見出し画像

【どんぐりレターボックス2】ドキュメンタリー映画の未来。

『アンヴィル! 夢を諦めきれない男たち』(2009)を観て、本編ではなく、そこから連想した『ドキュメンタリー』について書いていきたいと思います。

この映画は80年代に頭角を表したヘヴィメタルバンドのその後、みたいなお話です。バンドの主要メンバーである50代のリップスとロブ・ライナーは普段は仕事をしながら小さいライブハウスでステージを重ねながら、いつかロックスターになる夢を実現するために四苦八苦するというお話なのですが、公開されるやいなやアメリカを中心に大きな話題となり、評論家からも絶賛されるという『違う意味でスターになっちゃった』みたいな映画ですw。
音楽に詳しくなくても『夢を諦めない男たちの愚かさとかっこよさ』は十分に伝わってきますし、楽しめる映画だと思います。
(私も観逃していたのですが、ぷらすさんに教えて頂いて観れてよかったです)

さて。本作はドキュメンタリー映画なんですが、内容とは別に『ああ、ドキュメンタリーってこうだよなぁ』と思ったことがあって、それが『核心が撮れていないモヤモヤ感』でした。
例えば大きな事件(ライブハウスの主催者がお金を払わないとか、ケンカのきっかけの場面とか)が起こった時に、映像として私達が観るのは『そのちょっと後』の映像だったりするんです。それは『なにか事件が起こって、それを撮るためにカメラを回したことによるタイムラグ』で、大体は肝心な映像が撮れてなくてその後のリアクションみたいな映像になっちゃいます。

当然『ドキュメンタリーはそういう物』として私達は観るのですが、今作のようにナレーションによる誘導が無いと、事態を理解するのに微妙に考えないといけないのは面倒くさいな~というのが、昔から私が抱いている『ドキュメンタリー』の印象でした。もちろん、話の内容とか面白さとは全然別の話ですけどね。

なんでそんな事をあらためて思ったのかというと、そのちょっと前に変な映画を観ていたからです。

『ようこそ、アムステルダム国立美術館へ』(2010)です。

これはリニューアルするオランダの国立美術館を追ったドキュメンタリーなんですが、市民団体からダメ出しを食らって何度も中断したり、美術館館長が突然辞めてしまったり、建設している最中にもどんどんと変更が求められて完成予定がどんどん伸びていったりと、次から次へと難題が降り掛かってくる様子をつぶさに映しています。きっと監督含め、誰もが『こんなはずじゃなかった』という感じになっているのが面白いな~と思いながら観ていましたw。

内容もさることながら、この映画で驚いたことが『これは再現ドラマ?』と思ってしまうほど、出てくる人たちがみんな赤裸々な事です。会議しながら寝ている人を「おい、こいつ寝てるぜ…」なんて言っている場面や、美術館館長がセレモニーに笑顔で出席している裏側で「もう自分の時間を持ちたいから辞めるよ」なんてぼやいているシーンまで、『そこまでカメラに映さなくても良くない?作品として残っちゃってるけど大丈夫~!?』と思わず観ているこちらが心配になっちゃうほど、ことごとく建設に関わっている人たちのダメっぷりが、すべてカメラに収められちゃっているんですw。

またカメラもぐいぐい入ってきてて(しかも複数台あるっぽいカメラワーク)、本来なら『それは撮影しちゃダメな場面でしょ』みたいな部分も、むしろ前のめりで映しちゃってたりしますw。
ここまで(プライベートな面も含めて)映しているドキュメンタリーはあんまり思い当たらなくて、新鮮でした。なぜか観終わった後には、妙な罪悪感だけが残るという不思議w。

でも、こういうドキュメンタリー映画もあるんだな~と、結構ショックを受けたもんでした。

ショックを受けたといえば、私が一番驚いて、かつ『これからはこういうタイプが増えていくんだろうな』と感じたのがこの映画でした。

タイトルは『シチズンフォー スノーデンの暴露』(2014)。言わずとしれた、CIAのスパイ行為を暴いたCIA職員のエドワード・スノーデンを追ったドキュメンタリーです。

『CIA/NSAがネットを通じて制限なく全世界的に個人情報を盗んでいる』という暴露が世界を駆け巡った衝撃的なニュースの発端というか張本人の一部始終を、ことの始まりから撮って公開したという珍しい作品です。(ちなみに製作総指揮はスティーブン・ソダーバーグ)

こういう世界的な事件を大騒ぎになる前から経過を辿って見れるというのは、なかなか無かったと思うんですよね。今までは小説やフィクションの世界だけだったものが、突然映像となって(しかも本人がインタビューまでされている)現れるわけですから。

まるで昔、映画館でやっていた戦争ニュースを観ているかのように、スクリーンの前で世界的な事件が起こっていく様を見れるという方向性は、やはり時代性なのかなーと思います。ある時期まではカメラを持っている人は限られていましたが、今は世界中のほとんどの人が携帯電話のカメラを持っていますし、それを発信する場所だっていくらでもあるのです。

今現在でもネットに無数に挙げられているドキュメンタリー(というより断片かな?)という土台の中で、映像作品としての『ドキュメンタリー映画』はどんな事を求められていくのかなーなんて、『アンヴィル』でアルバム制作をするためにお金に悩む姿を、ぼんやり観ながら思いを馳せていましたw。


おまけに。

私が初めて『ドキュメンタリー映画すげぇ!こわいっ!』と思ったのが、先輩から教えてもらったこの『ゆきゆきて、神軍』(1987)でした。

内容があまりにもアレなので、興味のある方だけ調べて下さいw。
けれど、こういう作品も含めて、知ることの出来ない世界を見れるということは、ある意味ですごく現代的だし、親和性が高いんじゃないかなと思いました。

ではでは~!


ちくわ【どんぐり】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?