理科室の日常

「すげー」

理科室でそんな声が上がる。
自作カイロをシャカシャカして、そのカイロが熱くなったときである。
または、オオカナダモの細胞を顕微鏡を通して見てみたときである。

「理系的な力が必要だよね」と言われる昨今。
しかし、高校に上がるとき、あるいは高校のときの文理選択ときに、数学や理科が嫌で理系を避ける人がそれなりにいると聞く昨今。

ただ、実際には、好奇心や興味関心は本来備わっているものだ。

砂糖をガスバーナーで黒焦げにして「くさっ」と言いながらもテンションが高いとき。
レモンと金属板を使ってモーターを回すために試行錯誤し、レモン汁で手がべたべたになってしまった、そんな自分たちに笑っているとき。
同じ形、大きさの銅とアルミのブロックを渡して、「どちらがアルミなのかを当ててごらん」のワークをやったあとも、ついつい、机の上のブロックを触ってしまうとき。

もちろん、一人ひとりの志向性や、そのときの状態によって、
興味を示さなかったり、沈んでいたりすることもある。

部活の大事な試合で負けた次の日。
進路のことで迷って泣いてしまった次の日。
なぜか気分が乗らない日。

そもそも虫は嫌いと言い張る子。星なんて興味がないと感じている子。

そんな状況でも、少しでも自分自身の感覚を使ってほしいし、感情を動かしてほしいし、思考を働かせてほしいと願っている。

そして、さまざまな状態の生徒がいる中で、場を作り、願うことは、とても文脈的な営みだなと日々感じるのである。

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