見出し画像

新製品情報&アイテムレビュー(ドラウグル)

ピートルとカルロスは名うての盗掘者だ。神聖アルフモート王国と大ズンゲールサン帝国を隔てる白鷺山脈の南側……王国北部国境の山麓部……に点在する北方人の古墳群を掘り返しては財宝をかっさらい、商人たちに売りさばくのが二人の生業(なりわい)だった。

「ピートル、見ろ。天井と壁に隙間がある。こりゃ隠し扉だ。宝物庫はこっちだな」

相棒のカルロスがランタン竿を上げて指差す。

「おう。干物入りの石棺に用はねえ。どうせ二人じゃ開けねえ重さよ。副葬品が目当てだ」

ピートルとカルロスはランタン竿を壁に立てかけ、罠の確認にかかった。隙間の奥にいびつな滑車が見えるが、そこにかかっていたであろう革ひもは朽ち果て、力なく垂れ下がっている。まさか千五百年以上も後に古墳が掘り返され、誰かが“墓参り”に来るとは、ここを造った北方人も思いつかなかったのだろう。

「よし、罠はないな。カルロス、そこにある四角い石を思い切り踏んでくれ。それで岩戸が浮くはずだ」

口髭を弄んでいたカルロスはうなづくと、足元の石にブーツをかけ、全体重をかけて踏み込んだ。次の瞬間、大きな音と共に岩戸が右へと開いていく。

「なあ、ピートル。俺もこの稼業は長えが、こんなに重い岩がどうしてひとりでに開くかってのは今でもわからねえ。この仕掛け、古い墓ほど大掛かりだぜ。昔ってのは、今より進んでたんでねえかな」

「確かになカルロス。実際、お宝だってそうよ。こないだの金細工を覚えてるか? 今の野人どころか、王国一の金工職人にも作れねえ細工だったぜ。故買商のドワーフ爺が目を丸くして見てたろう?」

ランタン竿を一本、壁に立てかけたまま、二人は何本もの松明を床に落としながら奥へと進んでいった。盗掘品を運びだす時には両手が塞がる。足元が暗くては話にならないのだ。まだ秋の始まりだが、古墳の内部は一年を通して寒い。奥に行くほど、冬めいた寒さになるのである。ピートルとカルロスは鞄に入れていた防寒着を着込み、手袋をはめた。手慣れたものだ。

ここから先は

7,113字 / 14画像

寄せられたサポートは、ブルボンのお菓子やFUJIYAケーキ、あるいはコーヒー豆の購入に使用され、記事の品質向上に劇的な効果をもたらしています。また、大きな金額のサポートは、ハーミットイン全体の事業運営や新企画への投資に活かされています。