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伊達者の戦士 前編(ペイント大全:ステップアップガイド)

ミニチュアペイント大全には、初心の友向けの基礎テクをまとめた『ベーシック』、発展的なテクや単一題材のペイント法を紹介する『マスターズ』、さまざまなミニチュアを塗り込み、制作開始から完成までを徹底解説する『ショウケース』がある。以前前後編でやった『ステップアップガイド:ゴブリンの族長』に続き、新たに『ステップアップガイド:伊達者の戦士』を届けよう。

ステップアップガイド

このシリーズは、ペイントスキルのさらなるステップアップを狙う君のためのガイドだ。とはいえ、『ショウケース』でやるような、じっくり塗り込みのテクや手順を紹介するものとは違う。

このシリーズで注力すること。それはミニチュアを最小限の手数で効果的にカッチョよく塗り上げ、テンポよく完成させることだ。いかに手を抜くかという単なるスピードペイントではなく、だからといってじっくり塗り込むコンテスト向きペイントでもない。その真ん中だ。

今回は、ハーミットイン商店における人気アイテムの一つ『伊達者の戦士/フランベルジュ』を制作しよう。冒険者としてはもちろん、従者の傭兵として、あるいは街で出会う人物、ないしは行く手に立ちはだかる敵ともなりうる。ミニチュアにどんな役割を背負わせるかは、作り手である趣味人次第さ。

前・中・後編のエントリーとなる。さっそく前編いってみようか!


ミニチュアのモデリング

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伊達者の戦士/フランベルジュは、パーツ分割のない一体成型のメタルミニチュア。まずやるのは、ミニチュアのモデリング(組み立て/ペイント準備)だ。

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まずミニチュアをよく眺め、パーティングラインとバリをナイフやヤスリで取り除き、真鍮ブラシで全体を磨く。このステージで使う工具と手順は『ベーシック:ミニチュア組み立て伝説』で紹介した通りだ。

追加のモデリングとして、今回俺がやったのは「剣の研ぎ直し」。メタルミニチュアの中には、抜き不良を防いだり、あるいは軽い衝撃で折れたり曲がったりしないように、武器などの薄い部分を意図的に分厚く作るアプローチがある。最近は抜き技術が向上したことで、かなり薄いものでも、レジンはもちろんメタルでも普通に抜けるけど、抜き不良はやはり出やすく、型の寿命も当然短くなる。だから現在でも、形状や位置によって武器の刃を厚く作るのは現役だ。

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今回ペイントするミニチュアが持つ両手剣なんかは、分厚く作られる武器の典型例。波打つ形状も手伝い、ある程度の厚みがないと、ミニチュアを型から外す時に曲がったり折れたりしやすい。

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正直、武器の厚みは俺自身そんなに気にならないんだけど、困っちゃったのは、そもそも原型時点で刀身にあったヒケとキズ、補強に使ったパテの一部がそのまま製品版で抜けちゃっていること。それだけ抜きの精度がいいってことなんだけど、目立つ部分なので平滑にしたい。

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