見出し画像

すればするほど、恋は下手になった。

好きなんて、うまく言えない。

愛しているだなんて、わかんない。どんな色なのかも、どんな味なのかも、私にはわからない。

私は、いつだって別れを切り出す方だった。あるときは「別れよう」と言い、あるときは「元の関係に戻ろう」だなんてひどくずるいことを言った。いつだって別れを切り出していたのは、傷つく覚悟がなかったんだろうなと今ならわかる。いつだって傷つくのが怖かった。

目を見ていてもどこか私じゃない誰かを見ているような目だとか、自分の前以上に幸せそうに笑う相手を見たときとか。どうしようもないものを、どうにかしようとして、それでもどうにかなるはずもなくて、傷つく前にいつも別れを切り出していた。

自分じゃこの人は幸せに出来ないかもしれない、なんてのは何度だって考えた。そんな自信のなさはいつだって邪魔だった。どこかへ行ってほしかった。なのにどこかへなんて行ってくれない。

好きの言い方はよくわからない。かわいく振る舞うなんて、どうしたらよいのかわからない。嫉妬なんて、かわいいはずがない。うまくいかない。わがままの言い方だってわからない。わからない。わからないことばかりだ。
高校時代から何年も付き合っている同級生を見てはやはり素敵だなぁと思うし、ネットで知り合った恋人と日々を送る先輩の話を聞いてはそんなに上手くいくものなのかと考えてしまったりする。

友人は、「恋なんかでぐちゃぐちゃになっちゃうなんていいじゃない」と言っていたけれど、パソコンに向かう私は彼女の言葉を何度も心の中で繰り返しては、『ここで喫煙者だったら、ベランダにでも出て煙草の一本でも吸うのかな』なんて考えた。

冬はまだまだ長い。春はまだまだ遠い。




***2月10日に書いた文章です。***

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?