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灰原が2023年に改めてメインにされる嬉しさと一抹の不安(前編)

小さい頃、外で遊ぶよりも家での中で録画したアニメのビデオを見るのが好きな子供だった。
その中でも特によく見ていたのがコナンの1999年1月4日に放送された「黒の組織から来た女 大学教授殺人事件」である。

■黒の組織から来た女 大学教授殺人事件 あらすじ

コナンのクラスに灰原哀という名の奇妙な少女が転校してきた。クールな態度で歩美たちをあしらう哀だが、コナンだけには興味を示す。少年探偵団に依頼された事件の調査に哀を誘い、コナンと一緒に同級生の俊也の兄を救い出し、事件を解決する。
その復路、哀を家まで送る途中でコナンは思いもかけない言葉を哀の口から聞く。

読売テレビ HPより引用

この回はタイトルからも予想できるように今やコナンに欠かせない主要キャラクターの1人、灰原哀の初登場エピソードであり、前半は探偵団メインの偽札の事件、後半は灰原の正体が判明してからの密室殺人事件というボリュームたっぷりの2時間SPになっている。

コナンに正体を明かす灰原。
初期のタンクトップみたいな服好きだったな。

この回のラスト、コナンの推理力を2度も目の当たりにした灰原は「貴方ほどの推理力があれば、お姉ちゃんの事くらい、簡単に見抜けたはずじゃない!」と実の姉、宮野明美が死亡した事件に関わっていたコナンを責め、泣きながら心情を吐露する。

灰原哀というキャラの生い立ち、強さと弱さ、偽札造りや自分でも出来そうな密室トリックなど事件も面白く、子供向けなのに大人っぽい雰囲気を纏っているこの回が私はめちゃくちゃお気に入りだったのだ。
小さい頃からのコナン好きは、このビデオを繰り返し見ていた事が起因しているのかもしれない…。

■灰原哀の変遷

●“死にたがり”の灰原

その後の灰原は、自分という裏切り者が存在するせい博士や蘭たち探偵団などに危害が及ぶという考えのもと、杯戸シティホテルの事件や、バスジャックの事件など様々な場面で犠牲になろうとする。
しかし、その度に我らが江戸川コナンが彼女に手を差し伸べ、助け出すのだ。

2001年に公開された劇場版第5作「天国へのカウントダウン」もその頃の作品で、組織を抜け出した自分に居場所などない事に悩み、クライマックスでは探偵団とコナンたちのために1人犠牲となり死を選ぼうとする。

「母ちゃんが言ってたんだよ!米粒一つでも残したらバチが当たるってな!」

しかし、コナンや博士の言葉に励まされ、探偵団たちの行動によって助けられる。

数々の事件、組織との戦い、様々な出来事を経て、その度に周りからの影響を受けて灰原は少しずつ変わっていく。
小さくなった事実こそバレてはいないものの、ベルモットの一件を経て灰原が組織からシェリーと呼ばれ狙われている事を知ったFBIから証人保護プログラムの受け入れを勧められるが、歩美の言葉に勇気づけられ、それを断るシーンは灰原の明らかな心情の変化を表す出来事だった。

コミックス43巻より。
ジョディ先生も親をベルモットに殺されて承認保護プログラムを受け入れた過去がある。

●コナンの相棒として

この辺りから、灰原の犠牲になりたがる性質は少しずつ身を潜めていく。

ベルツリー急行の事件では、シェリーを殺害する作戦が決行され、灰原は正体を知られているベルモットに呼び出される。
周りを巻き込まないために、投降することを決めた灰原は、探偵団たちが悲しまないようにと試作中の解毒剤を飲もうとするが、コナンの作戦によって列車内に潜んでいた有希子や沖矢昴(赤井さん)、下見のために偶然乗り合わせた怪盗キッドによって未然に阻止され、ベルモット以外の組織のメンバーからは、貨物車両の爆破によって死の偽装を果たす事に成功する。

これによって灰原は、積極的に組織に関わろうとするコナンを諌めつつも、これまで以上にコナン(新一)にとって同じ境遇を持つ相棒としての活躍が目立つようになってくる。
特に劇場版ではコナンを様々な面でサポートし、自らをコナンの「相棒」と呼ぶシーンも多く見受けられるようになる。
特に前々作の「緋色の弾丸」ではその相棒感は特に強調されており、探偵団の中で1人だけコナンたちの名古屋行きに同行したり、予備の追跡メガネを用意し、コナンもまたそれを当たり前としており、ラストシーンではコナンは蘭に抱きつかれながらも灰原を見つける2人でアイコンタクトを取っている。

また、(順序は前後するが)当初は苦手としていた蘭を受け入れたり(コナンと博士を含め)探偵団を自分の居場所だと認識し素を見せるようになっている。

比護のストラップを紛失する事件は灰原の
豊かになった表情を見れる回として特に印象的。


そんな風に今となっては当初の暗い影を潜めつつあった灰原が2023年になって劇場版のメインに据えられるのだ。

「コ哀」というコナンと灰原のカップリングを推すファンも多く存在し灰原人気は凄まじいものがある。
前作「ハロウィンの花嫁」では松田刑事の活躍と高木佐藤がメインの映画を見られる事に感動していたが、ここにきて灰原が劇場版で掘り下げられることも同じくらい嬉しい。往年のファンほど灰原についてよく知っているし、前述したような心情の変化を見ているので、思い入れもある。

しかし、今回の映画を構成する要素は灰原だけではない。FBIと黒の組織も大きな要素となるのだ…。

※長くなりすぎたので後編へ

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