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ペイント大全ショウケース:クレリック パート1(組み立て、ベースデコレート、アンダーコート)

よくぞ来た。今回からは、リクエストの多い「冒険者」から、信仰あつき聖職者、クレリックをペイントする。今回俺がペイントするのは、「クレリック(人間・男)v1」。肌に顔、髪の毛、チェインメイル、鋼鉄、金、真鍮、布、革、ガラス、宝石などなど、様々な要素が詰まったミニチュアだ。今回のショウケースも、かなり汎用性の高いものになるだろう!

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ショウケースその1では、組み立てからベースデコレート、そしてアンダーコートまでを扱うけど、以下のポイントを重点的に解説していく。君がこのクレリックを製作するなら無論のこと、それ以外のミニチュア製作にも応用できるものばかりだ。じっくり読んで、役立ててくれ。

● パーツの軸打ちで位置をズラさずにピタッと合わせる方法
● メタルミニチュア表面にある細かな荒れや気泡の消し方
● 小石を岩に見立て、片足で踏みしめているように見せる方法

それじゃあ、始めようか!

クレリックの話と、ミニチュアを眺める話

「クレリック」すなわち聖職者は、オールドスクールファンタジーにおける“おなじみ”な冒険者の称号だ(僧侶を意味する「プリースト」と呼ぶ作品も多いね)。

名前がどうあれ、聖職者はいくつかの「お約束」ともいうべきものを備えている。たとえば「刃のある武器を持てない(なぜかスパイク付きはOK)」「射撃武器は使えない」「防具は特に制限がない」「回復系、戦闘補助系の呪文を使える」「アンデッドとの戦いに秀でる」などなど。これらは、往年のファンタジー作品の数々によって作り上げられ、ゆるやかな共通イメージとして定着したものだ(作品ごとの差異はもちろんある。全部が全部同じじゃつまらないし、そもそもフィクションなのだから、どうするかは作り手の自由なのだ)。

ここで、今回ペイントするクレリックを見てみよう。以下は、商店でも使っている作例写真だ。このクレリックは、「お約束」をことごとくクリアーしている珠玉の一作。ちょっとおデブちゃんで、聖職者ならではの髪型なのも熱い。この髪型はハゲているのではない。現実世界ではトンスラ(剃髪)と言って、仏教やヒンズー教でも行う奴だ。頭頂部を剃ってハチマキのように頭髪を残すのは、キリスト教カトリック系宗教者の肖像画や、宗教画でよく見かけると思う。現実の歴史から要素を引っ張ってくることで、いかにもな説得力が出るね(とはいえ、やはりフィクションなのだから、こういうのはスパイスであって、考証とかの必要はない。俺のハルクウーベンで、ジャガイモは昔から庶民の口に入っているし、貴族はナイフとフォークを使うし、スケールメイルとプレートメイルが同じ時代に同居している)。

おっと話がそれた。ともあれ、「わかりやすい安直なカッコよさ」ではなく、「渋めのダサカッコよさ」が詰まっているこのクレリックは最高だ。「これこれ!これだよな!」的なね。俺はこの方向性が大好きだ。ケビン・アダムズの妙技が余すところなく発揮されたミニチュアの一つだと思う。

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右手には巨大なメイスを持ち、左手には首から下げた聖なる印を握りしめている(革ヒモではなく、鎖というところが“死んでも離さぬ”気迫を感じるね)。手首から先と顔は素肌のままで防具はない。

金属の摩擦、熱、あるいは衝撃から肌を守る為のキルト(綿を中に詰めた厚手の服)が、袖口からのぞいている。キルトの上にはチェインメイルのシャツとズボンを着込み、ショートブーツをはいて、サーコート(羽織)をまとう。このサーコートは半袖で、頭にかぶるフードが付いているね。サーコートはオシャレなだけでなく、雨風をしのぐ意味もあるし、日光などでチェインメイルが熱くなるのを防ぐ意味もある。シワの入り方からして、厚手の布としてペイントしてもいいし、薄手の革としても良さそうだ。

腰には革ポーチと、回復薬か聖水が入っているらしきビンを何個も下げている。多少の衝撃で割れないぐらい分厚いガラス製と考えてもいいし、木製、あるいは金属製としてペイントするのもありかもしれない。

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背中側の作例写真はないので、今回俺が手がけているクレリックのアンダーコート写真を使おう。すぐに目につくのが、ベルトできつく巻かれた毛布ポケットがたくさん付いたカバンだ。カバンの中身は、冒険に必要な道具や食料だろう。ただ武器と防具を持ち歩くだけじゃなく、こうしたアイテムを沢山身に帯びているのが、いかにもオールドスクール・ファンタジー世界の冒険者って感じだね。説得力ある造形がたまらない。じっくりペイントしていこう。ワクワクするね!

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