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植物にはまった先輩

会社の先輩に、コーデックス(塊根植物)に異常にはまっている人がいる。

その植物とは3年前に出会ったらしいが、そこからあっという間にのめり込み、今では家中にコーデックスが置かれているそうだ。

2〜3人でミーティングしているときなど、少しでも隙を見せるとその話を聞かされる。
「展示会に行ってさ〜、並んだけど買えなかったんだよ」とか、「その界隈で有名な人と友達になってさ〜」とかそんな話だ。

1990年代、裏原系がブームの頃は「限定品」や「並んでやっと手に入る」ことに価値があった。
その世代が中年層に差しかかり、久々に夢中になれる趣味が「コーデックス」なのだと先輩は語った。

なぜか年齢を重ねるごとに植物に興味がわいてくるものだし、それが限定品のオシャレな鉢に入っているというのが収集癖をくすぐる。
しかも、自分たちがかつてハマったブランドが鉢をプロデュースしていたりする。
ある程度の収入はあるから、どんどんお金をつぎ込める。植物だと家族にもそんなに嫌がられない。

「そう、完全に乗せられてるんだよね」と、先輩は諦めたように笑っていた。
けれど、先輩との長年の付き合いで分かったのは、彼が趣味にのめり込む原因が、仕事のストレスにあるという事だ。

今の上司はなかなか厄介な人で、仕事のセンスがない上にかなり高圧的。そんな上司の直下にいる先輩はかなり疲弊していて、それが何かに没頭することにつながっている。

植物のほかにも、まだ新しいはずの車を買い替えるといって新車情報をずーっと調べていたり、4年前に建てたばかりの家の売値を調べたり、かと思えばリフォームすると言って工務店を探していたり。
旅行から帰ってきた時には「あそこに移住して古民家カフェをやろうと思う」と言い出した。

とにかく何かをずーっと調べていて、傍から見ればそれは壮大な現実逃避でしかない。
仕事が大変になればなるほど、別の何かを考えつづけて没頭することで、ストレスを緩和しているようだ。

幸いにも(?)実家が太いというやつで、お金には困っていないようだけど、そうやって逃避している間は周りが見えなくなっているので、生活に支障はないのかと心配になる。

一方で、そういった現実逃避は誰にでもある。
わたしの場合はこうして文章を書いてアウトプットすること、映画や本に没頭すること、寝ること。
子育て中には、こうした時間が取れないので辛いが。

ストレスを抱えても、簡単に仕事を辞めるわけにいかない。その思いが人々を、先輩を、追い込んでいる。
わたしからは簡単にアドバイスできないけど、いつかそういったストレスから解放されて、何も調べずにボーッと時を感じている先輩を見たいなーと思っている。


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