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カフカ『変身』を読んで(ネタバレ注意)

 kindleで0円だったので(青空文庫さん、マジあざす)、カフカの『変身』を読みました。短いので読みやすいです。ただ翻訳が古く、現在使わないような言い回しも多いので読みづらいです。(どっち)

 ここでは思ったことを書き連ねて行きます。ネタバレ有りです。

あらすじ

 本書は主人公グレゴールが朝目覚めたら虫のような"モンスター"になってしまっていたところから物語が始まります。彼はその日も仕事がありましたがモンスターの姿では人前に出ることすら出来ません。虫のように変わり果てた長男を見て家族は当然驚愕しましたが、公にすることも見殺しにすることも出来ないので、ひとまず部屋に閉じ込めて様子を見ることにしました。

 実は彼は借金を持つ4人家族の唯一の稼ぎ手で、老いた親とまだ幼い妹のためにセールスマンとして働いていました。雇い主からひどい扱いを受け、成果も上がらない中、支え続けてくれたグレゴールを、家族が見捨てる事が出来なかったのも頷けます。妹を中心に、異形の姿の彼を介護する生活が始まったのです。

 一家の生活は一新を余儀なくされ、働けないと思われていた両親もまだ幼い妹も働きに出ます。三人とも収入は少なく、みっちりと働いてやっと食べていける程度なので、疲労は蓄積する一方です。見栄を張って買った、この家族には大きすぎる家が、町から遠い事も、仕事に行く上で負担です。引っ越そうにも他人に見せられない大きな虫が居たのではそれも叶いません。

 生活の足しになればと広い家の一室を貸し出すことにしましたが、人ならざるものを隣の部屋に匿っていることがばれてしまい、賃料も払わずに出て行ってしまいます。家族はもう限界で、父親が怒りに身を任せて投げつけたリンゴがグレゴールに食い込みます。リンゴの当たり所が悪かったのか、そうでなくても体が弱っていたのか、長男は次第にものを食べなくなり、息絶えてしまいます。

 グレゴールを介護する必要も、不便な家に住み続ける理由もなくなりました。残された家族三人、揃って辞表を書き、新たな生活のために旅立つところで物語りは幕を閉じます。

救われない主人公

 本書が理不尽文学と呼ばれる理由がここにあります。ただただ主人公が救われない。家族のためを思って働き続けるグレゴールに突如訪れる「虫化」という不幸。家族の言葉を理解しつつも、自分から意思を伝えることが出来ないもどかしさ。不当な扱いを受けながら死んでいき、他の家族はハッピーな(とまでは行かなくても希望に満ちた)終わりを迎えるという取り残された感。何一つ悪いこともしていないのに、虫になった理由も死んだ理由も明示されないまま、話は終わってしまいます。

 特に心にくる描写が、グレゴールが妹を音楽学校に入れてやりたいと考えるシーンです。借金のある家を一人で支えながら、「さらに生活は厳しくなるけど妹は音楽学校に入れてやりたいな。そのために今よりも仕事がmばらなきゃな。」と考えていた主人公、健気過ぎる!

 彼を虫にしたカフカさん、残酷過ぎる!

両親&妹視点

 ここがこの記事で一番書きたかったことです。

 グレゴールに依存していた彼の家族は、彼が虫になったことで(追い込まれ)、自分たちが働けることに気がつきます。そして彼が死んだことで、もっと便利な所に住んで三人で働けば、今よりずっと豊かで余裕のある暮らし出来ると理解するのです。

 果たしてここで問題になるのは「長男が虫になる必要があったのか」と言うことです。グレゴールが虫になる前に家族の負担を全て彼に背負わせてしまっていることに気づき、立派な家に固執せずに便利な所に引っ越して、家族四人で助け合いながら暮らして行く、という世界線もあったのではないでしょうか。

おわりに

 なりたい自分を思い描きながらも、自分には無理だと諦めてしまっていることはありませんか。悪いなと思いながらも、頼りきってしまっている人はいませんか。

 もし心当たりがあるのなら、ほんの少し考え方を改めて、勇気を出して行動してみることで物事はもっとより良い方向に進んでいくかもしれません。今の状況を当たり前と思わずに、自分から一歩を踏み出しましょう。(何様)

 あなたが頼りにしているものが、役立たずで嫌悪感溢れる「虫」に変わってしまう前に・・・。

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