリオのネタバレをしまくりなので、前日譚だが、それの攻略後にやらないといけない、という意味不明な代物になっていた。しかも予算の都合か声がなく、イラストの質も低かった。シナリオの出来そのものがいいだけに、これは残念ではあった。

 ともあれ、そういった「それから」の反省点を踏まえ、その上でやっぱり尖がったことやりたい! というスタッフの欲望から「5」が生まれた。これは主人公の親友が事故死をして、その自己の真相がカギを握る物語……という触れ込みだったのだが、いや正直その設定いるかなぁ、となる出来ではあった。特に年上ヒロインと後輩ヒロインルートでそれは顕著だったし、二人のメインヒロインルートでも、無駄に話が重くなるだけで、面白さには繋がらなかった。余談だが、このメインヒロインのうちの一人のエピローグのひどさは、個人的に伝説級だ。小説版ではまったく別物になっており、最初からこうしておけよ! と思わずにはいられなかった。

 更に余談だが、この作品のとあるヒロインの得意料理の、カレーパスタ。独り暮らしになった俺はうきうきで再現したが、まぁ、おいしくなかった。カレーとパスタの相性がよくなかったのだろうが、それ以上に、好きな異性の作った飯ならうまく感じるのだろう、と俺は自分を納得させた。

 この「5」でメーカーのKIDから発売されたメモリーズオフシリーズは終わりである。KIDはこのメモリーズオフシリーズとinfinityシリーズの二枚看板だったのだが、まさかのどちらも失敗したものだから、色々と手を尽くしたが時すでに遅し、だった。Remember11が成功していればまったく違う未来があったかもしれないが、断片的な情報から解き明かした真実から察するに、コンセプトの時点でゲームという遊戯に喧嘩を売っていたようなものなので、そりゃまぁ不評になるよな……となるしかなかった。

 もっとも、その失敗があったからカオスヘッドから始まり、シュタインズ・ゲートという名作を生み出した科学ADVシリーズが生まれたとも言えるので、結果的にはよかったのかもしれない。

 というわけで、今日はここまで。というか、この後のメモリーズオフシリーズははっきり言って、最終作のIF以外の出来がだいぶアレなので、あまり語りたくないというか……IFも過去の栄光を取り戻すほどでもなかったし。ただ、有終の美を飾ったのは間違いないのだが、シンスメモリーズで再始動したものだから面倒臭いことになってしまった……気が向いたら書きます、とさ

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