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通称シニョリッジ(無担保型アルゴステーブル)で書いておきたい4つの話

わたしは2021/2月頃のnya cash事件も含めてBSC魔界で無担保型アルゴステーブルを渡り歩きました。


これらのプロジェクトはBDO、MDO、BTD、MSC、SOUP、WANTANMEE、POLLO等が存在します。またイーサリアムにもBAC等の先行者が存在します。現在はPAPL等の新世代が登場し始めています。

旧世代は今はどれも破綻し殆ど機能していない状態で、かつ魔界の端の方でひっそりと流行っていたので存在を知らない方も多いかと思います。


ですのでこの機会に、

①何が起こったのか

②どういう仕組みなのか

③どう攻略すべきなのか

④これらはどう捉えるべきなのか

をまとめてどなたかの役に立てばと思いこの記事を書く事にしました。



①何が起こったのか

結論から言えば、全て破綻しました。

現在ステーブルとして機能しているプロジェクトはありません。

特にnya cash事件は特筆すべき物だったのでこちらにまとめてあります。

よろしければご覧ください。


これらのBSCプロジェクトの中で最も成功したと言えるのはBDOです。

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(引用元 coinMarketCap

このように典型的バブルチャートを描いた末に崩壊しました。

最盛期でBDOのTVLは3.2億$程度まで行きましたが、あまり界隈では話題になっておらず、ひっそりとバブルしてひっそりと終わったと言えるでしょう。

バブルが崩壊するまでは日利2~3%を貰いながら価格も上昇していくという凄まじい効率を叩き出しました。

数か月保ったので、このタイミングまではCAKEとBDOにずっと投資した人が大きく勝ったと思われます。

故にBDO(Bdollar)には未だに根強いファンが存在し、またBDO自体はBearnというプロジェクトの一部門なので他にvault、DEX、Lending、カジノ等が存在しており完全に死んでは居ません。また、MVB候補(BSCの優秀プロジェクトの表彰とバイナンスのサポート、上場チャンス)にも選ばれたことがあるため、再起の可能性が残っているプロジェクトではあります。

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(引用元:Binance Chain Blog

PHASE2の同期には、AUTO、BUNNY、BEEFYといったBSCの基幹レベルのプロジェクトが居たほどには一時期勢いがあったのです。

先日Bvaultが11M$規模のフラッシュローンアタックを受けましたが、迅速に90%近くをBUSDで補償する等、対応も未だしっかりしています。

いずれ蘇る事があるかもしれないと思っており、未だにわたしはひっそりと応援しています。



さて、同時期にMDO、BTD、MSC、SOUP、WANTAN等の類似プロジェクトが多数登場し、どれもある程度の成功をしました。

特にSOUPやWANTANは日利4~6%クラスを叩き出し、WANTANに至っては1枚15万$程度(当時概ね2.5BTC)まで最大瞬間風速で到達したので当時のひっそりバブルの凄さを感じます。

そしてこれが崩壊の直前でした。まさに幸福感の中に消えていくの典型だった訳です。

これらは全て、その時のリード銘柄であったBDOがペグを外れた瞬間にほぼ一斉に終わりました。

BDOがペグを外れた原因の一つが類似プロジェクトの存在と考えられる部分もあったので皮肉な話です。ある程度粘った物もありましたが結局同じでした。

ここからは何故そうなったのかを考えていく為にも、仕組みを見ていきましょう。

②どういった仕組みなのか

今回紹介する無担保型アルゴステーブルは、3つのトークンから出来ています。


①1$等、何らかの対象にペグする事を目指すトークン

(BNBやETH、DOGEやGOLD、20$やJPYへのペグを目指す等もあったので対象は別に何でも良いようです)


②株式に近い、shareトークン、保有してステーキングする事で配当(シニョリッジ)を得ることが出来る。


③BOND 債権、1$を割った場合に購入する事ができ、購入すると①がバーンされる事で価格の上昇圧に繋がる。1$を超えるとボーナスがついて償還出来るので利益を得られる。


これらの三つのトークンを利用して1$にペグされることを目指すのが主な共通点です。

視覚的にはこのイメージです。(左からペグ対象、株式、債券)

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(引用元 pollo.finance

結論から言えば、破綻します。

最大の理由は③のBONDが弱すぎる事です。

これを買って利益を出すのは1$+に戻ってからなのですが、1$に戻ってから当面配当から償還にコストが費やされる為に②の株式ホルダーのAPRが低下し魅力が低下します。

加えて償還される物は①のトークンなので結局売り圧になってしまい再度1を割ってしまうのです。

ですからこれはペグ出来るシステムではありません。

ステーブルコインではないと思ってください(重要)


それでもある程度長期間これらは堅調でした。その秘訣について解説します。

まず説明しやすいようにここからはBDOの1$ペッグトークン、BDOの名前を利用します。(BDO-sBDO-bBDOで成り立っています)

基本的にはこのシステムは主に二種のLPとステーキングが存在しており、それがカギになっています。


①BDO-BUSDのLP(報酬はsBDO)

②sBDO-BUSDのLP (報酬はsBDO)

③sBDOをステークして配当(シニョリッジ)を受け取る人 (報酬はBDO)


流れとしては、

1$を超えている→sBDOをステークしている人にBDOが配られる→配られたBDOを売ってBUSDにするorLPにする

というのが一連の流れです。

大前提として、配られたBDOは売られることが殆どなので、誰かが買わないと1を超えません。買う理由はLPが高金利だからです。(今ではそういう魔界台はかなり減りましたが、数か月にわたって安定して1%~2%の日利があったので凄まじかったのが分かります)

では、LPの高金利は何から出ているのか?それはsBDOの価格です。

LP報酬としてsBDOを貰っているので、sBDOの値段が上がるとLPのAPRが上がります。そのため例のバブルチャートのように価格が上昇していくとLPの金利も上がっていく訳です。

ポイント

sBDOの価格が高いほどBDO-BUSDのLPがBDOを購入するメリットが大きくなる。


一方でsBDOのステーカーのAPRはsBDOの価格が下がると上昇するという変わった特性を持っています。(これは株式における、株価が下がると配当利回りが上がるのと同じ現象です。100円の配当を1000円で買うのと100円で買うのでは利回りが10倍違います。)

通常魔界APRはトークンの価格が下がるとAPRが低下するので買う理由も同時に弱くなってしまい、どんどんTVLが落ちて行くというマイナススパイラルの宿命を抱えています。

その点、sBDOは逆に価格が落ちるとAPRが上がるので押し目買いが入るというのが強みでした。故に継続性がある程度ありバブルを形成できたと言えるでしょう。

一方で、sBDOは逆に価格が上がるとAPRが下がるという弱点も持っています。ですのでsBDOのAPRというのは下がり続けていくという宿命です。

正確にsBDOのステークAPRに影響する物を書くと、

①BDOの価格(高いほどAPRが上がる、1$を割ると0になる)

②sBDOの価格(高いほどAPRが下がる、低いほど上がる)

③インフレーション率(高い程APRが上がる)

④ステーキングされている枚数(少ないほどAPRが上がる、後述)

⑤BONDが残っている枚数(多いほどAPRが下がる)

⑥保険機構や運営の取り分(多いほどAPRが下がる)

が複雑に絡んで影響を与えます。シンプルにまとめましょう。

ポイント

sBDOが安く参加者が少なくインフレ率が高くBDOの価格が高い程、sBDOステーカーのメリットが大きくなる。


さて、先ほどのポイントを比較してましょう。

sBDOの価格が高くBDOの価格が安い程、BDO-BUSDのLPがBDOを購入するメリットが大きくなる。

sBDOが安く参加者が少なくインフレ率が高くBDOの価格が高い程、sBDOステーカーのメリットが大きくなる。

見事にかなりの部分でお互いのメリットが逆になっています。

この中で両方にデメリットがないものはインフレ率くらいです、そしてBDOが崩壊する少し前にはインフレ率が1.5%→1.25%に下がりました。この時にステーカーのAPRは1000%超えから700%程に落ちました。そして価格が8000$を付けたあたりからAPRが上がるのが止まったのです。

APRが700%というのは当時の感覚では不味かったです。LPの日利も1%を割るぐらいになりました。

信じられない事に当時の感覚では両方不味かったのです。

不味いとsBDOが買われなくなります(sBDOの価格が上がるとさらに不味くなる為)、そしてsBDOの価格が上がらないとBDO-BUSDのLPも金利も下がっていくのでBDOが買われなくなってしまいました。

同時に類似プロジェクトがステークAPR1500%やLPで日利6%といった状態があったので相対的に不味かったのも影響した可能性があります。

こういった様々な要因によってBDOは発行総数6000万辺りで1$を割りました。


BDOが1$を割った事で類似プロジェクトは一斉に崩れました、他の方が美味しいからと散ったのは良かったものの、リード銘柄を放っておいたら全部死んだという皮肉な結果です。


さて、ここからは保険機構の出番です。

多くの無担保アルゴステーブルは保険機構を備えています。1$への安定化を目指すために1$を割った場合に介入する資金を貯めている訳です。これはボードルームステーカーへの配当の一部を削って回しているのでこの比率が高い程ボードルームステーカーのAPRは低下します。保険として40%近い天引きをしているプロジェクトもありました。(MSC)

BDOの場合、運用もしていたために時価で40億円ほど溜まっていました。ただ、そのうち半分はBDOやsBDOといった換金できない物だったので実弾は20億円程でした。

1$を割ったBDOに介入が入り、1$に復帰し数日程この状態で耐えました。この間にBDOの保険機関(DAO)は15億円程の買い支えをしました。しかし発行総数的には60億円必要であり、最終的には暴落しました。

他のプロジェクトも介入が行われ一時的に1$に多くが戻りましたが、やはり暴落しました。bBDOは殆ど役に立たなかったと言えます。

保険機構はペグの役に立ちません。


③どう攻略すべきなのか

まずやはりステーブルコインではないという事を認識しなければならないでしょう。

配当を貰うのは人類の夢です、しかしsBDOステーカーは配当を受け取る度に一定期間のロックを受けるようになっています。

この点で非常に身軽でなくリスクが大きいと言えます。

一方でLPはいつでも解除する事が出来ます。非常に身軽です。また、1$付近でLPを始めたならば1$を割っても復帰すれば損失は出ないのですが、sBDOステーカーは1$を割ると暴落し元には戻りませんし、落ち幅も凄まじいです。LPはILがあると言っても比較してかなり軽症です。

配当が消えてしまい、sBDO価格が下がって戻らない場合にはBDO-BUSDLPのAPRも下がってしまうので余計に誰も買わなくなります。

更に加えて、そのプロジェクトに保険介入が存在する場合は一度は1$に戻して貰える可能性がありますのでそのタイミングで逃げる事が出来ます。(勿論、運営次第で必ず行われるとは限りませんが)

しかも保険の取り分が多い程sBDOステーカーは天引きされるのでAPRが下がります、保険はsBDOステーカーから天引きしてBDO-BUSDのLPの救出に使われるのです。

つまり

ステークしないで掘ったsBDOは全部売る が正解でしょう。

(そのプロジェクトに保険があるか、その割合がどうなっているかはdocを読んでみてください)

また、BDO崩壊の要因の一つは全体のAPRのバランスです。LPとステーカーのAPR、加えて市場全体の安定APRの相場を常にチェックして比較し、リスクに見合わないと感じたらとっとと逃げましょう。

特にステーカーはロックが存在するので迂闊にハーベストしてはいけません、次のロック解除まで存続しているかを常に意識してあえて動けるように貯めておくのも考慮する必要があります。このゲームで最もハイリスクなのはステーカーです。

なお、FRAX/IRONといった半担保型アルゴステーブルはまたロジックが全く違いますので戦略や特性は全く異なります。

IRONが出てきてからすぐ参入したわたしはnya cash以来の二度目の一撃、SIL事件を食らうのですがそれはまた別の話ですね…。


以下は個人的な感想なので特に読む必要はありません。

わたしの考えに興味がある方と、記事が役に立ったと思ってくださる方向けです。


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