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年金受給者の確定申告不要制度(源泉徴収との関係)

 年金受給者の確定申告不要制度というものがあります。国税庁のタックスアンサーでは以下のとおりの説明です。 

平成23年分以後は、その年において公的年金等に係る雑所得を有する居住者で、その年中の公的年金等の収入金額が400万円以下であり、かつ、その年分の公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合には確定申告の必要はありません。

国税庁タックスアンサーNo.1600 公的年金等の課税関係 より 

 ところが、政府広報オンラインでは、「公的年金の全部が源泉徴収の対象になる」という要件が記載されています。

下記の1、2のいずれにも該当するかた
1.公的年金等の収入金額の合計額が400万円以下であり、かつ、その公的年金等の全部が源泉徴収の対象となる
2.公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である

政府広報オンラインご存じですか? 年金受給者の確定申告不要制度 より 

 「公的年金の全部が源泉徴収の対象になる」とはどういうことでしょうか。源泉徴収されていない公的年金があったら、確定申告不要制度の対象とならず、確定申告が必要なのでしょうか?
 例えば、厚生年金と企業年金連合会からと2つ年金を受給しており、片方は源泉徴収税額が0といった方はたくさんおられます。2つの収入金額の合計額が400万円以下だったとして、確定申告不要と言い切ってよいのでしょうか?

年金の源泉徴収制度
 年金の源泉徴収制度に関する条文を見てみましょう。

(源泉徴収義務)
第二百三条の二 居住者に対し国内において第三十五条第三項(公的年金等の定義)に規定する公的年金等(以下この章において「公的年金等」という。)の支払をする者は、その支払の際、その公的年金等について所得税を徴収し、その徴収の日の属する月の翌月十日までに、これを国に納付しなければならない。

所得税法より

 国内において公的年金の支払をする者は源泉徴収する義務があるとあります。では「公的年金の全部が源泉徴収の対象になる」という条件は意味がないかというと、海外の年金がある場合を想定しているのです。
 国税庁の「質疑応答事例」に事例があります。
 公的年金等の収入金額は400万円以下であり、そのうちには、源泉徴収の対象とされない外国の法令に基づく公的年金等の収入金額がある」という方に対して、源泉徴収の対象とされない公的年金等の収入がある場合には、公的年金等に係る雑所得の収入金額や公的年金等に係る雑所得以外の所得の金額基準は関係なく、確定申告が必要との回答です。

国内の公的年金で源泉徴収されていない場合は?
 「国内において公的年金の支払をする者は源泉徴収する義務がある」といっても、源泉徴収税額が0だったらどうなるのでしょうか?年金受給者の確定申告不要制度の条文を見てみましょう。

その年において公的年金等に係る雑所得を有する居住者で、その年中の公的年金等の収入金額が四百万円以下であるものが、その公的年金等の全部(第二百三条の七(源泉徴収を要しない公的年金等)の規定の適用を受けるものを除く。)について所得税の徴収をされた又はされるべき場合において、その年分の公的年金等に係る雑所得以外の所得金額(中略)が二十万円以下であるときは、申告書を提出することを要しない。

所得税法第120条第3項より 一部省略

「源泉徴収を要しない公的年金等」というものがあるので、それ以外が源泉徴収の対象となっていればよい、ということです。では「源泉徴収を要しない公的年金等」はというと、

第二百三条の七 居住者が公的年金等の支払を受ける場合において、当該公的年金等の額が政令で定める金額に満たないときは、第二百三条の二(源泉徴収義務)の規定による所得税の徴収及び納付は、要しないものとする。

所得税法第203条の7より 一部省略

と定められています。関係する政令は

(源泉徴収を要しない公的年金等の額)
第三百十九条の十二 法第二百三条の七(源泉徴収を要しない公的年金等)に規定する政令で定める金額は、百八万円とする。

所得税法施行令 第319条の12 より

65歳未満の場合の108万円の根拠です。65歳以上の場合は

(公的年金等控除の最低控除額等の特例)
第二十六条の二十七 年齢が六十五歳以上である居住者が所得税法施行令第三百十九条の十二の規定の適用については、同条中「百八万円」とあるのは、「百五十八万円(同条に規定する公的年金等が第三百十九条の六第一項各号又は第二項第一号(公的年金等の金額から控除する金額の調整等)に掲げるものである場合にあつては、八十万円)」とする。
2 前項の居住者の年齢が六十五歳以上であるかどうかの判定は、その年十二月三十一日の年齢によるものとする。

租税特別措置法施行令 第26条の27 より

158万円か80万円です。
 このような金額基準で源泉徴収を要しないとされている公的年金があっても、確定申告不要制度の適用を受けられるということです。

収入金額での判断
 結論として、最初に戻って、外国の法令に基づく公的年金がなければ

平成23年分以後は、その年において公的年金等に係る雑所得を有する居住者で、その年中の公的年金等の収入金額が400万円以下であり、かつ、その年分の公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下である場合には確定申告の必要はありません。

国税庁タックスアンサーNo.1600 公的年金等の課税関係 より 

 このタックスアンサーのとおり、金額基準だけ見ておけばよいということになります。特に源泉徴収票で源泉徴収税額が0であることを確かめなくとも、収入金額で判断すればよいでしょう。
 「公的年金の全部が源泉徴収の対象になる」とはどういうことか、ならない場合はあるのか、意味は何だろう等と思って時間をかけて調べてしまいましたが、ちょっと考えすぎだったかもしれません。
 

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