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初めて発することばの意味

甥っ子が一歳を越え、GW帰省の間に頼まれていた発達検査をしてきました。

甥っ子の含まれる一歳三ヶ月から六ヶ月の水準の一つのポイントに、語彙が3語あるかどうか、というのがあるのですが、観察する範囲で彼に確認できる言葉は「どうじょ」のみ。そして、親からの聞き取りも含めて判断してよい項目だったので、妹にも聞いてみましたが、今ある言葉はそれだけということでした。

初語で多いのはまんま(ごはん)とかママのようですが、彼の初語はどうじょ。ネットを見ると他にもそう言う人がいるようですが、たったひとつもっていることばが「どうじょ(どうぞ)」って!!笑
言葉ってなんだっけ?と考える機会をもらいました。

発達検査の基準は、作成過程での調査で5割が通過しているかで決められます。語彙が3語あるという検査項目は、一歳三ヶ月から六ヶ月の検査協力者集団で初めて5割がクリアしていることから、この段階の項目になっています。この年齢範囲でも5割は通過していないわけですから、気に病む必要はありませんが、この時期に「できるようになってくること」の一つとして、注目されるべき事柄でもあります。

ことばって、そもそも何のためにあるのでしょうか。
甥っ子は、はいはいとつかまり立ちができるので、ママである妹をしょっちゅう追っています。そして、不快だったり不満だったりすることがあると、泣いています。
いずれの行動も、ママや周囲の人に何らかのアクションを起こさせるために機能していて、彼の要求を満たすために役立っています。つまり、甥っ子くんが現在、ママとかまんまとかいう言葉を必要とする機会は特に見当たりません。

どうじょ、はどうでしょうか?観察していると、別に何か人にあげたい時に発せられることばというわけでもないようです(くれる時もあるので半分わかっていると言う感じ)。
妹一家の生活での言葉の使用について聞いてみると、ママやまんまをあえて使うことは少なく、一方で「どうぞ」は、ご飯を出したりお茶を出す時に使うので、頻用されているとのこと。でも、回数としてはお茶の意味である「ぶー」のほうがよく使っているそうです。

結局彼にとってなぜ唯一必要な音声言語が「どうじょ」なのかは考察の域を超えませんが、彼は今指差し行動もブームで、他者との関係志向が高まっているのは間違いありません。きっと、他者との関係の中でハッピーなものが登場する時に繰り出される魔法のことばが「どうぞ」だからなのだろう、ということで納得しておくことにしました。

私には重度知的障害をもつ姉がいますが、彼女はとてもコミュニケーション力のある人です。もちろん、障害判定がされているということは、語彙の少なさや臨機応変な使用の困難は際立っています。であるにもかかわらず、彼女は人に要求や意図を伝え、自分に必要な行動を他者から引き出していくことに長けている。

それは姉の意図を汲んで、叶えてあげようと動いてくれる人が多いからで、対人関係に恵まれていることに尽きる、のですが、じゃあなぜ彼女の対人関係が豊かなのかと言うと、偶然とは言い切れない。姉が素敵な人たちを惹きつけているとしか思えないところがあります。

方や私は初語が早く、現在講義をしたり、論文や書籍を執筆したりと言葉を使う仕事についています。言語の運用能力は、人並みよりは高いと言わねばならないでしょう。でも、その能力はあまり人とのコミュニケーションに役立っていません。言葉が多いせいで失敗することすらある。

外国語における「初語」はなんだったかなと考えてみると、thank you、でしょうか。excuse me、も知ってたけど、これ使うと他の言葉も繰り出さないといけないし、なんか言われても理解ができないかもしれない。なので、時を待って、望ましいことが得られたときに、それをしてくれた人にthank youを言う、そんな感じだったかもしれません。構音が難しいとかで音声言語のバリエーションが制限される赤ちゃんとは状況が違うけど、「まんま」をいわずに「どうじょ」を言った甥っ子や、姉のメンタリティとつながる部分があるかもしれません。

ことばを過信し過ぎず、コミュニケーションをとっていきたいです。





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