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戦争ってそんなに昔の話じゃないよね

子どもの頃って、戦争なんか遠い昔の話だと思っていた。テレビもゲームもない遠い昔、お風呂をガスじゃなくて薪で沸かしていた(僕の生まれた田舎では)現代とは隔絶した過去の話なんじゃないかって。
でも、40代の半ばを過ぎると、つい昨日のことのように思っていた学生時代が、すでに四半世紀も前の出来事となってしまっている。損だけ前の出来事にもかかわらず、何年生の時に誰とどんなことをしたか、バカなことばかりやってたな、なんてことがまるで数年前のことのように思い出せてしまう。
この感覚を、自分が生まれた当時に当てはめてみると、どうだろう?
第2次ベビーブーマーの僕は1974年に生まれた。その四半世紀前と言えば、1949年。戦争が終わってからたった4年しかたっていないわけだ。終戦の年は1945年だから、僕が生まれる29年前。今から29年前と言えば1990年。1990年と言えば高校2年生。当時娯楽の王様だったテレビでは、こんなドラマをやっていた。
いつも誰かに恋してるッ(フジテレビ)宮沢りえ 真木蔵人
クリスマス・イヴ(TBS)仙道敦子 吉田栄作
すてきな片想い(フジテレビ)中山美穂 柳葉敏郎 相原勇
世界で一番君が好き!(フジテレビ)浅野温子 三上博史
予備校ブギ(TBS)緒方直人 的場浩司
隔世の感はあるものの、はるか昔という感じでもないよね。物心がついていたというこもあって、今でも思い出すことのできる自分の若かりし時代という感じ。はっきり言って、自分の中身なんて高校時代とそれほど変わっていないし、今でもいろんな思い出が頭の中に浮かんでくる。自分が思い出せる時代のことであれば、29年前と言えども、子どものころに思っていた29年前とはその時間の長さたるや、過ぎてしまえば驚くほど長いものじゃないんだな。
ということは、1974年っていうのは、終戦から29年しかたっていないというわけで、1974年当時の人からしたら、太平洋戦争終戦の年なんて、今の僕が「予備校ブギ」を思い出す程度の昔でしかないわけだ。つまり、そんなに大昔じゃないってことなんだよな。
日本がアメリカと戦争やってたなんて話を聞くと、今の時代とは全く違う、想像ができない世界のように感じてしまうが、そうじゃない。今の僕が「クリスマスイブ」をみて、吉田栄作と仙道敦子の恋の行く末にキュンキュンしていた時のことを簡単に思い出すことができるように、日本が戦争をしていた時代っていうのは、想像上の時代ではなくって、確実に現在とつながっているんだな。
アメリカにコテンパンにやられた後、日本は戦争に直接かかわってこなかったから、戦後生まれの僕は、日本は戦争なんて絶対にしないと思っていた。日本が戦争としていたなんて想像もできなかった。日本が戦争をしていた時代なんて、遠い昔のことだと思っていた。でも、僕が生まれた年の29年前までは、日本は戦争をしていた。それは、今の時代から見れば、「すてきな片思い」をやっていた時代。浅野温子と三上博史が、車から身を乗り出して、交差点の真ん中でベロチューをしていた時代。「ねるとん紅鯨団」が絶好調で、僕よりちょっと年上のお兄さんたちが、僕よりちょっと年上のお姉さんに「おねがいしまっす!」「ちょっとまったぁ!」「ごめんなさい~」「友だちから~」なんて恋のさや当てをチャンチャンバラバラにやっていた時代。なんだよ!全然普通に余裕で思い出せる時代だわ。
戦後70年以上もたっていると考えると、日本は長いこと戦争をやっていないように思われるけど、経ってしまえば70年なんてあっという間なんだと思うよ。これだけ長い時間戦争を指定なんだから、これからも戦争なんてしないだろうと思ってしまうけれど、そんなこたぁないよね。僕が生まれるたった29年前まで戦争やってたんだから、いつ何時日本が戦争を始めるつもりになるのかなんてわかったもんじゃない。特に今の政府の奴等なんて、60~70歳の奴等が大臣やってんだから、自分が生まれた年の10年くらい前までは日本は戦争やってたわけだし、自分が生まれた時の10年前までやっていたことを、またやっちゃおうかなんて考えたとしても全く不思議じゃない。
戦争って、そんなに昔のことじゃないんだ。いつでも起こりうるし、いつでも巻き込まれかねない。今の日の本が、そんな大昔の姿に戻るはずない、なんて高をくくっているのは危ないな。最近までドンパチやってたんだからさ。

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