ポケモンカードゲームにおける非公開領域について

ポケモンカードで「非公開領域」について話題になっているようですね。

ポケモンカードでは特定の対象を山札から持ってくるカードを使用する際に「持ってこない」を選択できるのですが、それが何故かを説明する際の概念として用いられることがある言葉です。


山札や手札という「相手から見て中身が明らかでない場所」から対象を選ぶ際に、そこに対象が存在するかどうかを毎回証明することが困難である。よって対象を選択しないということがルール上可能となっている、といった内容です。

この説明を用いるとルールに大変お詳しい方々より「正しくない説明をしないように」と叱られることがあるようで、それで話題になっていたみたいです。

「ルール上そうなっているから」対象を選択しないことができるのであって、非公開領域という概念があるわけではない

とのこと。

山札からカードを選ぶことを指示された場合、山札のカードのオモテを確認しながら指定された枚数 のカードを選びます。確認中のカードのオモテは、相手プレイヤーに見せません。複数枚のカードを選 Pokémon Card Game 上級プレイヤー用ルールガイド Ver. 3.3 17 ぶ場合は、指定された数より少ない枚数でも構いません。また1枚も選ばないこともでき、その 場合はカードを選ぶ行為を終わります。ただし好きなカードを選ぶように指示された場合は、必ず指定 された枚数を選ばなければいけません。

https://www.pokemon-card.com/assets/document/advanced_manual.pdf

はて。私には「非公開領域だから」「ルールだから」

この両者がそもそも矛盾する話であるとは思えません。


「非公開領域だから対象を選択する必要がない」という文言について、
「『ポケモン通信』はその説明と矛盾しないか」といった疑問が挙がることがあります。

しかしこれは、
「対象が存在していることは確かだけど、山札という非公開領域に入ったカードだから対象無しとすることができる」
との説明でも何ら問題は発生しません。

「山札からカードを選ぶ際のルールがそうなっているから」も
「山札は非公開領域であるためそういうルールになっているから」も実質同じことを指していて、そのルールの背景について触れているかどうかの違いしかありません。

「非公開領域」の概念は存在するか

では実際、ルールの背景に非公開領域という概念が存在しているのでしょうか。
結論から言えば、私は「存在する」と考えます。
非公開領域の存在で説明できない例として、『テラキオンex』を挙げる方がいらっしゃいます。

この『テラキオンex』のわざでエネルギーを手札に持っているのにつけないことができるのか、という質問について、かつての裁定は「つけなければならない」でした。

「かつての裁定」では。
そのため、以前は使うとジャッジをコールするカード、などと言われていたようですが(当時はポケモンカードをプレイしていなかったため詳しくは知りません)、現在ではルールの変更により対象無しとできるようになりました。

◆ 複数枚のカードを選ぶ場合は、指定された数より少ない枚数でも選べます。また1枚も選ばないこと もでき、その場合はカードを選ぶ行為を終了します。ただし好きなカードを選ぶように指示された 場合は、必ず指定された枚数を選ばなければいけません。

https://www.pokemon-card.com/assets/document/advanced_manual.pdf

何故裁定を変更する必要があったのかと考えれば、手札に対象がないことを逐一確認する手間の問題があるのでしょうし、それこそ「非公開領域は証明が困難である」という説明と同一の内容であると言えます。

「非公開領域」という概念が存在しなければ、そもそもこのルール変更は不要です。
かつての手札に関するルールが不自然で不合理なものであっただけです。

ルールとは美しくあるべき

プレイヤーはルールを覚えることを目的としてゲームをしているわけではありませんから、可能な限り脳のリソースを節約しながらルールを覚えておきたいものです。

「そういうものだから」で全てを網羅するより、ある程度の統一された法則で考えて、一部の例外を抑えるというのは、何もルールに限ったことではなく、効率的な学習の基本であると言えるでしょう。

「非公開領域」という概念を用いて説明することにはその観点でメリットが確かにあります。
そして、ルールを「規則的で美しいものか」を考えること自体無駄ではありません。
必要性もなく山札と手札で扱いが異なっていた旧ルールに代表されるような、不合理なルールや裁定に気付くことができますし、改定を求めることができます。
ルールの制定側だけでなく、プレイヤー側もこの視点を持つことは有益でしょう。

大前提として、ルールやテキストというものは可能な限り統一されていて、わかりやすいものであるべきだと私は考えます。例外は少ない方が望ましいです。
上級者向けのガイドというのは文字通り「上級者(大会へ出場するようなプレイヤー)」に向けたものであるべきですし、それを読まなければまともに使えないようなテキストを作ることは避けた方が良いでしょう。

この観点で言うと、ポケモンカードにおけるサーチカードのテキストは本当にわかりづらいと言わざるを得ません。カードゲームを20年以上遊んできてからポケモンカードに触れた私でも、直感的な理解が難しいレベルです。

「山札を見る。その中から〇〇を1枚選び、相手に見せてから手札に加えてもよい。」
これで良いはずです。カードの種類を問わないサーチカードだけ「加える」という文言のままにしておけば、従来と意図している挙動も変わりありません。

他のカードゲームでは開発段階で当たり前にできていることを、25年間も放置しているのが異常であって、この酷いテキストを初心者でもわかりやすく説明できるようにするために「非公開領域」という概念を用いることに目くじらを立てるより、テキストの改正を望む方がよほど建設的です。

ましてやジャッジ資格を持つ人であれば、自分が用いるルールが理に適っているかどうか、常に思いを巡らせているのが当然であると私は思っていたのですが、どうやら現実はそうではないようで、大変残念です。

私個人としては、いち早くこの手のテキストがわかりやすいものに統一され、直感的にプレイできるようになることを望むばかりです。

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