へるま
無機物マン #5
無機物5

無機物マン #5

へるま

伝説的ボクサーのドリーム無機物バトル決定の報に世界中が湧いた夜。
――香港の高級時計店にけたたましく防犯ブザーが鳴り響いた。

現在世界的な社会問題となっている武装無機物強盗団である。
青竜刀に手足の生えた無機物マン6名で構成された強盗団がショーウインドウを破壊し店内になだれ込む!

「ありったけ袋に詰めろ!急げ!サツが来rグボッ我受痛烈打撃!」

弾丸めいて飛んできた椅子の脚がリーダーと思しき青竜刀人間の刀身を直撃!粉々に砕け散る!
椅子には「万福飯店」の文字。通りの向かい側にある食堂の名前だ。
そして、椅子から生えているのは男性の腕。
あん馬体操めいて腕を床につき椅子部分をぶらぶらと宙に浮かせている。
これは食堂の椅子人間だ!

「よくも兄貴を!やっちまえ!」

左右から青竜刀が襲いかかる。
椅子人間は股割り屈伸回避を試みるが椅子なので脚固定!やむなくブリッジ回避!
強盗団は刀身同士を激しく衝突させ脳震盪というか刀震盪状態!
すかさずハンドスプリングで体を起こすと両者の峰を掴んで再び刀身同士をヘッドバッドめいて鉢合わせる!
目を回したかのごとくくるくると回転し両名昏倒!

「ちくしょう、サンダンヅキだ!」
残り3名が身をかがめ切っ先を椅子に向け同時突進!
同時だからサンダンではないことには誰も気づいていない!

椅子人間は身をひるがえしカウンターの向こうに退避!
3本の切っ先がカウンターに突き刺さる!
「ちくしょう!抜けねぇ!」
強盗団をあざ笑うかのように椅子人間はカウンターの向こうから顔を出し
「いないいないばぁ」の仕草をすると再び引っ込んで身を大きく屈め、カウンターを押し倒し始めた。

「ちょ…やめろ馬鹿!」
ベキベキベキッ!
倒れこむカウンターの下敷きにされ3本同時粉砕!

「参ったか!」
カウンターに足(1/4)をかけ勝ち誇る椅子!
その横っ面に痛烈な掌打がヒット!

「アウチッ!」
すぐに体勢を立て直し強盗団最後の一名のカンフー乱打を捌く!捌く!
中段突き!掌を押し当て食いとどめる!
反撃の中段蹴り!相手も肘と膝を折り曲げ脇腹ガード!
顔面ストレート!腕を添え外側へ円運動軌道修正!
反撃のストレート!相手も腕を添え内側へ円運動軌道修正!
高速のジャブ! 回避間に合わず椅子の背もたれへヒット!
「アウチッ!」
胴体が椅子じゃなかったら鼻血くらいは流していてもおかしくない。
全部は捌ききれないが致命打も貰わない高度なカンフー応酬!

凄まじい組み手争いを制したのは椅子人間だ!
4つある脚の1本に全体重を乗せ、青竜刀人間の足の甲めがけ垂直降下!

(~~~~!!)

勝機!地獄の激痛に苦しむ青竜刀の峰を掴むと、店内の大きな柱時計に叩きつける!
ボーン ボーン...
時計が零時を告げると同時に最後の強盗団も活動を停止した。

「ふぃ~」

安堵と疲れとで床に座り込む。椅子人間が座りこむってなんだって話だが。

入口に人影。
だが立ちあがろうとはしない。
対象に何の敵意も感じられなかったからだ。

人影は椅子人間に呼びかけた。
「ハリウッドスターになってまでコソ泥退治か、陳元龍」
「趣味ですよ趣味。ところでその名前で呼ばれるのは久しぶりですね李大哥」
「こいつらのことで話がある。一緒に日本にきてもらおう」
李と呼ばれた男は床に倒れ伏す青竜刀人間たちを一瞥しながら言った。
「マウント・オソレにだ」

【続く】

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