🔰ミニチュアコレクションのスタイル

オールドスクールファンタジー世界は広大にして無辺だ。旅の途上には、数多くの危険と罠が待ち受ける。そして度重なる戦いと冒険の果てに名誉と栄光が、ないしは冷たき墓が君に用意されているのだ。

ハーミットイン商店には、すさまじい数のアイテムがカテゴリー別にズラリと並び、君に呼び寄せてもらうのを待っている。何をどれから集めようか迷うのは当たり前だし、それもまた楽しい時間になるだろう。そもそも俺は、大いに悩み自由に選ぶ楽しさからして、君に味わってもらいたいのだ。

とはいえ、何のガイドもないのはあまりに不親切かとも感じる。思えば昔、モケイ店で購入したカタログは、ヨウジ少年の心をワシづかみにして離さなかった。「アレも欲しい、コレも欲しい、もっと欲しいもっともっと欲しい」を合言葉に、少ない小遣いをやりくりしつつ、いかなるアプローチでミニチュアコレクションを増やすか考え悩み、穴の空くほど眺めまくったものだ。とはいえ、手元にある解説書だけがくれる情報には限界があった。想像力を膨らませるため、俺はさらなるファンタジーの情報を渇望したのだ。

今のようにインターネットなどない。本をスコポンスコポン買えるようなお金もない。でも時間と熱意はあった。学校の図書室や地元の図書館に通ってはファンタジー関連の本を読みまくったが、数年であらかた読み終えてしまったし、本当に読みたい本は、図書室にも図書館にもなかった。とはいえミニチュアの本やファンタジーの本を買うよりもやっぱり新しいミニチュアが欲しくて、本を沢山買える年齢になるまで、俺の小遣いはほとんどミニチュアに消えていた。代わりに、持っている本は文字通りボロボロになるまで読んだ。

今と比べれば、情報が本当に入手しづらかった時代である。だが幸いなことに、俺は人に恵まれていた。モケイ店の店長や担当スタッフは、まるで親切な魔法使いのように溢れる知恵や知識を惜しみなく分け与えてくれたし、店に来ていた年上のニーチャンたちは、長髪で革ジャンで、グラサンかけてハーレー乗って、鼻とか乳首とかにピアスあいててスゲー怖かったけど、話すとすごい優しかったし、物知りだったし、マジでホビーを愛していた。

俺はハーミットインで、それを再現しようとしている。違う、懐古趣味でやるんじゃない。当時の熱が今なお生きており、今なお最高に熱いことを伝え広めたいのだ。そしてこのホビーを、日本中のみんなと共有して楽しみたいのだ。

ハーミットイン商店は、かつての俺がショップで味わった壮絶なボリュームと創造的な陳列（それは想像力と興奮をおおいに掻き立ててくれたが、同時に不親切でもあった。ちゃんと探さなければ目当てのモノが見つからないのだ）を、現代に蘇らせようとする試みである。

そしてここnoteにあるハーミットカウンシルは、当時の俺が熱中した様々なコンテンツに学び、またショップで俺をけして子供扱いせず、へりくだることもせず、対等な人間として接してくれた超クールなオトナたちのアティチュードを現代に伝えようとする試みである。

おっと、熱くなって話が逸れたぜ。ともかくあれだ、ホビーは自由なんだから、何をどうコレクションするかも自由。でも、アプローチの提案とか、ガイドみたいなのがあるといいよねって話をしたかったわけ。そんなわけで今日は、ミニチュアコレクションのアプローチについていくつか提案しよう。

◆ コレクションのスタイル

オールドスクール・ファンタジーミニチュアをどう集めるか。すでにそれ自体、ホビーの楽しみである。ハーミットインの商店を訪れたとき、まずはその物量に圧倒されることだろう。その時、今日紹介する３つのコレクションスタイルが、君の参考になれば幸いだ。

● アドベンチャラー：冒険者

戦士。盗賊。聖職者。魔術師。ドルイド。野伏。幻術師。吟遊詩人。聖騎士。野人の戦士。暗殺者。武闘家……。冒険者とまとめて呼ばれることは多いが、彼らは皆、それぞれ様々な技術や能力を持っている。その種族も人間だけにはとどまらない。ドワーフにエルフ、ハーフリングやノーム、果てにはハーフエルフやハーフオークまでもが、冒険者として流浪の旅にあるのだ。君の分身である英雄は、果たしてどんな装備をしつらえ、いかなる技術に通じているのだろう？　君の仲間は揃っているか？　さあ、装備を確認し、旅の支度を整えろ。出発はもうすぐだ。

アドベンチャラーは、自分の分身であり、旅の道連れともなる冒険者一行をコレクションし、パーティーを編成する。冒険の内容によっては、仲間を入れ替える必要がでてくるかもしれない。また、旅が長く危険なものになりそうなら、従者や傭兵、雇い人たちも連れまわすことになるはずだ。

● シティカウンシラー：市評議員

冒険者がダンジョンで伝説の怪物を倒し、巨万の富を獲得したとして、それを使う場所も、喝采を叫ぶ人々もいなかったらどうする？　無人の広野で金貨を抱えて野たれ死ぬのがおちだ。酒場で温かい食事とうまい酒にありつきたくはないか？　いい女と一緒に、宿屋の柔らかいベッドで休みたくはないか？　広場には人々が集まり、何やら噂話をしている。市場へ行けば、沢山の品物はもちろん、あらゆる情報も売り買いされていることだろう。そうだ、鍛冶屋に寄ってはどうだ？　武器と防具の手入れをしておいた方がいい。ほら、もう君の財布は底を尽きかけているじゃないか。新しい冒険が必要なようだぜ……。

シティカウンシラーは、町民や村民といったミニチュアを好んでコレクションし、オールドスクール・ファンタジーの街を作り上げてゆく。君は村や町の長かもしれないし、都市の評議員かもしれない。あるいは、国を治める領主かもしれぬ。冒険者や雇い人たちを揃えたら、あるいは同時に、市井の人々のコレクションも始めたいところだ。

また、これを底上げする試みとして、様々な家具や小物、あるいは情景セットも用意している「漢たちのシルバニア」と題されたこのカテゴリーは、君のファンタジー世界にさらなる臨場感と迫力、そして現実味をもたらしてくれるはずだ！

● モンスターロード：魔物の君主

この世界が誰のものかを教えてやれ。人間の街を焼き、エルフの森を引き倒し、ドワーフの鉱山を突き崩せ。ノームを根絶やしにし、ハーフリングを奴隷となすのだ。エルフやドワーフ、そして人間どもが持ち込んだ身勝手な秩序とやらを放逐し、昔ながらの生き方の為、己の正義の為に戦う者たちがいる。彼らを導けるのは、そなたをおいて他にない。〈深淵〉の暗き底から訪れる使徒らも助けを差し伸べてくれよう。そなたには力がある。そなたこそ選ばれしもの。そなたの名の下に軍は進み、全ての王はそなたの前にひれ伏す。そなた以外の者が建てた国などに、どれほどの価値があるというのか？

モンスターロードにとって、冒険者は無論、善なる種族は全て敵だ。各カテゴリーから気に入ったモンスターたちをチョイスしてもいいし、モンスターの種族や住む地域ごとに集めてもいい。君には、近隣の諸部族をことごとく治める大族長の地位が、または邪悪なる軍勢を束ねる将の座が約束されている。ないしは、強大な魔導師あるいは戦士王となって地下迷宮や大要塞をしつらえ、君の帝国を築いてみてはどうだ？　

無論、君がアドベンチャラーのスタンスでも、戦う相手が必要になるだろうし、モンスターロードであってもそれは同じだ。

オールドスクール・ファンタジー世界の創造主は君だ

君が「アドベンチャラー」「シティカウンシラー」「モンスターロード」のどれか一つを選ぶにせよ、あるいは複数選ぶにせよ、やがては様々なミニチュアをコレクションし、「ワールドビルダー」すなわち世界の創造主となる宿命が待つ。君のコレクションには英雄、冒険者、従者に傭兵、善なる民、そして数々のモンスターや悪しき英雄たちが加えられることだろう。君の思い描くオールドスクール・ファンタジーの世界は、君のミニチュアコレクションの広がりと深まりに合わせ、どんどんとスケールアップしてゆくはずだ。

それは長い旅になるだろう。俺自身、ミニチュアホビーに出会ってからずいぶん長い歳月が経ったが、俺のミニチュアコレクションも、俺の心に息づくファンタジー世界も、その成長が止むことはない。一生楽しめるものだと思う。ミニチュアにはそれだけの魅力がある。価値がある。俺はそう信じているし、その思いに共感してくれる人たちが、ここ日本にも沢山いると確信している。

君だけのオールドスクール・ファンタジー世界を、君ならではのミニチュアコレクションで創り上げてくれ。

ミニチュア一期一会

「ミニチュア一期一会」という古い格言がある。「そのアイテムの再入荷があるかどうかはわからない。後悔先に立たずだ。後でガッカリションボリしないよう、今こそ買え」ということである。

ミニチュアホビーをすでに楽しんでいる人ならばご存知だろうが、この世界では「安定」というものがない。こないだまであったものが、いきなり仕様が変わったり、突然絶版になってしまうのも珍しいことではないのだ。だから、欲しいもの順に買うことを勧める。

ハーミットインでは、世界各地のスモールビジネスから選りすぐったオールドスクール・ファンタジーミニチュアを安定供給していきたいし、メーカーが作っている限りは再入荷をしていくつもりだ。でも、メーカー自体が供給できないと言ってきた時はゴメンね。その時は一緒に悔しがろう。

ハーミットイン商店（ストア）で待ってるぜ