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松濤美術館の文体練習

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かつてレーモン・クノーは、1つの出来事を99通りの文体で提示し、その出来事のイメージを変幻自在に書き分けた。 これは建築空間を言語で説明するための、私にとっての建築文体練習である…
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2019年8月の記事一覧

8・悪口

渋谷の雰囲気はいつもガキでごみごみしていて正直嫌悪感をもっている。 たしか文化村通りの先にはいつも女で行列している店があったな。その先を行くとクソ金持ちが住んでいる松濤地区がある。道中通りがかる車はみんな外車だ。ものすごいエンジン音で脇を通るときは耳をふさいでる。松濤美術館は駅からそんな道のりを10分くらい(しかも坂道だ)歩かないといけないからすんごいめんどくさい。 ごてごての豪邸が建ってる中にごてごての松涛美術館が建ってるんだが、ごてごてのくせに結構地味だ。白井誠一という

7・二人称

渋谷駅を出たら文化村ストリートを進んでね。東急百貨店で左だよ。 そしたらそのうち松濤美術館の看板が出てくるから。あとは看板通りに 行けばだいじょうぶ。 入口の金色の格子がかっこいいよね、屋根まで伸びててさ。しかも外壁が高そうな石を使ってるよね。 あの重厚な感じは今どきの建物にはないと思うんだけど、君はどう思う? 中には入ってみた?すごいんだよこれが。 いきなり宝石みたいな天井でその先には橋だよ? 建物の中に橋があるんだ。あ、入ったんだ、よかったよかった。 階段も見どころ

6・緊張感

松濤美術館は哲学的な建築と称される。 喧騒から離れた場所に息をひそめる岩の塊は、 対峙した人間の心臓に重しを一つ乗せるようだ。 頭上に浮かぶ切取られた楕円の屋根と、 屋根まで達する金色縞の扉に迎えられた時、 その緊張感はピークに達する。 建物に足を踏み入れると、不思議な光景が広がる。 それは曼荼羅のように果てしない多焦点で、砂漠色した天井である。 道は二つあり、正面の重厚な扉を開けて橋を行くか、広間に行くか。 当然、転回して広間へ行く。 広間の向こうには悲しそうな植

5・言葉足らず

東京ですそこは。渋谷らへんにあります。 そんなに大きくないかな。 そうそう石の建物です。豪華ですね。 穴の周りに部屋があってそこをまわります。 あ、美術館の話です。

4・翻訳

松濤美術館は渋谷の繁華街から少し離れた高級住宅街にあります。 約2,000平方メートルの小さな美術館で、コンクリート造の2階、地下に2階があります。 外観は対称的で、ピンクがかった岩の外観と入り口と軒先に金色の外観があります。 部屋に入ると、オニキスの天井と外側のアトリウムが見えます。 部屋は、列柱のある屋外の橋の周りに楕円形に配置され、下部に噴水があります。 階段も上から下へと螺旋状になっており、壁の照明がそれを照らしています。 1階には展示室はありません。地上1

3・ニセモノ中国人

在東京内渋谷 華美賑盛通 往超級居家曲 在松濤美術館 砕石水砂成空二層地面二層 二千米米 小美術館哉 外面是芯中 薄紅岩装 金色縞装 良々 中面天上黄金石張哉 驚木桃木山椒木! 是空洞芯深! 芯橋廻在室 深々浮水面在 昇降段縁螺螺 是亦空洞也 続明光上下似穴窟 一層無美展室 地面一層空二層美展室在 白井晟一建築師哲学深々哉

2・シークエンス

渋谷駅を出て人で溢れる文化村通りをゆく。東急百貨店を起点に松濤文化村ストリートに入り、街は落ち着いた様子を見せる。建物の高さは低くなっていき、いつの間にか閑静な住宅街へと変わっていく。松濤文化村ストリートから一本曲がると松濤美術館は現れる。 高さは二層に抑えられ、重厚な作りは周辺環境に良く馴染んでいる。 金色の軒に迎え入れられ、内外に渡るオニキス天井の下を潜る。 中に入ると、目の前には外へ出るブリッジ。 時計回りに進むと、丸い窓越しに小さな庭があり、その横の螺旋階段を時計

1・メモ

渋谷の繁華街から高級住宅街へ抜けたところに松濤美術館はある。 コンクリート造地上2階地下2階建ての2,000㎡程の小さい美術館である。 外観はシンメトリーで、ピンクがかった岩の外壁と、入り口と軒に金色の外装材があしらわれている。 屋内に入るとオニキスの天井と地下まで続く外の吹抜けが目に入る。 吹抜けの屋外ブリッジを中心に楕円状に部屋が配置されていて、一番下には噴水が設けらえている。 階段も螺旋状に上から下まで続いていて、壁の照明がそれを照らしている。 1階に展示室は