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種族解説:ノーム

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ノームはドワーフの遠い親戚にあたる種族で、両者には多くの共通点がある。どちらも人間より背が低く、男性はひげを生やし、岩屋に暮らしていて、見た目よりずっと器用に動く指で細工物をこしらえるのが上手だ。ゆえにこの世界に住まう多くの人間は、ノームとドワーフの違いをほとんど理解できていないし、しようともしていない。

実際のところ、一部の知ったかぶりが勘違いしているように、ノームは単に生活習慣の異なるドワーフ民族では断じてない。気質や性格、文化と思想において、両者には大きな隔たりがある。遠縁ではあっても、彼らはもはや別の種族に分かれて久しいのだ。
 
まず、ノームはドワーフと異なり、蓄財にまったく興味を持たない。ノームが金銀を手に入れると、それを溶かして細工物をこしらえるか、新しい道具であったり、書物であったりと、日々の暮らしを豊かにする品を購入するのに使ってしまうのだ。とはいえ、ノームは決して浪費家ではない。蓄財に興味はなくとも物の価値はよく分かるので、ノームに散財させるには、相当に質の良いものを揃えなければなるまい。

ノームは、作りの良い裁縫針やのみなどの道具類、良質な書物や上等なパイプ草、あるいは座り心地の良い椅子、趣味の良いランタン、品のある絨毯、混じり気のない粘土などに高い価値を見出す。それゆえにノームの家は物で溢れかえっているが、同時に掃除や収納のわざにも長じているため、散らかっていることはまずない。

次に、ノームはまったく好戦的でなく、ドワーフのように自分の体力や筋力をむやみに誇ったりもしない。ノームはドワーフより小柄で痩せており、筋肉質でもないため、重たい武器を振るうこともあまり得意ではないのだ。

また、ノームは酒をほとんど飲まず、食も細いため、丸々と肥えた腹を持つこともなく、酔って騒ぎ立てることもない。来る日も来る日も同じ食材を同じように調理し、お気に入りの器で少量食べるだけでノームは十分満足なのだ。それでいて一定期間食べつけると突然飽きてしまい、また別の料理を長期間食べ続けるという奇癖も持ち合わせている。

ノームは臆病ではないが、静かで平和な暮らしを心から愛しており、ドワーフのように大きな城や砦を作って敵に備えることはせず、周囲から隔絶された環境を好む。とはいえそれは、彼らが僻地に隠遁しているということではない。ノームの家里は壁や砦の類ではなく、振るう刃によってでもなく、何ものにも破れぬ幻術によって巧みに隠され、守られてきたからだ。少なくとも数百年前までは。

ドワーフが頑固な懐古主義者であることに比べ、ノームは合理的な現実主義者で、調和と協調を重んじるとされている。確かにノームは、ドワーフに比べて他種族の考えややり方を尊重する傾向を持つ。ただしそれは、ノームが柔軟だからではなく、ドワーフより物分かりが良いのでもない。実際はその逆で(誤解を恐れずに言えば)、ノームは他者のありように無関心であり、価値観をすり合わせる必要をまったく感じていないのだ。

同族はむろん、時には種族さえも超えて友情を育むドワーフと異なり、ノームはたとえ同じ種族間であっても広い交友関係を持とうとはせず、保とうともしない。ノームは相手を傷つけないよう注意しながらも、なるべく付き合いを薄く、遠くすることに心を傾けるだろう。ノームと長く濃密な交友関係を保てることは、非常に珍しいことだ。

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