見出し画像

💾 ハルクウーベン奇譚:レンデゴイル夜話(7)古き都邑

* 第7話 *
古き都邑

扉が開いた。続く道の両側に家はなく、人影もない。ただひたすらに、樹木とも、壁ともつかぬ構造物が続いていた。見上げれば、ひときわ高い樹木が定間隔で枝葉を広げている。やはり櫓(やぐら)が隠されているのだろう。二十歩と行かぬところで道は直角に折れ曲がっている。「鉤の手」だ。攻め手を待ち受けるために作られる曲がり角のことである。騎馬兵や長槍兵は手こずることになろう。

「随分な守りだな。目を廻さぬよう歩かねば」

「うむ。察しの通り、この先はいくつも鉤の手が続く。心配するなフロスガル。次の門を抜ければ、市街に至る。少し我慢しろ」

ここから先は

2,090字 / 1画像
この記事のみ ¥ 200

寄せられたサポートは、ブルボンのお菓子やFUJIYAケーキ、あるいはコーヒー豆の購入に使用され、記事の品質向上に劇的な効果をもたらしています。また、大きな金額のサポートは、ハーミットイン全体の事業運営や新企画への投資に活かされています。