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種族解説:モングレル

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モングレル。より直接的な言い方をすれば“混ぜこぜ”となる。元は家畜の異種交配で生まれた雑種を指す語の一つだったが、モングレルという名が、かの呪われし変異者を指す蔑称に変じて久しい。

モングレルとは、人ならざる生物の外見的特徴を併せ持つ人間をさす。その姿はまさに奇怪そのもので、人間の両親から生まれたとはにわかに信じがたいものだ。モングレルの抱える変異相は、身体の奇形や欠損といったものではない。最も多いのは体の一部が他の生物に置き換わっているというもので、下半身が獣の後足であったり、動物の頭をしていたり、どちらかの腕が軟体動物の触腕になっている、などがその典型だ。角や尻尾を持つ場合や、羽毛や鱗などのような、人ならざる身体的特徴を得ることもあるらしい。また、変異相は単一とは限らず、複数の変異相を持つ者も多いようだ。

上古かみふるの昔より、あるいはその前の太古より、人は多くのおぞましい怪物や異種族に生存を脅かされてきた。だが、モングレルが各地で報告されるようになったのはここ数百年のことだ。ごく稀に産まれてくる奇形の子らとはまったく異なるこの呪わしき者たちは、いったいなぜ、どのようにして人間の血脈にあらわれたのであろうか。

この問いに答えられる者はおらず、その研究に身を投じようとする者も絶えた。なぜならば、モングレルの謎を追い求める者は、やがて自身がモングレルに変じることがわかったからだ。これが知られるまでに、何人もの未来ある医者や学者が命を絶った(いずれも自死ではない)。

現在「モングレルは見つけ次第放逐すべき」という点で諸国の見解は一致しており、聖職者らも等しく「モングレルは唾棄すべき穢れ」という立場を取る。鳥獣や魚、軟体動物や両生類、爬虫類や虫といった生物と混ぜこぜになった人間もどきを、人間は同族としてみなさないのだ。興味深いことに、出自や風貌への寛容さで知られる北方の野人たちでさえ、変異相を持つ者は部族から棄てられるという。

モングレルであっても人として遇するのは、悪名高きギルカトラス帝国の人々くらいのものだ。それが彼らのいびつで猥雑な倫理観から来ているのは明白である。何せかの国人らは、オークやノールを自軍の隊列に加えることさえ厭わぬのだから。

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