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『正欲』を観た

原作未読

人間の具体的な多様性を突きつけられる作品であった。
というか、多様性という言葉だけじゃとても片付けられやしない。

当たり前って当たり前じゃない。
あなたにとって普通って何ですか?何が一般的な常識で何が正解で何が間違っているのか。

人には誰にも言えない秘密、心の奥底に悩みがあったりする。他人に理解なんて求めない上に共有したいとも思わない。それなのにあなたは知らないうちに私を傷つけているかもしれない。大多数が正しいと感じることが正当化されるとともに少数派が間違っていると烙印を押されるこの社会。理解し難いもの、明日を生きるために必死だった今日、現在までの道のりを「ありえない」なんて軽はずみな気持ちで言い捨てるものではない。

この世の中において、その少数派の生きづらさの具現化が本作では絶妙に描かれている。各々に問題を抱えている人たち、ただ可哀想というわけではなく、悪い部分もちゃんと描かれているところに心を打たれる。一方的な価値観を押し付けるのではなく、お互いを受け入れて寛容になることの難しさとその重要性が濃く彩られていた。人は見たいようにしか見えない。この一言に尽きるのかと。

たかが十数年生きてきたところで自分自身のことすらまともに理解できていないのにも関わらず、他人をわかるなんて不可能。でも、その一人一人が抱えている痛みを想像できない人にはなりたくない。

「愛してる」とか「大好き」心に響かなくてもいい
どんな感情だって、存在していい。それでもこの人無しでは呼吸すら出来なくなるほどに大切な相手への最大の愛情表現。あのラストシーンで何気なく言い放った一言がここまでぶっ刺さるとは。

今は、生きづらい世の中かもしれない。しかし、今だからこそ出会いがあったり、理解されるようになったことも少なくはないはずで。人生、ひとりで生きてはいけないし、寂しくもなる。これから先、みんながもっと息をしやすい世界になればいいのに。

恋愛感情、欲望、興味のあることは一旦置いといて

自分が生きるために近くにいてくれる人
そういう人間に俺も出会えるのかな



明日も生きたい、もっと自由に

俺はもう、「観る前の自分には戻れない」

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