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にぎやかな静寂

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S38年生まれの低空飛行モノカキがのんびり語ります。
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2020年5月の記事一覧

怪談琵琶湖一周より「すじえび」GWver.お読みいただいておおきにでした。

怪談琵琶湖一周より「すじえび」GWver.お読みいただいておおきにでした。

 ふと思いついて始めたGWの余興も最後の一話となりました。先の見えない不安定な日々ですが、なにがあれしましたら、ぜひ一度ゆっくり琵琶湖に遊びに来てくださいね。

「すじえび」
 滋賀県の北部に古戦場として知られるS岳がある。
 そのS岳から数キロ・メートル南に位置する、とある漁村に、かつてこんな話が伝わっていたという。

 その昔、琵琶湖に沿うようにして在るその漁村では、雨風の強い夜は、どの家もき

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怪談琵琶湖一周より「湖岸の石橋」GWver. (おひまつぶしに)

怪談琵琶湖一周より「湖岸の石橋」GWver. (おひまつぶしに)

 この話を書いたとき、琵琶湖に流れ込む河川の数を調べてみたら大小合わせて四百六十本とありました。つまりその数は、琵琶湖を一周する時に渡るおおよその橋の数でもあります。

[湖岸の石橋」

 Sさんが免許を取ったばかりの頃だというから数十年前のことになる。
 ある夏のこと。
 Sさんは父親の軽トラックを借りてドライブに出かけた。
 とくに目的もないまま琵琶湖に沿って延びる浜街道を走った。近いうちに

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怪談琵琶湖一周より「ただいま」GWver.

怪談琵琶湖一周より「ただいま」GWver.

「まくら」と合わせてエッセイに近い話になっています。GWver.ではそれぞれまくらを省略してアップしていますが、これはそのままお読み頂こうと思います―――。

 中学からの悪友にYという男がいる。
 その日、私とYは体育館の裏の土手の斜面に寝転がって馬鹿話をしていた。放課後にのんびりしていたということは、部活を引退した三年生の秋だったのだろう。まあ、それにしてもずいぶん昔の話になる。
 どんな会話

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怪談琵琶湖一周より「化かされる」GWver.

怪談琵琶湖一周より「化かされる」GWver.

 琵琶湖を囲む山々には、「怖っ!」と震えるような怪談ばかりでなく、聞き終わったあと思わず「なんと、まあ」とか「まじっすか」と言ってしまうような不思議な話もあります。今日はひとつそんなお話を―――。

 現在七十代のTさんは、湖北地方のある村に生まれ育った。
 Tさんが小学生の頃の話だというから、時代は昭和三十年代の初めのことになる。

 その頃Tさんは時々父親の山仕事を手伝って小遣いを貰っていた。

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怪談琵琶湖一周より「船の島」GWver.

怪談琵琶湖一周より「船の島」GWver.

 どこへも行けない史上最高に残念なGW。お出掛けの代わりにはなりませんが、一、二分間だけ昭和の琵琶湖にご案内いたしましょう―――。

 多景島(たけしま)は、日本の淡水湖で唯一人が住む集落を持つ沖ノ島、西国三十三箇所三十番札所の竹生島に次いで琵琶湖で三番目に大きな島である。
 琵琶湖の東岸から多景島を望むと、煙突の立った軍艦のように見える。
 水泳場に連れてきたもらった小さな子どもは、両親から「お

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おひまつぶしに。

おひまつぶしに。

怪談琵琶湖一周より 「黄色いワンピース」(ちょっと追記付)

 滋賀県の南東部にあたる甲賀路には奈良時代の南部仏教の枠を取り入れたT宗の寺院が多くある。この話をしてくださった女性Hさんはそうしたお寺にお育ちになった。

 この話は、Hさんのお母さんがそのお寺に嫁いできて間もない頃に体験された話である。
 お寺は小さな山の山間に在った。歩いて上っても十五分ほどで登りきれる程度の山である。 
 平地か

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