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ゴシック・ロリータ・ロックンロール・エチケットVol.9〜荻窪駅はロックンロールの夢を見るか(上)〜

目が覚めた。最近ギックリ腰になったり仕事で不審者扱いされたりと散々だ。

なんで同じフロアの他課の奴に2回も不審者扱い受けてるんだ私は。なんのための社員証なんだ。なんなんだこのカードは。出勤時間と退勤時間を記録するだけのカードに成り下がったカードにはちいかわのシールを貼ってやる。
雑にポケットに放り込んで会社近くの印刷所へ向かう。綺麗に印刷できている。調子に乗って100枚も刷った。

今度出演するイベントの関連イベントがやってる会場でこの紙をばら撒いてやる。

急いで会場のある駅へ向かう。念の為途中でゴスロリに着替えた。ハガレちゃんに変身する。

開演時間より少し早めに会場に着く。念の為主催に挨拶をした。ライブハウスで働けば?と言われたが、これが皮肉なのか褒めなのか、未だわからずにいる。

ライブハウスで働くとしたら、家から徒歩で行けるところだといいなあ。あとライブがない日はたこ焼きパーティーとかやりたいなぁ。不審者扱いされない職場ならいいなぁ、とふんわり考えた。

私の出演するライブは明々後日だ。今日は別のイベント。まぁもう大体わかってると思うし、なんで今までこのシリーズで具体的なライブハウス名やイベント名を伏せてきたのか自分でもよくわからないが、私が出るイベントはロックンロールサーカス東京day2で、今日はそのチラシを携えてロックンロールサーカス2025の出演権をかけたオーディションを見にきた。

後輩が2バンドも出るので。早めに行って投票券を2枚ゲットした。

お前らはオーディションに出ないの??という話もあるが、ありがたいことに我々は何回か関連イベントに出て、イベントファンの皆様のお目にかかる機会がある。ここで本祭で是非見たい!と思ってもらえることが私たちのエターナルである。

ちなみにエターナルという単語の意味を私は知らない。なんかキラキラしてて綺麗そうだし大事そうだしかわいいから無闇にエターナルと言っている。悪い意味じゃないことはわかっている。セーラームーンにはエターナルティアルというアイテムが出てくるし。

ちゃんと全バンド見る。合間合間に刷ったフライヤーを配ろうとしたが、私は3年勤めた会社で不審者扱いされる挙動不審なゴスロリであることを思い出した。

優しい人がちょこちょこ貰ってくれるが、なかなか配れない。
今日出るバンドを応援に来た画家のお姉さんとお話ができた。嬉しい。

まぁでも基本的にバンドのファンは革ジャンでゴツゴツした強面の方が多い。みんないい人なのはわかっているが。怖い。

こんなこともあろうかと、私が今まで出会った人物の中で一番コミュニティ能力が高く、尚且ついい人であり、day2の共演者であるVALENTINE DAYのぱつお一緒に配ろう!と声をかけてある。抜かりない。

遅れてきたぱつおにフライヤーを配る。
わざわざ印刷ありがとう!元々俺も配るつもりだった!と笑って受け取ってくれる。なんていい人なんだ。day1が完売したのが悔しくて思いつきで始めた私の蛮行に付き合わせているのに。

ぱつおにはいいことがあって欲しい。なんかお米が美味しく炊けるとか。ぱつおのお米が上手に炊けますように。静かに祈った。

後輩のライブも始まる。よかった。彼らにとっても手応えのあるライブができたんじゃないかな。つい応援したくなる。というか最前で大盛り上がりで応援していた。野球か?船橋競馬場にこういうオッサンいるよね?ってぐらいの声量で。

持論だが、応援したくなるっていうのはバンドの強みだと思う。一生懸命やる姿を人に見せること、なりふり構わずカッコよく振る舞うこと。両立できるものなのかよくわからないが、いつも模索している。

応援だっていろんな形がある。ステージの上で無敵なバンドマンを見て、降りた素直な姿に胸を打たれたり。カッコよくて、いつでも綺麗で、凛とした姿に憧れることもある。

私がフライヤーを配るのだって、なんか必死で笑えてくるかもしれないけど、本当は演奏だけでみんなに「俺こんなすごいことするんだぜ」って伝われば、花丸なんだろうけど。

まずは見てもらわないと、その段階に行けないから、とりあえずなんでも必死になっている。

ここにかける思いは、オーディションでかっこいい姿を見せた君たちもそうかもしれないが、私だって、君たちに負けないと思っている。喧嘩を売っているわけではなく、それくらい思ってないとこんなことやってない。

終演後、応援しに来たバンドのメンバーのお母さんに応援されながらなんとかフライヤーを配る。私とぱつお合わせて80枚くらいは配れた。残ったのはVALENTINE DAYの明日のライブで配布してくれるとのことだったので、預けた。

最近できた妹分を褒め称える。いい子だ。
バンドマンの後輩が最近できた。後輩に恥をかかさないように。バンドマンとしても、普通の人間としても、誠実な人間でありたいと思っている。本当に。

いつの間にか来ていた相方と合流し、そろそろ帰ることにした。

静かになった荻窪周辺をぱつおを合わせて3人で歩く。
平日の木曜ということもあり、身体が少し「これ以上お酒を飲むとやばいよ!」と言っている感じを引き摺って歩く。

あまりにどうでもいい話をした。確か品川二郎の話をした。

ふと、日曜日のライブの話をした。トークコーナー、何話せばいいのかなぁ。とか、お互い頑張ろうなんて、ありふれた内容だ。

お互い、来年サーカスに行けるといいなぁ、と思っていたと思う。今年の一月から、一緒に走ってきた仲間。

私個人、イベントファンのお目にかかる機会が沢山あって。日曜もその一つで、ここでADDICTIONは爪痕を絶対残さないとどうにもならない。30分のライブを神戸荻窪を往復しながら何回もやらせてもらった身だ。プレッシャーはすごい。対バンもアツい。アツいバンドに囲まれたタイムテーブルを見て、休憩時間にされないようにするには何をすれば良いんだろうか、とずっと考えた。

当たり前だが、オーディションに出てたバンドよりいいライブをしないと爪痕は残らない。オーディションには出ていないが、ある意味オーディションに参加しているようなマインドである。

多分、みんなそうなんだろうな。多分、誰にも負けないロックンロールを鳴らしたいんだと思った。

駅に着いて、ぱつおと別れ、相方と電車に乗る。相方は盆休み中で、実家から帰ってきたばかりだった。
ご当地ちいかわのマスコットを2つもらった。かわいい。

どこか遠くに行きたくなった。もっと、遠征とかやってみたいなぁ、と。ロードムービーになりたいと思った。

それで、ご当地ちいかわを集めて回ってベースケースをちいかわでいっぱいにしたいなぁ、なんてぼんやり考えた。

シュガーブーケを着た金髪が向こう側の車両にチラリと見えた。
彼女は小さな口を大きく動かして「あんたのこと、嫌いな人たくさんいそう」と言った。

それは分かっている。実力はまだまだ不足している。
調子に乗っていると思われても仕方ない。でも、日曜日はこんなかっこいいバンドと対バンできるなんて!私ってすごいのかも!と思いながら演奏しよう。
人がたくさん見に来てくれる予定だ。恥じない演奏をしよう。

シュガーブーケは呆れた顔をして、「痛い目を見ても、知らないよ」と微笑んだ気がした。

電車の中でいつのまにか眠っていた。

明日もまた仕事だ。んで練習だ。やるしかないのだ。ここまで走ったなら最後まで走りたい。ベストアクトを掻っ攫いたい。