お前という呼び名

そういえば移住して1年目の時。

「おーい!」

「おーい!」

「おまえーーーーぃ」

おじいちゃんの群れがこちらに向かって叫んでいる。

・・・どうやら私だ。
見渡しても・・・私しかいない。

なぜ呼ばれたかというと、

「魚いるか?」

これだった。
元漁師のおじいちゃんたちであった。


こうやって、
見ず知らずの他人からお前、と呼ばれて驚いたことがあった。

記念すべき、「お前」という呼び名を与えられた瞬間であった。

後にも先にも、おじいちゃんたちからは
この「お前」以外で呼ばれたことはない。


後で知ったのは、どうやらこの地域では「お前」というのは、
相手を指す言葉として標準語らしい。

丁寧語でも見下した言葉でもない普通の言葉。

ここで。私としては、
カルチャーショックという言葉を軽々しく使わないことを意識している。


まず、言葉が悪い。


そこまで「違う」ということに対してマイナスエネルギーを割きたくない。
移住という生活が、毎日イベントのようだと、心がもたない。

一喜一憂したり、刺激が欲しくて移住したわけでもない。

移住して、違いを見つけ出しては一喜一憂し、
そのうち指摘するようになって、地元の人と意見の押し付け合いになって、
結果、町を出ていく。

そんな移住生活になってしまった人を動画配信で何人も見てきた。
その流れ自体がコンテンツなのか?と感じる人も中にはいる。

もちろん、
参考になって、気をつけようと思えた動画もあった。


ショックを求めるなら、移住しなければいいと思っている。


だから、このトキ(瞬間)も「おもろいな」と思った。
30代にもなって、しかも男女平等の社会で、「お前」と言われる現実。

これはなかなか味わえなかったであろう。

普通に笑ってしまった。


この先も、
このおじいちゃんたちとは面白くてハートフルな出来事ばかりだった。

また話そうと思う。

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