商談の事前準備の極意~仮説思考~
私が営業を経験した5年間で何を一番重要視していたかというと、
「商談の事前準備(仮説構築)」である。
私の中で重要視している言葉が下記。
By failing to prepare, you are preparing to fail.
「準備に失敗することは、失敗の準備をすることだ。」
これがどういうことかというと、商談に例えると、商談に臨むための準備を失敗すると本番の商談でも失敗することが多いということ。事前準備に失敗するということは、商談に失敗している、云わば負け戦を行うといっても過言ではありません。
どんなに頑張って事前準備をしても、仮説がそもそもずれていたり、顧客の望むような内容でなければ、顧客の心は離れていく。では、どのような準備をすればいいのか?
私の経験として、下記のルーティンを行うことで顧客の反応が変わり、多くの成果につなげることができました。
本noteでは、自分の思考の整理も兼ねて、私が実践してきた「商談の事前準備の極意~仮説思考~」をお伝えいたします。
▼商談の事前準備の全体像
まずこちらが商談の事前準備の全体像です。
事前準備が中途半端だと良い商談ができず、先方との話が合わず、信頼関係が築けないケースが多いです。売れる営業と売れない営業の差はこの事前準備の情報収集及び仮説構築力も大きな差を生む1つの要因だと思っております。
アイスブレイク~クロージングまで商談をデザインし、様々なアウトが来てシナリオから脱線した際に、本筋に戻してあげるには事前準備や仮説が重要です。
相手を攻略するうえで情報は重要な武器となり、その武器となる情報はインターネットで簡単に得られる時代でもあります。
▼商談に臨む前の事前準備
商談に対する仮の答え「仮説」(受注までの最短を歩めるルート)を構築するには様々な準備が必要です。どれかが欠ければ事前準備が不足し、商談が失敗するケースが多くなります。
商談に臨む前の仮説構築(事前準備)で私が行っていたのは下記15項目です。企業規模によって一部変わりますが、事前に情報をインプットし仮説を構築することは重要なポイントです。これらの準備を怠り、商談に臨むということは、ノープランで海外旅行に行くようなものです。
①インサイドセールスのヒアリング内容を見る
②Sansanで営業先の情報を調べる
③営業先のHPを見る
④求人情報を見る
⑤対面(商談相手)の情報を調べる
⑥IRを見る(上場企業の場合)
⑦中期経営計画、有価証券報告書を見る(上場企業の場合)
⑧四季報、ユーレットを見る(上場企業の場合)
⑨同業他社事例を調べる
⑩営業先の業界課題を確認する
⑪営業先の課題を仮説立てる
⑫課題に対して自社サービスがどう寄与できるか考える
⑬営業時の時間構成を事前に考えておく
⑭Why now?をロジカル刺すワードを考える
⑮NEXTをどうするか)
これら15項目をしっかりと調べることが重要です。
少し長いですが慣れてくれば事前の仮説構築は1社あたり、15分~30分ほどでできるようになります。順番に解説していきます。
①インサイドセールスのヒアリング内容を見る
企業によって、顧客情報を管理している媒体は様々だと思います。
こちらはインサイドセールスがいる前提でお話ししますが、インサイドセールスのヒアリング内容は重要です。アポイントの内容によりますが、どのような人なのか、どんな課題・ニーズがあるのかを記載している場合が多いので、しっかりと確認しておきましょう。(薄いアポだとこの情報がほとんどないケースもある)
②Sansanで営業先の情報を調べる
Sansan贔屓にはなってしまいますが、Sansanが有効な理由はここにもあり、社内接点が一元化されていることで下記の情報が瞬時に把握できます。
・社内の誰がいつどのような理由で接点があるのか★
・過去商談をしているか
・過去どんな話をしたか(接点があれば)
・商談対面の過去の部署役職(名刺があれば)
・営業先の財務情報(決算情報等)
・営業先の最近のニュース記事
★の部分が特に重要で、営業先に対して社内接点が多くあれば、ABM的な観点で数手先まで考えた動きを具体的に想像することができます。
③商談先のHPを見る
HPがあればしっかりと確認しておきましょう。企業の取扱商品の現状等を確認することで、どのようなビジネスをしているを把握できます。先輩社員の声やリクルートページがあれば、具体的にどのような業務をしているかも把握できます。
④求人情報を見る
求人情報は宝の山です。なんてったって、企業が優秀な人を採用しようと人材会社に情報共有し、作成しているページですから。求人情報を見るメリットは下記の通り。
・会社情報がわかりやすい
・業務内容がまとまっていて理解しやすい
・従業員の声で具体的な業務が把握できる
⑤対面(商談相手)の情報を調べる
営業先の情報をWEBで検索することも重要です。商談相手のフルネームはデータとしてあると思うので、WEBで「完全一致検索」をしましょう。やり方は超簡単。調べたいキーワードをダブルクォーテーション「“”」で囲むだけです。
今では様々な情報がWEBに転がっています。ツイッターをやっていれば対面の思考が理解できますし、過去にスポーツをやっていた、○○の大会で賞を取った、○○が趣味などがわかれば心の距離をグッと縮めることのできるアイスブレイクにも使えます。
⑥IRを見る(上場企業の場合)
上場企業の場合はIRが必ずあります。(IRとは、企業が投資家に向けて経営状況や財務状況、業績動向に関する情報を発信する活動を指します。)
投資家に向けた情報発信なので、有益な情報がたんまりあります。ダウンロードをし、ひととおり目を通しておきましょう。
⑦中期経営計画、有価証券報告書、決算資料を見る(上場企業の場合)
中期経営計画書、有証券報告書、決算資料には超重要な情報が記載してあります。
中期経営計画書には、3か年計画などの計画など、今後企業として目指していきたい方向性が記載していることが多い。これは超重要なポイント。レイヤーによって抱えている課題は違うが、全ての点の課題は線でつながっており、その線の行く先がこの3か年計画の目標である。
経営層に刺しに行く時に使えますし、対面にも話すことで、良く調べてきてるな、よくわかってくれているなと感じてもらいやすく、腹を割って話してくれやすくなる。
中期経営計画書、有価証券報告書を全て読み込むにはとてつもない時間がかかると思う。そこで私がやっていたのは、資料の中で「課題」と検索すること。これで、企業がいま抱える「課題」をあぶりだすことができ、この企業はなぜ生産性を上げたいのか、どこの売り上げをあげたいのか、などが理解できる。
⑧四季報、ユーレットを見る(上場企業の場合)
上場企業の場合、四季報、ユーレットを見ることで、サマリーしている情報が簡単に取得することができる。例えば、ユーレットでSansanと検索すると、下記のような情報が取得できる。(下記は一例です)
企業によっては製品ごとの売上高もグラフ化されているので、どこの事業にどのように力を入れているかも把握できる。
⑨同業他社事例を調べる
全ての企業が気にするのはここだと思う。同業の導入事例をさらっと話せるようにすると相手の興味がこちら側にグッと傾く。たどたどしく話すのではなく、自然に話すことが重要。そのために、自社ツールを入れている商談先の同業他社の事例があるか事前に調べておく。
⑩営業先の業界課題を確認する
営業先の業界課題を理解すること。たとえば、「建設業界ではデジタル化、ICT化が流行している。それは職人不足、人手不足という課題背景があり、それを解決するためにデジタルを活用した働き方改革をしていく必要がある」などである。業界課題は必ずあるので、調べてもわからない場合は詳しい人に聞くといい。
⑪営業先の課題を仮説立てる
ここまで情報を調べたらいよいよ仮説構築のフェーズである。ここが本noteで一番重要なポイント。
①~⑩で事実のインプットを行った上で、仮の答えを作り、商談当日にその答えを顧客に提示し、顧客が抱える課題や不安を解消するため使う。
粒度の高い仮説立てするためには5つの問題の仮の答えを出す必要がある。
その5つの問題とは下記の通り。
【仮の答えを準備する5つの問題】
1.この会社は何をすることで事業が成長するのか?
2.この会社に対してSansanをどのように刺しにいくのか?
3.対面のミッションはなにか?自社ツールをどのように刺すか?
4.提案の際に想定される断り文句、ネガティブな要因はなにか?
5. NEXTをどうするか?
この5つの問題の仮の答えを出すために、下記のテーマ設定が超重要。
現時点での収益モデルを③~⑩で情報収集し、この会社はどこに向かいたいのか?を把握する。この答えは中期経営計画、有価証券報告書、WEBでの検索情報に記載しているケースもあるが、ない場合も多いので、ここは相手の商流を考えて想像する。
どこに向かいたいのか?
現時点での収益モデルが既存事業であれば、既存事業を①~④どこに広げていきたいのか、ここまでしらべてきた情報を集結させ想像する。
もしわからなければ、正直に商談シーンで聞いてみるのも手だ。(ここまで調べ上げてきた情報を伝えれば普通に教えてくれる)
また、3の対面のミッションはなにか?を仮説立てする際には、相手の部署、役職によっての違いをしっかりと把握しておく必要がある。
下記がそれをまとめたものである。
⑫課題に対して自社サービスがどう寄与できるか考える
⑪の5つの問題の答えを出し、その答えが本当にあっているか、自社サービスが営業先の課題に対してどのように貢献できるか、本当に自社サービスを入れることでその課題が解決できるのか、導入後どのように活用してもらえればその課題解決ができるのかを考える。
売るだけではなく、売った後にどのように使ってもらうかまで考えることで先のカスタマーサクセスも楽になりますし、オンボーディングもスムーズにできます。(ここはLTVの最大化というポイントで超重要)
※私の営業スタイルとして、売るだけではなくどう使ってもらうかもしっかり考えます。営業時点でここはしっかり訴求してから導入していただくことで顧客の協力体制が圧倒的に変わります。
⑬営業時の時間構成を事前に考えておく
商談時間は基本的には1時間です。
その1時間をどのように使うか。まさにここが「商談をデザインする」ということです。
ここまで仮説を構築したのであれば、自分が刺したいポイントなどはしっかりと把握できているはずです。それを元に時間構成を考えます。
私の基本的な時間配分は下記の通りです。
・アイスブレイク10分
・ヒアリング20分
・営業資料5分
・デモ10分
・クロージング10分
※5分余裕をもって商談を終わらす
※商談の進め方は別途noteで記載しようと思います
この時間配分通りにいかないケースはありますが、相手の予定もあるので時間切れにならないように注意しましょう。
⑭Why now?をロジカル刺すワードを考える
なぜ今自社ツールを入れる必要があるのか?を考える。これはクロージングにおいて超重要。よくあるのが「いいツールなんだけど今じゃないな」と言われること。
それを言わせないために、なぜ今必要か?をロジカルに刺すことができるように答えを用意しておきましょう。
ポイントとしては、「タイムライン想像する」こと。
いつまでに目的を達成したいのか?を想像すればいい。たとえば、今すぐになら今必要だし、半年後であれば、導入から定着を考えても今必要である。これは1年後でも同じ。定着すれば定着するほど効果が期待できるのがツールであるからだ。
⑮NEXTをどうするか
最後にクロージングを考える。NEXTは1つではなく、松竹梅でいくつかルートを考えておくことが重要。不測の事態でも様々なルートを即座に提示することができる。
ここは営業先の企業規模やレイヤーによっても変わってくるので、その都度考える必要がある。イメージとしては下記の通り。
例)対面が部長職の場合
・松ー次回の訪問で担当役員を巻き込んでいただく(チャンピョンにタッチする)
・竹ー別部門の部長の方々を紹介していただく
・梅ー資料を送って部内、部外に広めていただく(このケースは失注になる可能性が高いので、極力別部署を紹介してもらうか、②のSansanで調べた接点のある方々の名前を出し、誰がキーマンか探って、別確度からアプローチするための情報収集をする)
以上、長くなりましたが、私が営業時代に実践していた商談の事前準備の極意~仮説思考~となります。
思考のアウトプットのために記載しましたが、なかなかのボリュームでしたね(笑)
ちなみに、私はこのような仮説構築、議事録情報が全て残っており、今でも簡単に検索できる状態になっております。
仮説を立てるだけでなく、商談後に議事録を書き、仮説が正解だったか不正解だったかを振り返ることで仮説の精度が高まっていきます。
また、それを簡単に検索できるようなデータベースにしておくと情報が引き出しやすく、同業界や同規模に企業に訪問するときに過去の仮説を引き出すことでかなりの時間短縮になります。
仮説思考を身に付けると、仕事外でも具体的に想像して物事を進めることができるようになります。本noteが少しでも皆様の参考になれば幸いです。
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