タイパク9話 深刻な崖不足

クリフハンガー(英:cliffhanger または cliffhanger ending)とは作劇手法の一つで、劇中で盛り上がる場面、例えば主人公の絶体絶命のシーンや、新展開をみせる場面などを迎えた段階で結末を示さないまま物語を終了とすることである
Wikipediaより

今週のお品書きは以下の通り、お付き合いいただければ幸い。

タイパクにおける崖

具体例を出そう

「絶対に許さない…佐々木哲平!」継続
「アイノイツキです初めまして」
そして哲平の思いをよそに週刊連載が始まろうとしていた!
ダメ出!まだ足りない!
どうして…届かないんだ?
ホワイトナイトを継続させ…イツキちゃんを救って!? 継続
アイノイツキなら…(ガリッ)

週刊連載は読者の興味を引くために毎週気になる引きを見せる必要があるし、連載が長期化するまでは展開のスピード感が重要であるのでそもそも毎週クリフハンガー状態だろう。ジャンプ沖の崖はメタネタ重視の推理コメディか何かの如く、大量の人でごった返しになっている。他の媒体でしょっちゅう崖側に行く作品といえばコードギアスだろう。R2は毎週大騒ぎだ。

そんな中、何故タイパクのクリフハンガーは取り沙汰になるのか?一重に哲平が後ろめたいスーパーパワーしか持たないからだ。ジャンプの主人公とは基本的に非凡で凡人のままでいることはそうない。だが現状タイパクの主人公は凡人オブ凡人だ。おまけに物語を回転させる原動力であるスーパーパワーはまさかの未来盗作と来たものでクリフハンガる条件である絶体絶命は「いや、超えられないだろ」となってしまう。

うだつが上がらないのに、雑誌柄が主人公にうだつをあげることを強要しているために週を跨ぐことにズレが起きるし、クリフハンガーという劇薬を投与され続けた結果読者は刺激に慣れてしまう。薬物依存の悪循環だ。

これが青年誌でやれと言われる原因であるように思われる。青年誌ならば、夢を諦め暗い道を歩く人間の話も一定の需要があるだろうし上手く描き切ればハッピーでもバッドなエンドでも好まれる。内容が週刊の少年誌に向いていないというのはそういうことだ。

L哲平

画像3

週刊少年ジャンプ2020年32月号より引用

8話で自身の限界に直面した哲平は死に、新たなL哲平が誕生した…

ギャグか?先週のムカムカ哲平と言い、面白顔をページの半分以上割くのはなんなのか、いや大事なシーンなんだけど哲平の痛みや苦悩を読者が悲壮なものとして受け入れてはいないので生まれ変わられても困るのが率直な感想だ。

この手の変化は言うなれば主人公の環境への適応だ。寄生獣の新一、喰種のカネキやら最近だと左利きのエレンの光一やら、辛い現状に適応するために非合理的なものを捨て去り冷酷さに身を包んで他人に余裕を持てなくなる。

そういう変化が起こったと思わせたのは哲平が熱いだけのワナビだったからだ。身の丈に合わない情熱にガタがくると誰もが思っていたからだ。実際はそんな変化微塵も起こっちゃいない。4ページもすればいつもの情けない顔が帰ってくる。そのクマ、飾りか?

見方を変えればこれは劇の最初に崖がくるパターンだ。何が起こったの?と思わせて読ませる。そしたらいつも通りの落差が起こるわけだから話になんねー

ムネオカ

冒頭は初めて編集と会話する。普段から言うことねえわで放任されていたのがよくわかるトレパクっぷりである。ちなみに相変わらず褒め方が語彙力0だしなんの意見もしてないように見えるが

画像2

週刊少年ジャンプ2020年32月号より引用

この真ん中のコマが話し合いらしい。この漫画は徹頭徹尾精神論を話すので、具体的内容はほぼ触れられない。今週初めてホワイトナイト45話(未来での最終回)について触れられたくらいだ。

面白いのは全ボツが出されてはいるものの、それはあくまでアイノイツキの最後の輝きの続きに対する相対評価でしかなく普通に良い程度の評価はもらっている。これは次で詳しく触れる。

さす哲

クリフハンガーを多用するも地盤ができていないので次週でズレが生じると書いたが、それがさす哲(さすが哲平)だ。ピンチの筈なのに、罪やミス、無能に対する赦しは向こうの方からやってくる。ハードルが自分から下がっていくのに、ハードルを越えるとやたら評価される。かと言ってそれらの虚構を俯瞰的に見る立ち位置は存在しないのだ。マジかよ…

今週は哲平の作画技術が唐突に評価された。技術があるなら原作をつけることが提案などされても良いしチーフアシなどになって食い繋ぐなどの選択肢もある。下積みをすっ飛ばしていきなりデビューという一見近道だがただの無謀を試みる微妙な才能という理解は誤りだったのか?

トレスも満足に出来ない4、5話のくだりも真心がどうのという話をしたり盗作の合理化に使われた挙句、後の話と妙に食い違うのだから後から効いてくる杜撰回に見える。

唐突に挟まれた師匠(一応1話に一瞬だけ名前が出ている)を回収するのだろうか?まあ精神論かまして終だろうが…

シャドウ哲平

画像3

週刊少年ジャンプ2020年32月号より引用

…またベタなことをやり始めた。先ほどの悲しいダークヒーロー論のようにこれもメタ的に見てみよう。

自身の心中の声との対話する典型的な葛藤のパターンで、何もない所と会話が成立するので神経病のような印象を与える。独り言多かった奴が遂に虚空と会話し出すのは妙にリアルさがあると言えるだろう。

ここでは劇中では影であることと心理学用語を合わせてシャドウと呼称しよう。これは影であるので、当然自分の認知の中にあるネガティブで後ろめたい面の表出だ。先のダークヒーローにこれが出る場合は、押し殺した弱さの部分が悲鳴をあげたりして出てくる。

つまりこれは誰にも経験がある、自分を客観的に見るもう一人の自分が不安や後悔の念を伴って増幅し、ああすれば良かっただのと考えてしまうことを演出しているわけだ。作品では紛れもない自分からの指摘なので偽りのない主人公の認識や本音を知ったり、自問自答によって主人公の決意とその揺らぎを表したりする目的がある。

この演出でタイパクがベッタベタな上にダメダメなのはどこかというと…全部だ。まず、自問自答は既に主人公はいくらでもやっておりその度に自己弁護をしてきた。更にL哲平になった回でこれなので読者からすればもう迷ってんのかよ、と思う速さである。

加えてネガティブな面の表出であるので大抵シャドウは手段を選ばないそぶりを見せたり逃亡を示唆するのだが、このシャドウ哲平はほとんどマトモなことしか言わない。哲平に移入できない読者からすればできるわけがない・続くわけがないは主人公の心からふと漏れた弱音ではなくただの厳然たる事実でしかないのだ。

極め付けはこのシャドウは「盗作」という言葉を使う。粗方第4話での代筆というワードへの反響を受けての修正が入ったのがこの話なのだろうが、そういう事情を抜きにすると、表面上は『ゴーストライター(?)』やら『代筆』という言葉で取り繕っても内心では盗作を認知していたと言うことになる。自己合理化が得意な自己弁護士成分を補強するなよ。

弁明

いつかの記事で、作者には「読者の予想くらい自分は読めてるゼ!」という姿勢を見せて主人公はそうせざるを得ないことへの説得力をあげてほしいと書いた。しかし、ANIMの連載をなんであれ阻止すればイツキは助かるのでは?に対して「そうも考えたがやっぱりダメなんだ」と自分でレスポンスする。アイノ筆折り議論からい1mmも進んでいない。自分との対話なので微妙だがせめてシャドウ哲平の提案として出されたそれを突っぱねるくらいの甲斐性は見せて欲しいし、ダメな理由もロト6を的中させた予言を信じているから以上の情報がない。シャドウ哲平が予言を疑っていることもあってもう滅茶苦茶や。

借金、シャドウ、指噛みにしてもそうだが、哲平がそうせざるを得なかったという整合性は薄いままに如何にも可愛そうなファッションスティグマは熱心に刻みつけてその癖赦しは向こうからやってくるのだからこの作品は本当に杜撰だ。

今週のここがおかしい台詞集

恒例行事なので、今週は枠組みがダメだからそこをダメ出しするとその部分の台詞の説明の必要がなくなるので少ない。

俺が描き継いだオリジナル展開だ…誰が勝手に継いで良いつったよ、マジで託されたと思ってんの?
俺なりに展開を予想しキャラクターも深く読み込んだつもりだ…出た、俺なり
当然買わなかったが…当然のようにパクっといてよく言うわ
46話の締め切りまではあと7週間ある…この後半年が過ぎてしまう。哲平がどうやって切り抜けたか?の過程を示さないのでこれが今週のクリフハンガーな訳だが、以前ほどの出力がなくなってしまっている。ざっこ!
絶対に勝つそれだけだ…いつの間にか謎の勝利条件を受け入れている。哲平がこのように受け入れているのはアイノ本人が勝負というワードをしょっちゅう口にするからだろうがそれがどれほどの読者に周知されているかは謎である。


今週はこんなところで、来週までご機嫌よう



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?