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冒険世界の星の下で

オールドスクール・ファンタジーの世界は広大にして無辺だ。旅の途上には、数多くの危険と罠が待ち受ける。そして度重なる戦いと冒険の果てに名誉と栄光が、ないしは冷たき墓が君に用意されているのだ。

評議会メンバーのみんな、元気にしてるかい? 今日は、ちょっと大きな、というか、ハーミットインに流れる根幹テーマの一つについて、話そうと思う。

オールドスクール・ファンタジー。この血湧き肉躍る冒険世界をよく知る人もいるだろうし、馴染みのない人もいるだろう。ハーミットイン商店に並ぶミニチュアから「古き良き時代のメタルフィギュア」の流れを感じる人はいるだろうし、それはそれでいいと思う。実際に一部のミニチュアは、それこそ80年代初頭に発売されたものもあるし、ひょっとしたら君が子供のころ、欲しくて欲しくてしょうがなかった品々も並んでいるかもしれない。

「懐かしい」と思う人には「おかえり」を、「新しい」と思う人には「ようこそ」というのが、ハーミットインのスタンスだ。そして、どんなきっかけであろうと、興味を持ってくれ、また「ハーミット・カウンシル」を定期購読してくれているということに「感謝」を伝えたい。ありがとう。

ただ、世代間のカベだの隔絶だのペレペレだのとかいうものを、俺は絶対に作りたくない。だからこそ俺は、世代に端を発する「共通認識」とか「記憶」とかいった過去の遺産に頼りきるのではなく、全てを再構築する必要性を感じた。だから俺は、ただ商店に製品を並べるだけではなく、図書室であるここnoteを通じてミニチュアの製作法や楽しみ方を改めて提案&紹介し、また、「ハーミットイン:冒険の記録」を通じて、オールドスクール・ファンタジーの文脈を、新たに蓄積してゆこうと考えたんだ。

ハーミットイン創業を決意したとき、海外では「現在進行形」で進むオールドスクール・ファンタジーミニチュアを、ここ日本で「懐かしコンテンツ」や「回顧趣味」としてだけは紹介したくなかった。俺は、オールドスクール・ファンタジーが死に絶えるどころか、むしろ、ひょっとしたら昔よりも超スーパー元気であることを証明したいのだ。キーワードは「現在進行形」である。

ハーミットインの背骨をなす「オールドスクール・ファンタジー世界」には、俺が長年構築し続けているファンタジー世界を転用している。その世界の名前は、ハルクウーベンという。この記事のヘッダー画像にある地図は、ガキの頃の俺が描いたもので、人物画は、ハルクウーベンの物語の一つに登場する「北方の流れ者 フロスガル」だ(我が旧友であり、元ゲームズワークショップのアーティストであるジョン・ウィグレーが描いてくれた)。

ハルクウーベンは、かれこれ30年以上にわたり、今なお作られ続けている世界だ。なぜこれを今改めて紹介するのか? それは、俺が作ってきたこの世界を皆に見て欲しいからだし、できれば、一緒に楽しみたいと考えているからさ。だがそれは「俺の作った世界に来い」という類のものではない。

ハルクウーベンの地図には、大きな大陸が海の上に浮かんでいる。だが、この海の果てには、一体何があるのだろう? 海の向こうにあるかもしれない“まだ見ぬ陸地”とは、ひょっとしたら、他でもない君が想像し創造するオールドスクール・ファンタジー世界かもしれないのだ。

俺は、この海を、皆の「シェアワールド」のようなものに育てていければと思う。つまり俺のだけじゃなくて、色々な人たちのオールドスクール・ファンタジー世界がこの広い海原の果てで次々と生まれ、無限に拡がって行くのを、夢見ているんだ。それぞれの大陸には、それぞれ異なる生態系があり、神話があり、国があり、歴史があり、文化文明があるだろう。それらは海を越えていつか交わるかもしれないし、いつまでも互いに未知のままかもしれない。でも俺は、ハルクウーベンを囲む海の向こうに、まだ見ぬ大陸が何個も何個もある気がしてならないんだ。そしてその陸地こそ、今まさに、君の手のひらにあるミニチュアたちが立つ大地に違いない。

俺は、皆の心にあるそれぞれのファンタジー世界を大切にして欲しいと願っている。だから、ハルクウーベンの設定こそがハーミットイン公式設定だと言うつもりは毛頭ないし、王道オールドスクール・ファンタジーだの何だのとブチあげるつもりも全くない。ハルクウーベンは俺にとって宝物のような場所だし、本当に大切だ。これからも作る。でも、ハルクウーベン、転じて「ハーミットイン:冒険の記録」の内容は、オールドスクール・ファンタジー世界の一例にすぎない。すべては、君自身の想像力と創造力を掻き立てるキッカケだ。

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