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3Dプリンタヘッドの設計 4/4【製造・組立・運転】

設計が終わったので製造していく。
※Part3 https://note.com/hexcapbolt/n/nfd3c864c6bc2

製造・組立

このプリントヘッドは金属3DP前提で設計しているので外注で造形してもらう。まずCraftCloudで外注先にアタリを付ける。

今回はIN3DTECが最安だった。予備含め、2セット作って95ドルだった。
輸送事故はあったが中身は無事だったのでセーフ。

とはいえ必要な加工はする。やすりがけや穴加工など。

多少削ったが設計通りに組立できた。

3Dプリンターへの組付けもつつがなく。話すことがないということは設計がキチンとできているということだ。

試運転もOK。次はSpeedBoatRace 10分切りにチャレンジしていこう。

運転

結論から言うと、目標は達成できた。
目標:250mm/s、25,000mm/s2 で3D Benchy 10分切り
結果:最大300mm/s、25,000mm/s2で3D Benchy 9:29

目標にピッタリ合わせにいくような設計はしていないが、結果的に目標と同じ程度の性能に収まった。


3Dプリンタを高速造形に向けたチューニングをしていくなかで、どうやら3つの限界が部品の造形速度を律速しているような気がした。

青:機械的限界
TEST_SPEED_MACROのようなテストパターンでの限界。
速度ゼロから最高速まで加速し、速度ゼロまで減速するようなテストパターンは実稼働よりも高い速度・加速度が出る。

緑:連続稼働限界
◆速度
ホットエンドの最大流量(MVS)が制限する。
MVSは連続最大流量として測定されるので、短時間の吐出であればMVSを超えた速度(流用)で使用できる。

◆加速度
実稼働において減速後の速度はゼロにならない。(なる場合もあるが)
減速後の終端速度はSCV(jerk)として調整可能なパラメータであり、通常5~30mm/s程度が設定される。
この終端速度に応じた慣性力の大きさと、モータの加速/減速トルクの綱引きがモータが脱調するか否かを決定し、ひいては造形時間を決めるようだ。

茶:造形品質限界
これまでの限界による制限は「指定された座標に指定された量の樹脂が吐出される」ことを保証する。だが、それは部品の造形品質とは関係ない。

これは造形品質を無視して造形したもの。造形できるがあえてやる意味はないし、Speedboatraceの趣旨でもない。吐出した樹脂の冷却が十分でないまま次の層を積層すると、ガタガタの部品が造形される。なのでできる限り速やかに冷却し樹脂を固化して吐出した位置に固定する必要がある。

速度250mm/s  28000mm/s2 リトラクション無し フィラメントPLA+ 造形時間7:43

今回の設計ではこの造形品質限界(冷却要因)、これを考慮できていなかった。
そのため、まだ機械的な余力はあったが造形品質が原因でSpeedboatraceのタイムが制限された。

設計目標の達成評価

◆全体目標

250mm/s、25,000mm/s2 で3D Benchy 10分切り ⇒達成

◆基礎設計の目標 (Part.2の目標)

A.高速稼働への対応
 A-1.軽量化 
目標:260g以下 ⇒実測264g ほぼ達成
 A-2.慣性モーメント低減  
目標値:出来る限り⇒達成(詳細後述)
 A-3.高剛性 最大変位0.1mm以下⇒FEM解析結果で達成(実測せず)

B.実用性の向上
 B-1.自動レベリング用センサの搭載

 B-2.ダイレクトエクストルーダーの採用
 B-3.加速度センサ搭載可能
 ⇒すべて搭載、稼働できた。B-1~B-3まで達成。

 B-4.ベルト調整作業が容易であること
 
目標:3分以内の作業でベルト調整作業に着手できること
 ⇒実測1分4秒 達成

低慣性モーメントコンセプトの評価

3Dプリンタの制御システムである KlipperやMarlinにはInput shaper機能が実装されている。被駆動系の共振周波数を事前に計測しておき、それを打ち消すように駆動指令を出す機能らしい。知らんけど。
つまり、共振周波数計測が標準機能として提供されている。(0-133Hzスイープの加振、FFT、グラフ化まで)それを使って振動レベルを比較評価することができる。

センサは計測時だけ装着し、造形時には外す。ネジ穴位置をミスったのでブラケットにセンサ接着している。

Input shaperについて詳しいことは公式ドキュメント見といてください。
https://www.klipper3d.org/Measuring_Resonances.html
測定の様子はこんな感じ。
https://youtu.be/Rjg8BFW-yz0?t=110

測定結果がこれ。グラフの縦軸が1桁違う。振動が減ったと言っていいんじゃないでしょうか。

左:自作プリントヘッド 右:純正プリントヘッド センサの搭載方向が90°違うのでグラフのXY方向が入れ替わっている。

まとめ

  • Speedboatrace 10分切りを目標に3Dプリントヘッドを設計・改造し達成した。

  • ジェネレーティブデザインを多用した設計を行い問題なく稼働させた。

  • 低慣性モーメントのプリントヘッドで振動を低減させた。

  • 製造はオンデマンドの製造サービスを利用し2~3万円程度に収めた。



以上。

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