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3.英作文で会話力向上

今回は、前章の音読と並びトレーニングの二本柱となる、英作文について説明します。このトレーニングは「アウトプット力の向上」に特化しているため、もしあなたがTOEICのスコアアップを第一優先にしている場合、あまり重点を置く必要のないトレーニングとなります。
しかし、実際に使える英語を身につけたい場合、話すためのトレーニングは必須となります。これを疎かにすると、たとえ将来TOEICでハイスコアを獲得しても、簡単な会話すらおぼつかないということになります。ぜひ、学習初期から、アウトプット系のトレーニングを取り入れ、使える英語を身につけてください。

私自身も以前「リーディングやリスニングは自己学習でもある程度伸ばすことができるが、スピーキングやライティングは海外留学やスクールが必要」と考えていました。しかし、それは「日本語から英語への高速変換」を反復して繰り返すことで克服できます。英語の環境に身を置かれることなく成人した日本人にとって、学習もなしにいきなり、最初から英語でものごとを考えることはほぼ不可能です。それならば、日本語で思いつく文章を、瞬時に英語に変換できるようになれば、ストレスなく会話できる、というのが本トレーニングの目的です。英作文トレーニングを十分に積めば、最初から英語で文章を組み立てることも、いずれできるようになります。
私が欧州から来た友人に「海外にずっと住んでいたのですか?」と聞かれたのは、現在のように海外出張に頻繁に行く前の話です。なぜならば、その前にこの英作文トレーニングを十分に積んでいたからです。かなりの反復が必要ではありますが、自信を持ってお勧めできる、「英語が話せるようになる」トレーニングです。

本記事のコンテンツは、以下の通りです。
1.使用する教材
2.英作文の具体的なやり方
3.トレーニングのコツ、注意事項
4.英作文トレーニングを終えた後、より会話力を伸ばすために
5.まとめ

【1.使用する教材】

「英作文」といっても、大学受験にあったような、長文を英訳して書くものではありません。本稿で紹介するのは「簡単で短い日本語文を英訳し、声に出す」トレーニングです。そのため、英作文であるにもかかわらず、基本的に筆記用具は使用しません
使用する教材は以下の通りです。書店などで中身を確認し、英文の少なくとも9割以上が辞書なしで理解できるレベルのテキストを選択してください。辞書を引く必要のない単語ばかりが並んでいる、とにかく簡単なテキストを使うことがコツです。英作文初心者の方は、まず(1)の瞬間英作文(青い本)から開始することをお勧めします。

(1)どんどん話すための瞬間英作文トレーニング 森沢洋介

(2)必ずものになる 話すための英文法(Step 1-7) 市橋敬三

上記の教材の特徴として、見開きページの片方に日本語文、もう一方にそれに対応する英文が記載されています。以下に詳細を説明しますが「日本語文を見て英訳を声に出し、英文を見て応え合わせ」を高速でこなしていきます。

【2.英作文の具体的なやり方】

英作文トレーニングの目的は「自分の言いたいことを英語で瞬時に組み立てる」能力を身に着けることです。そのため、使用する英文にはあらかじめ「知らない単語、文法事項が無い」状態にしてからトレーニングを開始してください。
英作文トレーニングは、下記のように2つのステップから成ります。順に解説していきます。

①ステップ1:文法項目別に整理されたテキストで学習
まずは文法項目別にまとめているテキストで学習を始めます。文法項目別とは例えば、
・SVC
・SVOO
・過去形
・現在完了形
・未来系
・不定詞
・比較級
・受身
など、中学・高校で習ってきた項目を指します。英作文でこれらのパートに入る際、文法を理解していない項目の場合は、中学・高校の参考書を使用して簡単に復習してください(別記事で文法についても執筆予定です)。

具体的なトレーニング方法ですが、以下の3ステップで行います。
(1)ページ片側の英文を隠し
(2)日本語文を見て英訳し
(3)その英文を声に出します

例えば、
「私は、彼女に会うためにレストランに行きました」(不定詞の副詞的用法)
という文章を見て、
"I went to the restaurant to meet her."
という英文を声に出します(日本語文は音読する必要なし)。

最初は、簡単な文章であっても英訳には時間がかかり、間違いも多いと思います。しかし、わからない場合でも悩むのは10秒程度にとどめ、英文を確認してください。そして確認した英文の意味や文法構造を意識しながら10回程度、音読してください。その後、もう一度英文を隠し、英作文にトライしてください。これを、英作文が瞬時(1秒以内)につまづかずにできるまで繰り返します。英作文ができたら、次の文へ進みます。

上記のステップを繰り返し、ページの最後まで到達したら、ページ全体を流すように英訳していきます。途中でつまづいたら、その文章をまた10回程度音読し、一番上の文に戻ります。ページの上から下まで、流れるように英作文ができたら、そのページは完了です。
テキストの最後まで完了したら、一番初めのページに戻り2週目へと入ります。2週目以降は「ページ全体を流すように英訳」から行い、つまづいたら、再度10回程度音読し、また一番上の文に戻ります。これを繰り返します。
テキストの全ての文について流れるように英訳ができれば、そのテキストは完了です。ここまで到達するのに、学習者にもよりますが、大体5週~10週のサイクルは必要でしょう。

このトレーニングを行うと、非常に簡単な英文であっても、瞬時に作成するのはとても難しいことに気がつきます。これが「知っている」と「できる」のギャップです。日本語と英語は文法構造や語順が全く異なるので、このギャップは日本人にとって特に大きいと感じています。受験英語の学習には、この差を埋めるトレーニングが決定的に欠けています。

②ステップ2:文法項目シャッフル・複数混在するテキストでの学習
上記のステップ1で、文法・構文別の英作文はある程度できるようになります。しかし実際の会話では、自分の伝えたいことに応じて即座に表現や文型を選択し、組み合わせる必要があります。ステップ2では応用として、瞬時にどの文型でも組み合わせて作成できるよう、「シャッフルトレーニング」を行います。

具体的なトレーニング方法ですが、上記のステップ1(文法項目別)と全く同じです。ただし使用するテキストは、以下の「文型がランダムに並んでいるテキスト」を使用します。

スラスラ話すための瞬間英作文シャッフルトレーニング

このテキストは、例えば下記のように、異なる文法・構文がランダムに出現するので、自分の言いたいことに応じて瞬時に文型を選択するトレーニングになります。

"I have been to Tokyo twice."「私は東京に2回行ったことがあります」(現在完了形)
"I will be in Osaka tomorrow."「私は明日、大阪にいます」(未来形)
"This pen is made in China."「このペンは中国製です」(受動態)

さらに、上記のシャッフルトレーニングに加え、「文法・構文要素が一文の中に複数含まれた英文」を使用して作文を行うことで、単調でなくある程度複雑な、しかし会話では非常に良く使われる表現を身につけることができます。例えば下記のような文章です。

"He bought a car which is made in Germany because it was better than any others in the shop."「その店で一番良い車だったので、彼はドイツ製の車を購入した。」(過去形、関係代名詞、接続詞、比較級の組み合わせ)

会話においては単文の占める割合が多いのですが、このような複文もよく使われますし、自分で作れるようにしていく必要があります。
このような複数の構文が含まれた文章をランダムに次々と作成していけば、どんな文章でも自分の言いたいことが瞬時に表現できるようになります。簡単な文章を使用するため、トレーニングは単調になりがちですが、英語を「話す」「使う」力が確実に身につきます。

参考として、さらに上のレベルになりますが、例えば実際に大学のスピーチで下記の表現が使われたことがあります。
"I have asked myself what I wish I had known at my own graduation."「自分の卒業式で、私は何を知ることができたら良かっただろうと問いかけました」(現在完了、関係代名詞、仮定法過去完了の組み合わせ)
単語は全て中学レベルですが、自分で作り出すには高い英作文能力が必要です。このレベルの英文を瞬時に作成する能力の獲得には時間がかかりますが、「知っている」と「できる」の違いが大きいことを理解するには良い文章だと思っています。

【3.トレーニングのコツ、注意事項】

英作文トレーニングを行うにあたってのコツ、注意事項は以下の通りです。

1.簡単な文を数多く作る
テキストには必ず、辞書なしで簡単に理解できる文章を使用してください。単語や文法構造の理解に余計なストレスをかけず、英作文のアウトプットに集中するためです。英文を読めば簡単に理解できる文章でも、自分で作り出すのはかなりのトレーニングが必要です。

2.速度、滑らかさを重視する
「日本語文を見てから英文が口を出てくるまでの時間」「英文をつまづかずに最後まで言えるか」にこだわってください。自分の言いたいことを英語で瞬時に組み立てる能力を身に着けるためには、この2点を常に意識して学習する必要があります。

3.英文を暗記しない
英作文トレーニングでも音読を行いますが、英文を覚えることが目的ではなく、あくまで「日本語から英語の高速変換を通して、どんな文型でも言いたいことが言えるようにする」ことが目標です。

【4.英作文トレーニングを終えた後、より会話力を伸ばすために】

上記のトレーニングの完了で、基本的な文型については自在に操れるようになるはずです。その後、より会話力・表現力を伸ばすために、様々なテキストを使用し、多彩な表現の修得を行います。
使用するテキストですが、特に指定はなく、皆さんが好きな、音読していて苦にならない素材を使用してください。以下にいくつか例をご紹介します。

①スクリーンプレイ

スクリーンプレイ バック・トゥ・ザ・フューチャー

映画の全ての台詞が和訳・解説付きで楽しめるテキストです。ラインナップに好きな映画が含まれている場合、お勧めできる教材です。

②TOEFLテストイディオム大特訓

イディオム(慣用表現)の学習として有名な教材です。多くの慣用表現を一冊で学ぶことができます。

③スピーチ・プレゼンテーション
音読記事からの再掲になりますが、以下のようなスピーチも多様な表現取得には役立ちます。

Steve Jobs - Stanford Commencement Address

スピーチ全文スクリプト

J.K. Rowling Speaks at Harvard Commencement

スピーチ全文スクリプト

Randy Pausch Speech to CMU Graduates

ベンジャミン・ザンダーの「音楽と情熱」

スピーチ全文スクリプト

④その他
映画やプレゼンだけでなく、ゲームの台詞などもトレーニングに使えます。極端な話、自分が好きであれば何でも良いです。私は以下の台詞をよく真似していました。
Call of Duty: Modern Warfare 2 意訳翻訳

【5.まとめ】

本記事のまとめです。

・英作文は、アウトプット力の向上に特化した、英語が話せるようになるためのトレーニング

・学習は以下の3ステップから成る
①ステップ1:文法項目別に整理されたテキストで学習
②ステップ2:文法項目シャッフル・複数混在するテキストでの学習
③その後:イディオム等、多彩な英語表現の修得

・トレーニングの具体的方法は以下の通り
(1)ページ片側の英文を隠し
(2)日本語文を見て英訳し
(3)その英文を声に出す
(4-a)1秒以内に滑らかに英文が言えた場合、その文はクリア、次の文章へ
(4-b)英文を作るのに1秒以上かかる、または途中でつまづいた場合、英文の意味や文法構造を意識しながら10回程度音読。(1)に戻る
(5)(1)~(4)を繰り返し、ページの最後まで到達したら、ページ全体を流すように英訳していく。つまづいたら、(4-b)と同じく10回程度音読し、また一番上の文に戻る。
(6)ページの上から下まで、流れるように英作文ができたら、そのページは完了。
(7)テキストの最後まで完了したら、一番初めのページに戻り2週目へ。2週目以降は、「(5)ページ全体を流すように英訳」から行い、つまづいたら、(4-b)と同じく10回程度音読し、また一番上の文に戻る。
(8)テキストの全ての文について流れるように英訳ができれば、そのテキストは完了。学習者にもよるが大体5週~10週のサイクルは必要。

・英作文トレーニングを行うにあたってのコツ、注意事項は「1.簡単な文を数多く作る」「2.速度、滑らかさを重視する」「3.英文を暗記しない」


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