行ってくるね。ありがとう。

「ここ安いから、次からもここにしましょうよ!」

「言ったね!あんた次もここでやるから大阪に異動なっても来なさいね!!」

冷たい生ビールが喉を通って、初夏の暑苦しさを吹き飛ばす。

軽い気持ちで、挙手制の社内試験を受けた。スキルアップがしたかったからだ。受かったら大阪で働くことになるかもしれないという不安よりも、何かに挑まないことの方が不安だったのかもしれない。
でも試験を通して、最後の面接が近づくにつれて僕には大切な人たちがいることに気付いた。

「大阪行っちゃったらさみしくなるね」

親友が言ってくれて、急にさみしくなる。片想いしていた同期からも自ら離れることになる。精神的にかなり支えられていた。パートさんたちや同僚たちと働いた日々は楽しかった。働くことの楽しさは信頼されるということを教えてくれた。家族は当たり前に「頑張れよ」と言ってくれる。

友達から誕生日にもらった虎柄のパンツを勝負パンツとして履く。母からもらったハンカチを持つ。Twitterの友達がくれた手づくりの栞をスーツの胸ポケットに忍ばせる。この曲を聴いてねと言ってくれた人がいて、送ってくれた曲はbacknumberのささえる人の歌だった。
思いがこもったものを身につけて僕の体温は彼らの熱だけ上がる。

頑張ってって言いながら
あまり無理しないでねって
思っています
心配になる事も寂しくなる事も
あるけど
元気でいてくれたら

愛する人がどこにいても
心から笑えますように
少しくらい嫌な事があっても
今日を笑って終えてくれたなら

ただそれだけで
それだけでいい
こっちは心配いらないから
たまに疲れたら帰っておいで
あなたの好きなものを作って
待っているから

ささえる人の歌

電車は大阪に向かっている。僕はどこに向かってるかわからないけれど、進んでいるのだろう。
そしてたくさんの人にささえられている。

間違いなく今日は重要な一日になった。

行ってくるね。ありがとう。

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