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あらんかぎりの幸運を!

 1988年、■■国首相■■、狩りの最中グリズリーに遭遇、腹部を食いちぎられ3日後に死亡
 1990年、■■社代表■■、自家用ヘリのローターで腰部を切断され死亡
 同年、■■国第3王子■■、浮気発覚後妻8人に全身を殴打され死亡

 米国、ワシントンDCの某博物館セレモニーホール。 

 居並ぶは108連もの数珠を全身に括り付けた日本の僧侶、全身に奇怪な文様を描いた半裸のシャーマン、どこの宗派かもわからぬ神父姿の男、黒いローブに身を包み、直角に折れ曲がった腰を老木の杖で支えている老婆など異様な面々。

 彼らの視線の先、ステージ上に鎮座するは666.00カラットのイエロー・ダイヤモンド。

 見事なブリリアント・カットに加工され、ダイヤでありながらまるで黄金のような光を放つこの宝石は、その所有者の殆どが無残な最期を遂げたことから『アンラッキー』と名付けられ、買い手のつかぬままこの博物館に寄贈されていたのである。

 だが、その博物館も失火による美術品の焼失、経営不振、館長の事故死などの不幸が相次いだ結果、このダイヤを『全人類の共通財産』とすることを突如発表。
 
 慌てた各国首脳は、ダイヤの呪いを解除した者に10億ドルの報酬を用意、世界中の呪い専門家が一堂に会することと相成った。

 「おーっほっほっほっほっほっほ!!!」

 まだ”罪状”が読み上げられている最中、高笑いと共にステージに登壇したのはブルーのドレスを纏った金髪の美女。
 
 「不幸のダイヤというのなら、幸運で塗りつぶしてしまえばよくて?」

 また高笑い。

 彼女こそが「25年の人生で一度も赤信号に遭遇したことない女」「ロイヤルストレートフラッシュ以外の役を知らない女」と呼ばれる超幸運お嬢様『無尽院運子』である!!

 「さあ、わたくしのモノにおなりなさい!」

 運子がダイヤを手にした瞬間、天井のシャンデリアが落下、彼女を押し潰した。

【続く】 
 

 

 
  

 


 

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