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崎陽軒 おつまみ弁当 2017-2022-2023

電車、新幹線での移動、または野球場などで弁当をつまみに酒を飲む、これが自分にとっては楽しくて楽しくて堪らない。友達とでも家族とでも気の合う人と、時には一人だって構わない、旅行やスポーツ観戦などなど酒と弁当を前にすればその高揚感は否応なしに高まる。こういう楽しみの為に乏しい頭を振り絞って日々四苦八苦している。

それは兎も角、ここで述べたいのはその酒の宛てとしての弁当のことなのだが、これまで様々な弁当を食べてきて思うことが二つ。まず、弁当は全く以てその旨さが値段に比例していない。また、主役が肉、特に肉質に拘ったものなどは値段が嵩張るばかりでNGということ。

私は巨人ファンで年間に数度は東京ドームを利用する。その際に折角だからと奮発して、例えば叙々苑のカルビ弁当2500円や今半すき焼き弁当2000円等の肉が主役の高額弁当を買うことがあったが、それらを食べても弁当の肉は所詮弁当の肉、硬くなってしまっていて大して旨くない。東京ドームには常時様々な弁当が売られているが、期間限定品を除いて通常売られているものの中で私のお気に入りは崎陽軒のおつまみ弁当、値段は当時で1350円。下に当時2017年のおつまみ弁当の感想を述べるが、これこそが酒の宛てとしての弁当、求めていたものだった。

まず、上の写真(2017年版のおつまみ弁当)左下の崎陽軒のシウマイに手を付ける。時計回りに唐揚げ、春巻き、青椒肉絲、玉子焼き・筍の甘煮などなど色とりどりのおかずがチャーハンを取り囲んで花を咲かせている。おかずが足りないとは絶対にならない。そして、その絶対的なおかずの数、物量に対してチャーハンは孤高の一、この一が絶妙で二でも三でもいけない。孤高の一だから炭水化物の取り過ぎを防げるのは勿論だが、一だからおかず達がその一点に目掛けて切磋琢磨する。言ってみれば、その一は弁当の中の紅一点、派手な雄達が求愛のダンスにて地味な雌を誘う、全てのおかずがチャーハン目掛けてアプローチを仕掛ける。どの雄がよいのか、その孤高の一が全ての具材を結ぶ架け橋となって私の口内にて一つ一つの味を引き立たせる。当時のおつまみ弁当はそういう絶妙なハーモニーを奏でていた。

叙々苑、今半、名前を聞けばその高級感にそそられるだろうが、それらの肉弁当などはおつまみ弁当の足元にも及ばない。それらはおつまみ弁当1350円の倍ほどの値段だがその内容は如何ばかりか、それで酒が何杯のめるのか。シウマイから始めて時計周りにそれぞれ楽しみ回転する、シウマイのその数が3個、三回転楽しめる。こんなに素晴らしい弁当なら酒もそれはそれは進む。そういう酒のお供が1350円、『世の中お金ばっかりじゃないよ』、こんなことを代弁、証明してくれている。但し、ここで少々残念なことを書くが、このおつまみ弁当は東京ドーム限定、どこにでも連れ添ってくれる訳ではない。従って、おつまみ弁当を携えて新幹線に乗る、旅をする、そういう贅沢は出来ない。『世の中、その全てが思い通りにはならないよ』と叱ってくれる。そういう厳しい一面もおつまみ弁当は内含している。私はこの存在が好きだった。

上に書いたようなおつまみ弁当だが、2022年版ははその値段が1500円と上がっている。今年2023年はもっと上がっているかもしれない。しかし、それはその時々の物価の高騰で仕方がない。そんなことは問題ではない。おつまみ弁当のおつまみ弁当である所以はそのハーモニーであった。孤高の一をおかず達が取り囲む、その絶妙過ぎる対比が美しかった。しかし、昨年2022年のおつまみ弁当は孤高の一でない。どういう訳だか、チャーハンの下というか隣というか、それは傘連判状の形でおかず同士はあくまでも平等、細かい場所は置いておくとして、何だか謎の麺がおかずの輪の中に紛れている。炭水化物がチャーハンの他にもう一点、孤高の一でなくなってしまっている。麺はチャーハンのおかずにはなり得ない。完全にハーモニーは崩壊してしまったと言わざるを得ない。また、実はその他のおかずも微妙に変わっていた。皆がその実力を認めていた春巻きと青椒肉絲、その二人がいない。その代わりに四角い何か不明なものが座っていた。見るも無残、全体的に何とも残念な形に姿を変えていた。

昨年のようなおつまみ弁当には会いたくない。2017年当時の美しいおつまみ弁当に会いたい。今年も野球のシーズンが始まり、そろそろ私も東京ドームにて弁当をつまみに酒を飲む。2023年のおつまみ弁当はどんな姿になっているのか。昔の姿で戻ってきて欲しい。この声が崎陽軒に届くことを望む。

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