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たまに日記を書いています。

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  • 日記

    ときどき書く日記。不定期更新。

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    オリジナルの短編小説。内容は現実のいかなる事象とも全く関係ありません。

最近の記事

20240827 恐怖、研究、天堂弓彦

ずっと冷房の音ばかりを聞いている。今日は特に理由のない、ただ追い立てられるような恐怖を論文で塗りつぶした一日だった。こういうときに没頭できる研究があることは僥倖だ。いつもこんなふうにやっていれば進捗に頭を抱えることもないのだろうが、それとこれが必ずしも常に結びつかないのが厄介なところである。 前回日記を書いてから今まで何をしていたかと言うと、主に田中一行先生の『ジャンケットバンク』という漫画を読んでいた。 『ジャンケットバンク』は銀行が主催する賭場を舞台にした話だが、ギャ

    • 20240428 毒を抜く

      学生時代の友人と会った。学生時代の、という枕詞はなんとも醜く感じる。そこに現在までの継続の含意があるかどうかが不明瞭だからだ。少なくとも私は、その不明瞭さに自覚的なときにそういう言い方をする。今も頻繁に連絡を取るような相手は「学生時代に知り合った友人」とか「学生の頃からの友人」とか言うだろう。かつての記憶がきっかけにすぎない人を表すのなら、そのほうが正確で、うれしい。 彼女たちは「学生時代の」友人だった。これまで最後に会ったのがいつだったかも正直はっきりしない。たぶん4,5

      • 画面の向こうのあなた:【夜はなにいろ】 浅倉透

        いつも、どこにいればいいんだろう、と思う。 透の目はプロデューサーを見ていて、プロデューサーは私ではない。 シャニマス特有の矛盾だ。プロデューサーは確固としたその世界に生きる人物として設定されていて、しかし私たちはプロデューサーの立場からアイドルをとらえている。透は特に顕著だ。私は幼少期の浅倉透と会ったことはない。あの場で声をかけたのが彼だから透はアイドルになったのであって、それが私だったら、透はアイドルにはなっていない。 そういう歯痒さのような、悔しさのような、あるいは

        • 20240405 呼吸

          文字を書かないと生きていけない人間なので、書くことにした。全ては文字を書くための言い訳にすぎない。日記は特にそうして選ばれる。創作やら論文やらと違って、調べたり推敲したりって手間がかからない。安易な選択肢というわけだ。しかし書く場所はまだ迷っている。noteはまだアカウントがあったのでこうして使ってみているが、noteのこの、いつも14時の日光が差しているようなUIはお世辞にも居心地は良くない。使うたびに、ここは私のような人間が生きる場所じゃないなと思う。生きる。これは生きて

        20240827 恐怖、研究、天堂弓彦

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          3本

        記事

          小説「プリーズ・ルックバック」

           ふと目についたのは、ストライプの背広にできた皺だった。背中の真ん中から右端にかけて、大きく折れ曲がったような跡ができている。私は顔をあげて前を向いた。知らない男性の刈り上げた後頭部がみえ、その首筋に汗がツーッと一筋流れ落ちた。私はそこではっと自分も汗をかいていること、そして、電車がもう数十分も来ていないことに気がついた。  広いはずのホームはおびただしい数の人々で埋まっていて、地面もろくにみえないほどだった。列は一応形成されているものの、奥の階段には入りきらない人たちが

          小説「プリーズ・ルックバック」

          小説「あいつがピンクのGジャンを脱いだ日」

           るなちの横顔が好きだった。俺の青春そのもののような気がしていた。  るなち、本名、小林瑠奈。俺たちのバンドのボーカル。商学部。2年後期のGPAは2.6。好きなものは音楽と服。肩よりちょっと短いボブカットに、いつも青いインナーカラーを入れていて、歌って身体を揺らすたびにちらちらそれが見える——と言いたいところだけど、実際は照明が眩しくて色なんてよくわからない。美容院に行く金がないときは、色の抜けきったがさがさの金髪を黒いゴムでひとつに結んでいて、そのほうがお客さんには好評だ

          小説「あいつがピンクのGジャンを脱いだ日」

          小説「Guilt:」

           朝、珈琲を傾けていると、決まって彼のことを思い出す。それは罰なのだと思っている。人は生活の中で、特定のものや、場所や、習慣に、忘れられぬ人の影を見る。珈琲の味を私は知らない。それはなにも、彼のことを考えるのに夢中になっているわけではない。ただ過ぎ去ったものを再び押し流す、それは日々の濁流である。一杯飲みほして立ち上がる。すると私はきっと彼を忘れている。そうでもなければこの唇にリップを塗って、陽の光のもとに出ていくなんて、とても人間のできることではないだろう。  当時、私は

          小説「Guilt:」