見出し画像

種族解説:ハーフリング

🔰序章&項目一覧

ハーフリングとは、その名のとおり背丈が人間の半分ほどの種族だ。甲も裏もびっしりと毛の生えた不釣り合いに大きい足を除けば、成人したハーフリングでも、まるで人間の子供のように見える。小柄な体に人懐っこい態度、温厚にして気弱な性格から臆病者と誤解されるが、そうではない。ハーフリングは勇猛果敢であり、危機に動じない強さを持つ種族だ。

ハーフリングは人間と比べて倍の時間をかけて成長し、また老いるゆえ、結果的に人間の倍長く生きる。20才のハーフリングは人間で言うところの10才であり、160才のハーフリングは人間で言うと80才にあたると考えればよい。また、おおむね足腰や体が人間よりも丈夫であり、病気にかかることも少ないため、全体的に長寿である。ハーフリングの場合、180歳を越えてなお元気な老人も少なくない。

ハーフリングの起源はエルフやドワーフと同じくらい古く、我々人間よりも種族として年嵩としかさにあたる。人口の自然な増減こそあれ、ハーフリングは上古かみふるから現在に至るまで、他種族からほぼ孤立した状態で彼らの営みを細々と、しかし安定して続けてきた。

実際ハーフリングが、緑豊かな野に拓かれた自分たちの里を離れることは滅多にない。なにしろ彼らの住まいときたら、盛り土を掘りぬいた居心地のいい横穴で、夏は涼しく冬は暖かい。室内は素朴だが作りのよい家具調度に彩られ、おまけに食べ物もたっぷりある。そんな我が家で、小さな身体からは想像もつかないほどよく食べ、よく飲み、よく眠る。庭先には美しい花々が咲き乱れ、よく手入れされた庭木は窓辺の景色をことさら心地よいものにしているだろう。そう、典型的なハーフリングが望むのは、安穏で平和な暮らしだけなのだ。まして生来の気弱さが加われば、彼らが家を離れる道理があろうはずもないのである。
 
おかげで今日、ハーフリングほど侮られている種族は他にいない。だが彼らが恐るに足らぬ軟弱者と考えるのは愚か者だ。確かにハーフリングは安逸を好む気のいい連中だが、彼らの愛する故郷の平和が脅かされれば、死にものぐるいで戦うだろう。

むろん、かくも酷薄なるハルクウーべンの大地においてハーフリングが種族として今日まで生き残り続けるには、持ち前の勇敢さだけでは当然足りない。しかし、彼らには見えざる庇護者がいる。上古の黎明において、エルフはハーフリングを守る誓いを立ててこれを徹底した。〈大崩落〉でエルフが勢いを減じてからは古代僧や野伏らがエルフのあとを継ぎ、ハーフリングをひそやかに、しかし歴然と見守り続けている。

なぜハーフリングは保護されるのか。実のところ、庇護の誓いを護る者たちでさえ、誓いがあるため、という以外の理由は知らず、またハーフリングたちも、守り手たちに深く感謝しこそすれ、なぜ自分達が守ってもらえるかをわかっておらず、またその理由を伝える記録もない。

エルフの長老衆、あるいは古代僧の総代や野伏の大頭領ともなれば、自らの血を流してなおハーフリングらをかばう理由を知る者もいよう。だが、彼らはいずれも秘密を軽々しく語らぬゆえ、その秘密が広く明かされることはない。

***

ハーフリングは同族で集まって里を拓き、先祖代々そこに暮らしてきた。現存する里は大陸の温暖な地域に点在し、近親婚にならない程度の人口が担保されている。ハーフリングの里に他種族が滞在することも皆無ではないが、居住する者はいない。他種族を客人としてもてなす・・・・ことがあっても、住人として迎え入れることはないのだ。

時代がくだるにつれ、ハーフリングの里は減り続けている。古くはエルフに、現在は古代僧と野伏らによって守られ、里自体が何らかの魔力によって悪しきものたちの目から秘匿されてはいるが、網は壁たりえない。欲に目の眩んだ余所者たちが警護の隙をついて里へ押し入り、狼藉を働いた事件は多く記録されているし、戦争に巻き込まれて消失する里は増える一方だ。

今後、ハーフリングの里は合併を繰り返し、集極化を進めることになろう。これはエルフやドワーフ、ノームらと同じで、彼らの居住地は、今や減っても増えないのである。いくら焼かれども、いかに攻められども再興して増え続ける人間の町や村とは対照的であり、現在の「人間」と「人と友誼ある諸種族」とを分かつ大きな違いといえよう(ここで言う人間には、腹立たしいが未開の野人らも含まれている)。

***

この土地で増大する悪意と邪気に恐れを感じながらも、それぞれの里で静かに生活するハーフリングたちであるが、彼らが今なお人間にその存在を広く知られているのには理由がある。それは、彼らハーフリングの若者が共通して備える出奔しゅっぽん癖と、いにしえの昔から続く、人間たちとの浅からぬ交流あってのことだ。

生来目立つことを嫌い、冒険どころか外出さえ嫌がる種族であるにも関わらず、若いうちはどうにも抗えぬ強い好奇心に突き動かされるのがハーフリングという種族である。年頃を過ぎるとこの異様な好奇心は見る見るうちにしぼんでゆくが、一部の若いハーフリングは衝動に抗えず、出奔を決意してしまうのだ。

家族や周囲の止め立てを振り払い、故郷を離れる若きハーフリングは多い。止め立てする大人たちも、やはり自分達が若い頃にそうであったことを忘れたわけではないので、仕方なく受け入れてはいる。実際、若かりし頃の出奔というものは、ハーフリングにとって半ば成人への通過儀礼とみなされてさえいるのだ。

その多くは近郊にある人間の町や村を訪れて満足するか、庭師や料理人としての季節働きをして戻ってくるくらいで、出奔というにはずいぶんと行儀のよい、小旅行や留学のようなものである。だが一部の者は人間社会に食らいついて成功し、「名士」と目されるようなハーフリングも出るのだ。

人間の美食家に召し抱えられた料理人や、貴族に乞われてその腕前を披露する庭師の親方衆などがその典型である。いずれも人間の弟子入り志願が引きも切らず、おまけにその多くが三日で逃げ出すときては、なにかと侮られがちなハーフリングが、庭師や料理人としての才を声高に自慢するのも無理からぬ話であろう。

古来より、ハーフリング伝来の事物は、料理や庭園作りにとどまらず、我々人間の暮らしを実に豊かなものにしてきた。農作、縫製、木細工、草花や野菜果物の品種改良といった分野で、ハーフリングの功績は大きい。人間たちがハーフリングを隣人として好意的に見るのは、かの種族が人間にもたらした恩恵の数々が広く知られるゆえである。

料理であれ庭仕事であれ細工物であれ、ハーフリングの手技に直接触れられる富裕層は無論のこと、かつてハーフリングが伝えた食材の数々は、庶民にとっても身近なものだ。

ここから先は

2,339字 / 1画像

オールドスクールファンタジーミニチュアとミニチュアペイントのすべて! ハーミットインが展開する全有料…

コンプリートプラン(ハーミット・カウンシル+ペイント大全)

¥1,000 / 月

寄せられたサポートは、ブルボンのお菓子やFUJIYAケーキ、あるいはコーヒー豆の購入に使用され、記事の品質向上に劇的な効果をもたらしています。また、大きな金額のサポートは、ハーミットイン全体の事業運営や新企画への投資に活かされています。